第47話⑤~運が悪けりゃ死ぬだけ~
――また舞台変わって、バスター・キャッスル城内の資料室。
槍一郎のデッキ調整も締めに入った頃、まだ史也の話は終わっていない。
「……桜がどこ出身なのか、本人は言いたくないから確定は出来ないが日本なのは確か。あとは日本と何処かのハーフって感じだな。
――だが何処の馬の骨か分からんプレイヤーを城主が出迎えた理由は、本人は気まぐれらしい」
日本出身であるだけでも多少は合点がいく。
現代でさえも児童虐待が多い国であること、児童機関の不十分な対応等は超次元ゲーム時代でも変わらない事から、事の成り行きも経由も繋がるかもしれない。
「だが丈は桜に居場所を与えた。桜にとっては生涯唯一の恩人と言っても過言じゃない。――当然桜はその恩に報い、返すためにやった事があるんだが……何だと思う? 倭刀」
「……さぁ。ゲーム戦士になって立海の名声を上げる、ってか?」
「……目的は当たりだがな。でも正確に言えば80点」
……テストにしては高得点ですねぇ。すると史也は自分の机の棚からあるものを取り出した。
「――何やこのモデルガン?」
史也が持ってきたのは.38口径のマグナムリボルバー。血にも似た濃い赤でコーティングされている。
「これは桜が立海のプレイヤーになると意思を固めた時に、丈がこれを使ってゲームでテストをさせた時に使った銃だ。言っとくがそれはモデルガンでは無い」
つまり、本物の拳銃である。
「え……………? オイ、まさか……」
倭刀は急に血の気が引いたように顔が青ざめた。
「安心しろ、人を殺めるようなゲームはさせてはいない。……ロシアンルーレットを試みたんだよ」
「オォイッッ!? もっとヤベェ事してんぞ!!!?」
ロシアンルーレットとは、リボルバー式拳銃に一発だけ実包を装填し、適当にシリンダーを回転させてから自分の頭に向け引き金を引くゲーム。つまり運が悪ければ……もう言わなくても分かるよね? ―――ね!?
「どうだ? 本物の拳銃見ることも滅多に無いんだ、倭刀触ってみるか?」
「え、まぁちょっとだけなら……」
「あ、まだ実弾装填されたままかな――」
「じゃ、結構ですッッッ!!!!!!」
「冗談だよ」
史也も冗談抜きでお人が悪い………
だが話を聞いていたのは倭刀だけではない。
退屈していたみのりもレミも、秘書の奈々子から貰ったお茶菓子を頬張りながら一緒に聞いていた。
「おかしいですよ! 立海のプレイヤーになるなら、史也さんも奈々子さんもみーんなロシアンルーレットする事になるんでしょ?」
「そーよ! 絶対に死人出てるわよそんなことしたら!! ところでそのモデルガン撃っていい?」
「「人の話聞いてた!!!!?」」
「心配ない。ロシアンルーレットを行うのは銃司のような立海の血を継ぐものだけ。私や奈々子は関係あってメンバーになっているが、城主の後継者じゃないからアホみたいな事はしていない。瑠璃も同等だ。
――立海を継ぐものはゲームに命を賭ける覚悟を示すしきたりなんでね。丈は止めたが、桜はどうしても聞かなかったな」
だったら尚更辻褄が合わない。
立海の血を継いでいない桜が、何故ロシアンルーレットを挑んでまで立海のプレイヤーを志願したのか?
「……忠犬メイド公が城主に逆らってでもロシアンルーレットを……、何でそこまでやるん?」
倭刀の問いに史也は答えを出した。
「簡単な話だ。――恩人である丈が好きだったから。桜も彼らと同じようにゲームで命を賭ける覚悟を見せたかったんだろうな……」
◇◇◇
――バスター・キャッスル屋上、時計台の間。
「――私はロシアンルーレットに挑み一生を得て、晴れて立海のプレイヤーになった。一度は拾われた命を勝負に賭けた事は、決して後悔していません。立海様に魂の忠誠を誓う証の一つなのですから」
ゲームに命を賭ける貴族の元に長年仕えてきた桜。
『郷に入っては郷に従え』とは言うが、ここまで強い意志を持つのにも理由があった。
「わざわざ危険を犯してまで忠誠を誓うなんて愚かだとお思いでしょう。何故だか分かって? ――私はこの城で初めて晩餐した食事の味を、決して忘れないから」
今まで桜自身を苦しめた時空能力も、あの日を期に立海の為に尽くす『力』となった。遊戯貴族が与えてくれた温もり、それは桜にとって親以上の絆を築いていった。
「この城の先代の城主、立海 丈様は既にお亡くなりになられました……けれどその意志を継いだ方がいる。肉体は滅びようとも、その魂はまだ潰えてはいない!」
先代の城主が居たことをこの時初めて知った剣は、思わずハッとした。
(その意志を継いだのが……銃司って事か――!!)
「私は丈様に、弟である銃司様を御守りするようその使命を受けた。この命をかなぐり捨ててでも銃司様の盾に、私は全うする。それこそが―――私の魂、誇りよ!!!」
「……………」
剣は終止桜の意思に耳を傾けてそのまま黙りこくっていた。
シャッフル・オールスターズの仲間、そして立海遊戯戦団の同胞。
それぞれに掲げる『絆』は違えども……
「――ったく。冗談がキツすぎるぜ、ホントに」
剣の固く閉ざした口がようやく開いた。
「お前の言いたいことは大体分かったよ。どいつもこいつも、ひねくれた感じがして嫌やねぇ~! 大事な人を守るためにかざした盾を、汚いことに使う奴はろくなもんじゃねぇぜ」
「笑わせないで。私は銃司様を御守りする為なら喜んでこの命を懸けるわ。運が悪ければ死ぬだけよ」
「俺はその命を軽視した覚悟が気にいらねぇんだよッッ!!!!!」
心の縁に溜め込んだ怒りが爆発し、ついに剣がブチキレた。
「俺は穂香を助けて、G-パーツを取り戻して、次いでに穂香の親父を一度半殺しにして終わりたい所だが……お陰でやることが増えたわ!
お前みたいなメイドに汚ねぇことさせてるあの貴族バカに、いっちょ文句言ってやらねぇとな!!!」
「心底余計な心遣い、痛み入りますわ騎士様。何も知らない平民風情が、自分の地位と名誉を守りたいが為にしゃしゃり出て、他人を守ろうとするその身構え……不愉快極まりますわ――!!」
それぞれの怒りに発するフラストレーションが、互いのPASのオーラを互いに高めていく。
「もういい加減黙ってろや常冬メイド。口で言っても聞かねぇんじゃ、ゲームで白黒付ける方が早いぜ」
「そうですね………そういえば、仮にも決闘、ゲームをしているというのに名を申し上げていないのは無礼でしたね」
ゲームをしていなくても十分無礼失敬なような? なんて言うのは野暮だから黙っておこう。
「――私は立海遊戯戦団の侍女、時実 桜!!
時空を司り、紅蓮の城に控える使者!!!
二人の城主より頂いた『立海』の名に懸けて、ここから先は何人たりとも通しません!!!!」
「――俺はシャッフル・オールスターズの『切り札騎士』、桐山 剣!! 宜しくッ!!! そんじゃ一気に行くぜッッ!!!!」
切り札を呼び起こす右手にカードが3枚、逆光で光輝く。
切り札騎士の底力、思う存分カードにぶつけるのだ!!!
次回の更新は2月26日(水)を予定しています!
お楽しみに!!
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