第42話①~銃司、強者の野望~
『一人じゃ何も出来ない?』
当たり前だ。個々の力なんてたかが知れてる、無謀な事なんか百も承知。
……じゃ一人以上なら?
それなら簡単だ、可能性は無限大!
俯くな、顔を上げろ。お前にはお前のために戦う仲間が要るじゃないか!!
立て、立ち上がれプレイヤー共!!!
今こそ二つの刃を交え、結束の時だッッ!!!!
第42話、オープン・ザ・ゲート!!!!!
――電脳異世界『ゲームワールド』、色とりどりの色彩でそれぞれの個性を表すエリアの数々。
そこに一つ、漆黒の暗雲を天に聳え立つ紅蓮の城があるという。
人はこの城を『バスター・キャッスル』と呼んだ――!
そしてこの城を巡って、壮大な計画が立てられようとしていた。その城内では……?
◇◇◇
「――大門様。只今、桜さんから伝令が受信されました。G-パーツは無事に奪取、物件被害はゼロ、そして約2名のプレイヤーが抵抗しましたが穂香さんによって撃退したそうです」
ゴシックのレースステチ、西洋貴族のようなドレスを纏ったロングヘアーのゴスロリ秘書、倉内 奈々子(19)が報告を促した。
「現在『ブルーウェーブシー』を進行中とのこと、約10分程で帰還されるかと……」
「ご苦労、予定通りだ。最も第一段階に入らぬ中で躓くのはもっての他だが」
奈々子を専属する参謀長、大門 史也(20)がパソコンでデータ解析をしながら応答した。
「……しかし大丈夫なんですか? あの大森教授と協定を組むなんて、あの人頭のネジ飛んでるほどイカれてるって噂ですよ」
穂香の父、賢士朗のマッドサイエンティストぶりは立海にも伝わっていたようだ。
「それも承知で受けたことだ。これだけ簡要で楽に遺産を譲渡した時点で私も察する。だが奴はいずれ計画の何処かでG-パーツを奪い取る算段だろう。
……その枷になってる娘がどれだけ知っているかは知らんがな。それまでG-パーツの力と大森の科学力を利用すればいい。どちらが本性を表すか……見物だ」
知謀を張り巡らす参謀長の話はどうしてもインテリで長くなりがちだ。長文苦手な読者の皆さんは付いていけるでしょうか?
「でも侮れませんよ、仮にも相手は異世界の次元を裂いて空間を作った科学者ですよ……?」
「奴は力の使い方を間違えている。科学を己の欲望のみに使う科学者など三流の器でしかない、ただのマッドサイエンティストだ。――だが保証は無くとも踏み込む価値は存分にある。未知の力を秘めたG-パーツには……!」
交渉の物件が異世界をも動かす遺産である故、知将である史也にも感情の奥に隠れた欲望がG-パーツに駆られていく。
「まぁ大門様の命令であるなら……」
秘書に主への否定は御法度。当然従う義理が奈々子にはあるが、それでも不安は収まらなかった。
「……さっきから黙ってばかりじゃないか、少しは城の主らしく何か言ったらどうだ? 銃司」
そう、この場は城の王の威厳を示す玉座の間。そこにはもう一人、主の立海 銃司が玉座に座っていた。
「……悪いな、少し考え事をしていた」
そして瞑想を振り払い、銃司は玉座から立ち上がった。
「史也の言うとおりだ。あの狂科学者の腹抱えなどたかが知れる……その時には、それなりの粛清を受けるだけ。――だが俺は交わした約束は死んでも守る。裏切りも構えた上で、だ」
「全く、少しは計画実務の負担を押さえて欲しいものだ……全部私がやってるじゃないか」
「忝ない史也、今度プレミアなレトロゲーム大量に用意させよう」
史也はレトロゲームコレクターという意外な1面を持っていた。そして銃司の計らいで対価は取れるだろうか。
「奈々子、城内のメイドプレイヤー達に伝えろ。城内ゲームのメンテナンス、戦闘準備を徹底させろ。我が城に恥じないもてなしでプレイヤーを迎え撃たせるのだ!」
「かしこまりました、銃司様!」
奈々子は一礼し、城内で指令を下す手立てを立てた。
「………長かった、この1秒、1分、1時間、一日。過ぎ行く時間の長さが一日千秋の如く尊く感じるとは!」
銃司は感無量の感情で頭を大きく上に見上げ、思いに浸っている。
「――時は来た! 我が『立海遊戯戦団』が最強の称号としてゲームワールドに名を馳せる時が、我が軍に刃向かうプレイヤーは情け無用に撃ち落とす!!
――紅蓮の業火を背に我が魂、【銃】の誇りにかけてッッ!!!!!」
G-パーツの存在が、最強を求める一人の強者の野望を爆発させた!
それぞれの野望に燃えるプレイヤー達の戦争の引き金は……既に指をかけようとしていた――!!
◇◇◇
――アミューズメントパーク『ギャラクシー』店内。
「何も気にせずにゲームをやるってのも悪くないね。本ッッ当に出番減らされるよりは」
……あれ、デジャヴ?
主人公以上に出番を気にする槍一郎がゲームでウォーミングアップをしていた。その時。
「先輩」
後ろめたそうな表情の倭刀の方から槍一郎に話しかけた。
「……倭刀、どうした?」
「…………先輩、ちょっと大事な話があるんです。まだ整理は付いてないんですけど、その、実は……」
しどろもどろに倭刀が話す途中で急に槍一郎はゲーム席を離れ、何処かへ移動した。
「え、ちょっ……先輩?」
槍一郎が向かったのは自動販売機、二人分のジュースを買って片方を倭刀に渡す。
「ここじゃ落ち着いて話せないだろう。これ飲みながら静かなところで話そう」
「あ、ありがとうございます……」
もう、槍一郎は気付いていたのだろうか。
倭刀へのSOSが……




