第41話④~Gパーツ、強奪!?~
――剣の祖父・矛玄とWGCの外崎社長の大人の相談は20分以上続いた。
おいてけぼりの剣は当然退屈を通り越して大あくび。それよりもさっき感じた気配が気になって仕方がなかった。
そしてようやく剣が退屈している事に気づいた外崎社長は話を持ち込んだ。
「――あぁそうだ剣君! 退屈させて申し訳ない、せっかく本部まで来てくれたんだ君に良いものを見せてやろう」
「……?」
外崎社長に誘われた剣、そして社長は机にある資料を広げた。
「これはゲームワールドの伝説に纏わる資料でね。ここに書いてある道具、これが何なのか分かるかい?」
その資料に書かれていたのは、黄金に輝くトランプやサイコロ、ルーレット、ルービックキューブ等ゲームに関わる道具ばかり。対して剣には分からず首を傾げたまま止まっている。
「……成金のゲーム雑貨カタログじゃないすよね? その資料」
「違うよ、これがゲームワールドの大いなる遺産【Gパーツ】なんだよ!」
「え、これが!?」
「そう! だが実際我々WGCがこのアイテムを直で確認したのはまだ3割程度だ。まだこの世界の何処かにこういったGパーツが隠されている。そしてこの遺産こそが、ゲームワールドを維持させるエネルギーなのだよ」
それを聞くなり剣はまじまじと資料を見つめた。ゲームの世界がゲーム道具で成り立つ事にも興味を持ち始めた。
「こんなゲームの道具がね……もしこーゆーのをプレイヤーが手に入れたら即最強にでもなるんですか?」
「最強どころか世界を支配しかねない強大なパワーを秘めている」
「ひぇえおっかねぇ……! 出来れば俺は持つの避けてぇな。触らぬ遺産に祟りなしだ」
「なんだ剣、直ぐに最強にさせるアイテムは欲しくないのか?」
今度は矛玄が剣に質問した。
「なりてぇけどそれはゲーム重ねて得るものだ、一つ一つのやりがいにもなるから。主人公無双だかなんだかで苦労しないで最強になるとかアホらしいし、ゲームがつまんなくなりそうだし」
意外とシビアな事を言ってきた剣である。
「ハハハ! 君は結構努力派なんだね。そういうプレイヤーにもっとゲームワールドを楽しんで貰いたいものだ!!」
外崎社長は満足そうに剣の事を感心した。
「まぁ努力派と言ってもゲームだけだがな」
「余計な事言わないでよおじいちゃん……」
社長の前でだらしない所をさらけ出されて赤面の剣であった。
「でもGパーツのトランプでみのり達とゲーム出来たら楽しそうだけどなぁ……」
口では謙虚な事を言っていた剣でしたが、内心Gパーツを羨ましそうに見つめる彼に外崎社長が提案した。
「……そうだ! 良かったらそのGパーツをその目で直に見てみないか? 本部じゃその1つを保管されているから見るだけなら私が許可しよう」
「本当ですか!!?」
◇◇◇
――社長が案内するのは地下の極秘倉庫である。
そこの更にセキュリティが強化されている部にGパーツは隠されているようだ。
社長がセキュリティのロックを解除する。
「さぁこれがGパーツの1つ、【Gトランプ】だ!!」
「「な…………!!!?」」
剣と矛玄は驚愕した。それはGパーツが凄かったからという理由ではなかった。
「Gパーツが無い――!!!!!」
それを聞いた外崎社長は表情が急変し、確認する。それでもGパーツは見当たらなかった。
「ば、バカな!? そんな筈はない! セキュリティは万全、警報装置も作動していなかったぞ!!?」
この緊急事態に直ぐ様外崎社長はセキュリティ班の係にこの事を報告し、防犯カメラ等で詳細を確認させた。
「……あ、ありました!! この映像!!」
セキュリティ班が決定的瞬間を確認し、社長達に見せた。
そこには厳重なセキュリティを容易く解除し、一人侵入するプレイヤーの姿が。
「……ちょっとプレイヤーの所をズームさせて!」
ボヤけていたプレイヤーの映像がくっきりズームした時、剣はその眼を疑った。
そのプレイヤーの正体は、白いワンピースドレスをしたプレイヤーであった。
「ほ、穂香……!!!???」
想定外の出来事に剣は大きく動揺した。
「剣君、このプレイヤーの事を知っているのかい!?」
「い、いや…見間違えたか、ダメだやっぱり穂香だよな? そんな、何でだ!? アイツ何やってんだよ!!!!」
益々剣の混乱が強くなるばかりに矛玄が剣を呼び掛けた。
「落ち着きなさい剣!! 信じたくない気持ちは分かるが、今お前がするべき事はなんだ!?」
剣はその言葉にハッと気づかされ、もう一度防犯カメラを確認した。
(犯行時間はその3分前……まだ遠くには行ってないな)
「おじいちゃん、社長さん!! ちょっとGパーツを取った奴を説得してくる!!!!」
と剣は一目散で本部を後にした。
「我々も緊急要請を……」
「いや要請もそうですが、この問題はおそらく剣達の問題になりそうですよ社長」
矛玄と外崎社長はただ剣を見守ることしか出来なかった。
◇◇◇
剣は猛ダッシュでWGC本部を離れ、エリアの四方八方を見渡す。
その時『デュエルフィールド』エリアのその北東の空に無数の戦闘機が飛び交うのを剣が確認した。
「な、何だ!? まさか……!!」
不審な情景に勘づいた剣の勘は当たっていた。
その上空では飛行部隊、メイドの衣装を纏った女性プレイヤーの集団で埋め尽くされていた! そしてそれを指揮する長も……
「――これより警戒レベルフォーメーションEを指揮する。Gパーツ強奪妨害をする者には容赦なく迎え撃ちなさい」
「「「ハッ!!!!」」」
立海遊戯戦団の侍女、時実 桜である。
「ここまで厳重にさせる必要があるんですか? 桜さん」
その横には……Gパーツを強奪した穂香の姿が。
「相応です。寧ろ粗雑なセキュリティで迎えようとするWGCが異常なだけですわ。我が立海遊戯戦団はどんな指令にも決して油断はしない、最低限の鉄則です」
堂々略奪とは言ったものか、WGCのセキュリティ解除は立海遊戯戦団の入れ知恵であったようだ。
(協力してくれたとはいえ、私に対する警戒も緩めないという事ね……)
その時、一人のメイドプレイヤーが報告をしてきた。
「臨時報告!! 南西の方向よりプレイヤー1名が我々を追走中! プレイヤーバザールの方向!!」
「何ですって?」
それを聞いた穂香が上空から確認した。全力疾走で追う剣の姿が肉眼でしかと見えた。
「剣、さん――!!」
「穂香ァァァァァァァァッッ!!!!!!!」
上空40メートルの戦闘機から必死に穂香を呼び掛ける剣。
(剣……銃司様が好敵手と謳われる平民の騎士――!!)
桜の剣を見る視線は冷ややかで見下すように上から見つめていた。
「穂香さん、迎撃お願いできますか?」
「……はい。もう既に準備は出来ています」
穂香はアメイジングのデッキを持ち、戦闘機から吊るしたロープで穂香を下に降ろした。
「……総員停止。ただし警戒は引き続き続行する」
桜が指示すると戦闘機、並びにメイドプレイヤー達の動きが止まった。
(丁度良いわ。銃司様の好敵手の実力、とくと拝見させて頂きますわ……)
まさに高みの見物、草原に佇む剣と穂香。
その地上で繰り広げるアメイジングに何を語るか!?




