後悔
いつも通りの朝 いつも通りの日々 退屈かと言われればそうではないが、なんとも代わり映えのない生活・・・・・・
そんな当たり前の毎日がこれからも続くのだと思っていた…・・・・・・・・
「おはよー」学校へ続く坂の初めで後ろから声をかけられた。
振り向かなくても誰かわかるが振り返らなければきっと彼女は拗ねてしまうだろう。
そんなことを考えながら振り向くとそこには
予想した通り少し頬を膨らませた彼女が立っていた。彼女の名前は瑞希、小さい頃から家族ぐるみでの関係がある、いわゆる幼馴染だ。
「おはよう」僕は少し気だるげに答えた。
坂を登りながら隣に顔を向けると瑞希は
楽しそうに喋っている、僕はそんな彼女の
楽しそうな顔を見るのが少し好きだ、
この感情に名前をつけるとしたら
それはきっと恋なのだろう。
そんなことを考えてると隣から声をかけられた
「ちょっと、聞いてるの〜?」
「ちゃんと聞いてるよ」
「じゃあ何を話してたか言ってよ」
彼女はまた頰を膨らませながら言った
(なんだよその可愛く膨らんだほっぺたは
突いてやろうか)そんなことを考えながら
僕は答えた。
「確か、アインシュタインが予言した
第4次世界大戦のことだろ?
確かに第三次世界大戦ではもっと科学が進歩
して核兵器かそれに変わる兵器もできるだろうけどその分、もしそれが自分に向いた時のためにそれから守るための科学も進歩するだろうから僕は石と棍棒で戦うなんて現実的では無いと思うな。」
「いや、誰もそんな話はしてない!」
「今日の放課後空いてるかって聞いてるの」
呆れたように言われた。
そんな顔されたら少し傷つくぞ。
「別に予定はないよ」
「なら今日は一緒に帰ろうよ、少し
帰りに寄りたいところがあるんだ」
彼女は微笑みながら言った
そんなことを話してると学校についた
「じゃあまた放課後に」
僕をそう言いながら教室に入った
彼女の「帰り楽しみにしてるね!」
という声を背中に聞きながら…
────なぜ僕はその言葉をちゃんと聞かなかったのだろう。少しだけほんの一瞬足を止めるだけでよかったのに、
なぜ僕は彼女の話をちゃんと聞いていなかったのだろうほんの少し
耳を傾けるだけでよかったのに、
なぜ僕は彼女のことを教室の前で待っていようとはしなかったのだろう
道路を挟んだ向こう側から走って来る彼女に
声をかけることもできた筈だ
なぜそれをしなかったのだろう
いや、そんなことは自分でも分かりきっている
恥ずかしかったからだ彼女と仲良くしている自分が周りのみんなに見られるのが恥ずかしかったからだ。
でも今この瞬間だけはそんなことを考える
暇もなかった、ただ、ただ大声が出れば
彼女に届く声が出ればよかった
「 ────危ないっっっ────」
────なぜ僕のこの手は届かないのだろう
なぜ僕のこの足は一歩踏み出せないのだろう
あと少しで彼女にこの手が届くのに
あと少しで彼女の元にたどり着くのに
甲高いブレーキの音を聞きながら
そんなことばかりが頭の中を駆け巡っていた
気がつけば僕の顔は地面に押し付けられていた
顔の周りに生暖かいぬるりとした感触と
むせ返るような鉄の匂い
黒いタイヤ痕
そして横たわる彼女を見つけ僕の頭の中は
視界とともに真っ赤に染まっていった…