7.シンコンサン学校へ行く
次の日、本当はこの日まではお休みのはずだったんだけど、私とラルフお兄ちゃん(小)は他の子たちより少し遅れて一緒に学校に向かった。
何でかっていうと、ラルフお兄ちゃん(小)の入学手続きをしないとならないからだ。
朝イチで私もラルフお兄ちゃん(小)もフタバにガッツリしごかれたせいでくたくただったけど、これは明日からもずっと続くので慣れるしかない。
これはもしラルフお兄ちゃん(小)がフタバに勝てば終わるのかも知れないけど、昨日の調子だと当分無理っぽい。
それに、まぐれで勝っちゃって鍛錬をやめちゃうよりも、ちゃんと鍛えてもらった方がラルフお兄ちゃん(小)にとってもいいような気もするし。
ちょっとフタバがやりすぎちゃう感じなのは心配だけど、そこは私がうまくブレーキをかければなんとかなるかな。
学校の先生には、昨日ラルフお兄ちゃん(小)がした嘘の方の説明をしておいた。
つまり、ラルフお兄ちゃん(大)が勇者様のお仕事で過去の世界に行ってて、ラルフお兄ちゃん(小)は過去のラルフお兄ちゃんだっていう説明だ。
なかなか信じにくい話だって言うのは本当の事を話してもやっぱりそうだし、フタバもこの嘘の方の説明を信じてるから、そこから話が変わったらさらにややこしい事になりそうだからね。
ちなみにラルフお兄ちゃん(小)の年は本人によると6才で、小学1年生だ。
でも、ラルフお兄ちゃん(小)は私と同じ4年生のクラスがいいってかなり粘った。
とにかく私と離れたくない、ってね。
だけど、小学校のお勉強はちゃんとやっておかないと後が大変。
ラルフお兄ちゃん(小)の目標は、おっきかった時みたいに立派な勇者になることだから、そのためにはお勉強もしとかないとダメだよ、って私が言ったら渋々だけど納得してくれた。
で、4年生のクラスに入るのは結局認められなかったんだけど、ラルフお兄ちゃん(小)が粘ったこともあって、1年生の授業が終わった後、午後からは4年生のクラスで面倒を見てもらえる事になった。
ラルフお兄ちゃん(小)だけ先に終わっちゃうと宿に戻っても一人ぼっちになっちゃうし、わたしが午後の授業をやめて一緒に帰ってあげるわけにもいかないからね。
先生たちとそこまで話をつけてから、私とラルフお兄ちゃん(小)は1年生のクラスに挨拶に。
今の1年生クラスの先生は私の知らない若い女の先生だったけど、事情を話すとみんなにラルフお兄ちゃん(小)を紹介してくれた。
私の知っている1年生の子は、顔と名前がようやく一致する、という程度の子ならたくさんいるけど話したことがあるのは5人ぐらいだ。
まず一人目が、私の同級生であるジャッキーの弟、ゆーくん(というのはあだ名で本名はユリウスっていうんだよ)。
刃の曲がった刀を使うのが得意で、私が初めてパーティを組んだ時のパートナーでもある。
あと・・・私はこの子に以前告白されて、断ったことがあったりする。
とはいえ、決して関係が悪いわけではない。
ただ、私がラルフお兄ちゃんと盛大に結婚式までやっちゃったもんだから、やきもちを焼いてるんだろう。
そのせいもあって、最近はちょっとご機嫌ナナメ気味だ。
やきもちといえばフタバもそうだけど、傷口が深くなる前にフォローしておかないとマズイことになりそうだ。
その他には剣士志望のレイラちゃん、双子の槍使いユリちゃんとマリちゃん、それに水系魔法使いのフィオナちゃん。
この4人はもともと1年生パーティを組んでいたんだけど、なかなかチームワークがうまくいかなくて、失敗ばかりだった。
失敗が多いって言うけどさ、前衛の戦士系より、ちっちゃいうちは魔法使いの方が難しいんだよね。
型とかをならっていなくたって棒切れぐらいだったら誰でも振り回せるけど、魔法はちゃんと訓練してからじゃないと全く使えない。
魔法使いの私としては、もうちょっと長い目で見てあげてほしかったなあ、って言う気持ちもちょっとある。
だけど、レイラちゃんたちにはそんな余裕はなくって、特に失敗の多かったフィオナちゃんを外すことにしちゃったのだ。
それで、フィオナちゃんはひとりぼっち。
そんなフィオナちゃんをゆーくんがさそってあげた・・・って言う経緯があったらしい。
そんな感じで、ゆーくんはとっても優しい子なんだ。
ゆーくんにその気はないのかもしれないけど、基本的にゆーくんって女の子にもてる要素すごく持ってるんだよね。
私が組んだ時も『さすが男子!』って思えるような行動とか、すごくあったし。
たまたま私にはもっと好きな人がいたってだけで、絶対ゆーくんにはいい子が見つかると思うよ。
もっとも、私がそれを言っても火に油状態になっちゃうから言えないんだけど。
あと、私が良く知らない他の子たち・・・。
でもなぜか、他の子たちもみんな私のことを知っているのだ。
まあ、あれだけ盛大に勇者様との結婚式をやったら有名になるのも当たり前だけど、この1年生たちは何故かそれより前から私のことを知ってるみたいなんだよね・・・。
ともかくラルフお兄ちゃん(小)のクラスメイトとして特に問題になるような悪い子はいないと思うから、そこは安心。
1年生への挨拶が済むと、今度は2人で私のいる4年生の教室へ向かった。
ラルフお兄ちゃん(小)は1年生だから、本来ならば4年生の教室で紹介の必要はない。
だけど、1年生の授業が終わってラルフお兄ちゃん(小)が先に宿に帰ることになると一人ぼっちでお留守番って事になっちゃうから、ちょっとかわいそう。
だから私がお願いして、1年生の授業が終わった後は4年生のクラスにいさせてもらうようにしたのだ。
有り体に言うと『学童保育』みたいなもの。
まあ、ラルフお兄ちゃん(小)の席はないから私の膝の上に座ってもらうことになるんだけど。
で、担任のフランソワ先生がラルフお兄ちゃん(小)の事をみんなに紹介。
1年生たちと違ってさすがに騒がしくなったりはしないだろう・・・って思ってたんだけど、甘かった。
先生がかなり詳しく説明しちゃったせいもあってか、ワーのキャーのと大騒ぎ。
特に女子たちが。
元カッコイイ勇者様がカワイイ男の子になったわけだから女子が騒ぐのも分からないわけじゃないけど、でもラルフお兄ちゃん(小)は誰にもあげないもん!
私は軽く握っていたラルフお兄ちゃん(小)の手をちょっと強く握り直して、ラルフお兄ちゃん(小)を私の後ろに隠すようにする。
これじゃ私がやきもち焼いてるみたいだ・・・。
みんなが騒ぐ中、私の親友で魔法使い仲間の一人、火の魔法が得意なユリカから
「今度じっくりシンコンセイカツの話、聞かせてもらうからね!」
って耳打ちされた。
基本的に女の子はコイバナ大好き。
私も例外とは言わないけれど、それにしても・・・ねぇ。
その後、職員室で必要な手続きも済ませて、今日は授業を受けないで帰宅。
ラルフお兄ちゃん(小)と仲良く手を繋いでいると、街の人たちからすっごく注目されているのがわかる。
まあ、そのうちだんだんと気にならなくなっていくんだろう。
望んで有名人になったわけじゃないけど、有名になってしまったからにはいつまでも気にしていたら生活自体が成り立たなくなっちゃいそうだしね。
さあ、明日からはラルフお兄ちゃん(小)と一緒の学校生活。
どんな風になるのか、今からとっても楽しみだ。
そして、私の目標をもう一度確認する。
それは、ラルフお兄ちゃん(小)を、立派な勇者様に育てる事だ。
この間は、それってお嫁さんの仕事だったっけ!?なんて思ったりしたけど・・・
でも、私とラルフお兄ちゃんはそういう夫婦でいい、って決めたんだもん!




