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6.小っちゃくなった勇者様⑤

「食事にする?お風呂にする?それとも・・・」

 部屋に戻ってすぐに、私が世の中のシンコンのお嫁さんの定番のセリフ!?を口にすると、まだ言い終わってもいないうちにラルフお兄ちゃん(小)は、

「ミルフィがいい!」

 って言って子犬みたいにじゃれついてきた。

 かわいい。

 けど、さすがにこの反応は予想してなかった。


 だってあのセリフ、『シンコンサン』になったら一度は言ってみたかった・・・ってだけで、冗談のつもりで言ったんだもん。

 けど、ラルフお兄ちゃん(小)は大まじめだから、冗談だよ、とは言えない。

 私はちょっと苦笑いしながら

「じゃあ、お風呂にしよっか」

 と華麗にスルーを試みる。

「ミルフィと一緒だったらどっちでもいいよ!」

 って言ってラルフお兄ちゃん(小)は私の服の裾をギュッと握ってきた。

 どうやらスルーさせてくれるつもりは全然ないらしい。


 というわけで、私とラルフお兄ちゃんは昨日の夜、今朝に続いて一緒にお風呂に入ることになった。

 まあこのあとも毎日一緒に入るのが日課みたいになるんだけど、シンコンサンだから問題ないよね。

 で、ラルフお兄ちゃん(小)はさっき半泣きだったのがうそみたいにはしゃいでるけど・・・

「あ、ちゃんと体洗わないとダメだよ!」

 って止めようとしたけど間に合わず、ラルフお兄ちゃん(小)はドブンとおっきな水しぶきをあげて勢いよく湯船に飛び込んだ。


「もうっ!」

 ラルフお兄ちゃんがちっちゃいからって言うこともあるけど、3回目ともなると裸の恥ずかしさとかはもはや全くと言っていいほどない。

 ・・・まあ、女の子としては如何なものかと思わないことはないんだけど。

 でも、ないものはないんだから仕方ない。(仕方なくちゃダメなんだけど)

 私は丸裸のままで足を肩幅ぐらいに開き、腰に両手を当てて、頬を膨らめる。

 それから椅子の方を指差して

「ほら、洗ってあげるからここ座って!」

 って言うと、ラルフお兄ちゃん(小)は特に抵抗することもなく、湯船から飛び出してイスにちょこんと腰かけた。


 そう言えば、フタバも入浴の常識とかあんまり知らなかったなあ・・・。

 以前いっしょに温泉に行った時にはオモチャ持ち込んだり、浴室で走ったりしてたし。

 ちなみに温泉って言ったけど実際にはこの宿も含まれる大きな「旧王城」の中にある共同浴場の事で、この宿屋にひかれているお湯も元はと言えば同じところから引かれているお湯なんだ。

 

 ラルフお兄ちゃん(小)腰かけたまま、まな板の上の鯉、って感じでじっとしてる。

 さあ、どこから洗おうか。

 そんなわけで、まずはラルフお兄ちゃん(小)の髪。

 男の子の短い髪って固いのかと思ってたけど、ラルフお兄ちゃん(小)の髪は以外とやわらかい。

 それでいて、そろった毛先の弾力は適度にあって、なんかクセになりそうな手触りだ。

 ラルフお兄ちゃん(小)はと言えば、石鹸が目に入らないように両手で自分の顔を押さえている。

 私は元々おっきなラルフお兄ちゃんにあこがれてたんだけど、小っちゃなラルフお兄ちゃんもかわいいなあ・・・。


 私はちょっと考えた。

 きっと、こういうことなのだと思う。

 私とラルフお兄ちゃんはきっと最初から運命の糸で結ばれていて、それはラルフお兄ちゃんが年上だっ たからでもないし勇者様だったからでもないのだ。

 だから、ラルフお兄ちゃんが小っちゃくなっても運命が変わってしまう事なんてない。

 私は小っちゃくなったラルフお兄ちゃんも大好きだもん!


「ミルフィまだ?」

 あっと、思わず夢中になっちゃってた。

「ごめんね。髪はもういいから流すね。体は自分で洗える?」

 

「うんっ!」

 と、ラルフお兄ちゃん(小)は迷わず答えたんだけど、ちっちゃい子にこう聞いてもたいてい『洗えない』とは言わない。

 でも本当にきちんと洗えるかどうかは別問題だから、ちゃんと見てるからね!


 私はラルフお兄ちゃん(小)の様子を確認しながら自分の体を洗った。

 私の髪は長くて時間がかかるから後回しにしてっと。

 ラルフお兄ちゃん(小)を先にあげちゃってからだね。

 外で待たせて風邪ひかせたら悪いし、中で待たせたらのぼせちゃう。


 さあ、ラルフお兄ちゃん、ちゃんと洗えてるかな?

 ん、大丈夫そう。


 それを確認してから、私はラルフお兄ちゃん(小)を抱っこして一緒に湯船に入った。


 ふう、これで一段落。

 あとはのんびり・・・って言いたいところだけど、私はラルフお兄ちゃん(小)に聞いておきたいことがあった。

 フタバとラルフお兄ちゃん(小)話してた中でおかしい所があるって、気付いた人いる?

 私はそれを、聞いてみることにした。


「ねえラルフお兄ちゃん、最初私に、おっきいラルフお兄ちゃんが勇者様のお仕事で過去の世界に行って、今と昔のラルフお兄ちゃんが入れ替わってるって言ったよね?」

「うん・・・」

 と、ラルフお兄ちゃん(小)は答えた。

 けど、こめかみの辺りに冷や汗が出てるよ!


「じゃあ、もう一つ聞くね。さっきフタバとの話の中で魔王と戦った時の話をしてたけど、その時の話って、おっきなラルフお兄ちゃんは知ってても昔のラルフお兄ちゃんは知らないはずだよね!?」

 そうだ。

 フタバは勘違いしていたけど、もしも今と昔のラルフお兄ちゃんが入れ替わっているのだとしたら、あの話は『知らない方が正解』だったのだ。

「私に本当の事、教えて」

 私はさらに詰め寄った。

 別に責めるつもりがあったわけじゃないんだけど、ホントの事を知りたかった。


「ごめんなさい。本当は、小っちゃいボクが本当のボクなの。勇者の力でおっきくなってただけで、魔王がいなくなったから勇者の力がなくなって・・・」

 つまり、ラルフお兄ちゃんは魔王を倒した時点でこんな風に小っちゃくなっちゃうことは分かっていたことだったらしい。


「じゃあ、何で私に嘘ついたの?正直に話してくれたらよかったのに・・・」

「だって・・・ミルフィがスキなのはおっきいボクでしょ?だから・・・いつかおっきいボクが帰ってくるって思ってくれなかったら、嫌われちゃうと思ったの。ごめんなさい」

 むう・・・。

 原因は小っちゃい子特有の浅知恵だった・・・。

 だけどそれもかわいい。

 それにこんな反応されたらこれ以上強くは言えないよ。


「もう・・・私はそんなことでラルフお兄ちゃんを嫌いになったりしないよ」

 私はラルフお兄ちゃん(小)を安心させようと、頭を軽くポンポンっとしてあげた。

 それから、

「けどね、もしかしたらおっきいラルフお兄ちゃんが帰って来てくれたらな、って思ってたのもホント。そのせいでつらい思いさせちゃったかな、ごめんね」

 って続ける。


 ラルフお兄ちゃん(小)は、じっと私の方を見たままギュッと唇をかんだ。

 それから意を決したような表情をして、こう言ってくれたのだ。

「ねえミルフィ、ボク、目標を見つけたの。ボクはね、ミルフィが憧れたボクになる!絶対なるから、もうちょっと待っててね!!」

 

なんか、思わずうるうるっと来てしまった。

 『ラルフお兄ちゃんのお嫁さんで良かった!』ってこれ以上に思える台詞はいくら考えても思いつかないぐらいだ。

 気が付くと私は、ラルフお兄ちゃん(小)をギュッと抱きしめていた。


 ラルフお兄ちゃん(小)もギュッて返してきたから、私たち2人は裸で抱きしめ合ったっていう事になる。

 ・・・そう言う表現をするのは女の子としてはきっとホントはアウトなんだろうけど・・・。

 でも、他の表現が思いつかないから、まあいっか、と言うことにしておこう。


 ともかく、ラルフお兄ちゃん(小)が愛おしすぎてギュってするのが我慢できなかった。

 それはホントのホントだよ。


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