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5.小っちゃくなった勇者様④

 2試合目の模擬戦は、フタバの方からはあまり打ち込まず、ラルフお兄ちゃん(小)の動きを一つ一つ確認してあげている感じだった。

 最初の打ち込みこそ結構鋭くってフタバもちょっと面食らってたけど、2の太刀、3の太刀が甘いのを見るや、

 「なんでもかんでも適当に打ち込めばいいってもんじゃないでしょ!」

 とか激を飛ばしたりする。


 ラルフお兄ちゃん(小)はいったん距離をとって、なんとかフタバのスキを見つけて打ちこもうとするんだけど、なかなかうまくいかない。

「攻めばっかに気を取られてるから引き際がスキだらけよ!」

 疲れて動きが雑になってきたラルフお兄ちゃん(小)に、またフタバが指摘する。

 なんか、フタバがラルフお兄ちゃん(小)に教えてあげてるって感じだ。

 感じ、って言うよりフタバはそのつもりだったのかも。


 そんな状態が5分ぐらい続いてラルフお兄ちゃん(小)が息を切らしてきたのを見ると、フタバは

「はい、今日はこのぐらいまで!」

 って一方的に合図をした。


 それに納得がいかない様子のラルフお兄ちゃん(小)は

「まだ負けてないもんっ!」

 って言って攻撃するんだけど、フタバはそれを自分の剣で受け止めてから押し返した。

 そしてラルフお兄ちゃん(小)が下がるところを足を引っかけて転倒させて、その鼻先に切っ先(木刀だから刃はないけど)を突き付けた。


「もう終わりって言ってるでしょ!そんなにバテて無茶苦茶に振り回したって意味ないわよ!!」

 フタバに怒鳴りつけられると、ラルフお兄ちゃん(小)は後ろから見てても分かるぐらいしょんぼりしてる。


「ほら、さっき自分で『泣いてないから負けじゃない』なんていってながらもうベソかいてんの!?話になんないわ!」

 フタバはさらに追い打ちをかける。

 さすがに見てらんなくなって、私はラルフお兄ちゃん(小)の方にかけ寄った。

 

 正面から見ると、グッとこらえようとはしてるみたいだけど、やっぱり泣いちゃってるよ。

 痛さで言ったら最初の指を打たれたときの方がずっと痛いはずだから、痛くて泣いてるんじゃないとは思うけど・・・。


「ボクがラルフだもん。ホントだもん!」

 ラルフお兄ちゃん(小)はうらめしそうにフタバの方をじっと見ている。

 そっか、ウソつきみたいに言われるのが嫌だったんだね。

 私はラルフお兄ちゃん(小)の頭をギュッとしてあげた。


「大丈夫。私は信じてるからね」

 そう言いながら私は、嗚咽を漏らしかけて必死で耐えているラルフお兄ちゃん(小)の頭の後ろ側を軽くポンポンと叩いてあげた。


 でも、フタバには余計そのことが気に食わなかったらしい。

「ミルフィ、あんたもそんなチビスケ甘やかしてんじゃないわよ!」

 つまり、いわゆるやきもちってやつだ。


「ラルフお兄ちゃん(小)が強くないのはまだ小っちゃいんだからしょうがないじゃん。これから強くなるんだから!本物だったら本物だよ!!」

 ラルフお兄ちゃん(小)は、間違いなく本物。

 私にはわかってるんだけど、それを他の人にちゃんと伝えるのは難しい。

 なんか歯痒いなあ・・・。

 だけどね、内弟子でずっと一緒にいたフタバにだって本当は分かってるはずなんだと思うんだけど・・・。


「じゃあひとつ質問するわ。『天の柱』でラルフお兄ちゃんが魔王と戦った時、天の果てはどうなってた!?本物だったら分かるはずだよね??」

「わかるもん・・・」

 ラルフお兄ちゃん(小)はちょっと私に目で合図してから、ちょっと涙をぬぐって、それから私の手を振りほどいてフタバに向かい合った。


「『天の果て』には光を出す天井がある。『天の柱』は勇者の力がないと入口が開かない所だから他の人にはわかんないはずだよね!」

 一瞬、沈黙。

「あってる?」

 って私が聞くと、フタバは答えなかったけど顔は肯定してる表情だ。


「もう一つボクしか知らない事言ってあげる。ボクが魔王と戦ってる最中、フタバはボクが作ったバリアの魔法の中で危なくなかったはずなのに、おもらしして泣いてたんだ!」

 今度はフタバの方がウグッと言葉に詰まる番だった。


「そうなの!?」

 私は再び聞き返した。

 フタバが困っちゃっていると、ラルフお兄ちゃん(小)は

「僕ちゃんと見てたんだかんね!フタバはウソ言わないんでしょ!?」

 ・・・って言って。

 完全に攻守交替だ。


「うるさいわね!と・・・とにかく、あんたみたいな弱っちいチビスケをラルフお兄ちゃんだなんて、あたしは絶対認めないから!!」

 今度はフタバが話題を逸らそうとして必死。

 フタバの言い分もなんかラルフお兄ちゃん(小)に合わせて小っちゃい子みたいになっちゃってるよ。

 ていうか、フタバだって人のおねしょの事言えないじゃん!

 ・・・まあ、それは、今は重要じゃないんだけど。


「次は絶対勝つもん!」

 ラルフお兄ちゃん(小)もちょっと熱くなってきてるみたいだ。

「そんな急に強くなれるわけないでしょ!だいたいなんでそんなに何度もあんたの相手してあげなきゃならないのよ。あたしには練習にもなんないんだからっ!!」

 ここまでくるとフタバも大人げないなあ・・・(大人じゃないけど)。


 こうなると、ラルフお兄ちゃん(小)も何も言い返せない。

 ケンカ・・・ではないけどこれだけ言い争いになってるところに私が口を挟んでも無駄そうだしね。


「けど・・・一つだけ、あたしがあんたの相手をしてあげる条件があるわ」

 と、フタバは言った。

「あんたがあたしの弟子になるのよ。そしたら毎日でも相手してあげるわ。弟子にしてほしかったらなんて言えばいいか、分かってるわよね?・・・もっとも、チビスケにそれだけの根性があれば、の話だけど!」


 やきもちって怖いよね。

 あのフタバがここまで意地悪言うなんて。

 私もなんか言い返したいけど、火に油を注ぐ結果になるのは目に見えてるから今はガマンだ。


 ラルフお兄ちゃん(小)は迷ったように、私の方を見ている。

 けど、それはラルフお兄ちゃんが自分で決めていいと思うよ。

 私がそれを伝えると、ラルフお兄ちゃん(小)は一回ギュッとくちびるをかんでから、またフタバの方に寄って行った。

 それから、

「お師匠様、僕に剣術を教えて下さい」

 って言って、ぺこりと頭を下げた。


 ホントは割り切れない感情とかも有るんだろうけど、ラルフお兄ちゃん(小)はすごく真剣だった。

「なによ、そんなに素直になられたら嫌味の言い甲斐がないじゃない。けど、いいわ。毎朝6時から1時間、学校から帰ってから1時間の計2時間、あんたの稽古につきあったげる。朝は体力づくりで夕方が実戦形式の稽古よ。朝一回でも寝坊したらその場で破門だかんね!」


 ラルフお兄ちゃん(小)はちっちゃく頷いた。

 これで逆師弟関係が成立しちゃったんだけど、ラルフお兄ちゃん(小)本人がやる気なんだからまあいいかな。

 私じゃ剣術は教えられないから、強くなるにはフタバに教えてもらっちゃうのがいいのかもしれないし。


「あと、ミルフィ、あんたも一緒につきあってもらうわよ。保護者としてね。動ける格好で朝6時。ここにきなさい!」

 !?

 まさかそう来るとは思ってなかったけど・・・でも、まあいいか・・・。

 いろいろ過去の経緯があって模擬戦はパスさせてもらいたい所だけど。

 私は首だけ縦に振って意思表示。


 それを確認すると、フタバは

「じゃあまた明日ね」

 とだけ言って、自分の部屋へ戻ってしまった。

 言いたいことだけ言って・・・とは思うけど、まあ仕方ない。

 

 そんなわけで私たちのシンコンセイカツは、思ってたのと全然違うものになってしまいそう。

 うーむ・・・。


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