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4.小っちゃくなった勇者様③

 その日の夕方、小学校から帰ってきたフタバはさらに機嫌が悪くなっていた。

 その時はなんでか分からなかったんだけど、後から聞いた話によると、学校での模擬戦の授業で学年一強い男子に再選を挑んでかなり酷い負け方をしてしまったらしい。


 再戦を挑んだ、って言ったけど、最初の試合の時はフタバの方が勝っているんだよね。

 だけど、その時相手の男子が手を抜いていたのが発覚して、『次こそ全力を出させて勝つ!』ってずっと意気込んでたんだ。


 その負け方っていうのが、ホントに試合開始から一瞬の出来事だったらしくて・・・。

 フタバは最初に構えた格好のまま、何の反応もできずに鳩尾に強烈な突きを喰らってしばらく息が詰まって立ち上がることも出来ない状態だったらしい。

 反応が出来なかったって言っても見えなかったわけじゃなくって、『何をしてもダメな気がして迷ってしまい、判断が遅れた』ってことみたい。

 うーん・・・戦士系の子も大変だね。

 

 で、これからフタバとラルフお兄ちゃん(小)が稽古をすることになっているんだけど・・・まさかフタバったらうっぷんを晴らすつもりじゃないよね!?


「ほらチビスケ!さっさと準備しなさい!」

 って言い方を聞いてると、すっごく不安なんだけど・・・。


 ラルフお兄ちゃん(小)とフタバの武器は共に、片手剣(木刀)と小さい盾。

 もともとフタバの剣術が、ラルフお兄ちゃん(大)から習ったせいもあってスタイルは同じだ。


「ほら、これもちゃんと付けときなさい!そうしないと、ケガするのはあんただかんね!」

 そう言ってフタバが投げてラルフお兄ちゃん(小)に渡したのは『守護の腕輪』だ。

 どうやら学校で先生に話をして借りてきてくれたらしい。

 これは一定以下のダメージを完全に防ぐという優れものの魔法のアイテムで、子供同士の試合だったらこれさえつけておけばまずケガをすることはない。


 とはいえ、試合中殴られると痛い設定にはなってるんだ。

 そうじゃないと手を抜く子がいるかもしれないしってことらしい。

 もちろん、実際の防具として使う時の為に痛みを感じない設定に変更することもできる。


 フタバが帰ってきたら稽古をすることは前もって言われてたからラルフお兄ちゃん(小)の準備運動なんかは終わっている。

 フタバも学校の授業で模擬戦をしてきたぐらいだから大丈夫だろう。

 で、戦士系じゃない私は見学するだけ。

 気がきじゃないけどね。


「じゃ、あたしに勝てたらあんたがラルフお兄ちゃんだって認めてあげる。でもあたしに負けたらただのチビスケよ!弟子に負ける師匠なんてありえないかんね!!」

 うーん、フタバって普段はこんなこという子じゃないんだけどなあ・・・。

 でも、わざわざ『守護の腕輪』を借りてきて怪我しないように気遣ってくれてるってことは、そんなに心配しないでも大丈夫と思ってもいいかも。


 ラルフお兄ちゃん(小)の方はと言えば、全然そんなことを気にした風もなく、やる気満々みたい。

 体はちっちゃくても、やっぱ大物だ・・・。

 剣と盾を何度か動かしてみてから、にっこり笑って、フタバの方にぺこりと頭を下げ、

「よろしくお願いします!」

 って元気よくあいさつした。

 フタバの方はちょっとためらってるかんじもあったけど、つられるようにしてあいさつ。

 

 フタバの実力は、同級生に超規格外の男子がいてその子にだけは敵わないんだけど、学年全部合わせても間違いなく2番目には強い。

 大人が相手でも勝っちゃうこともあるぐらいだから、はっきりいって相当強いって言って間違いないと思う。

 じゃあ、ラルフお兄ちゃん(小)はどのぐらいの実力なんだろう・・・。


 2人が向かい合って剣を一度カツンと軽く合わせたのが、試合開始の合図だった。

 普通は初めての相手との試合ではちょっとは様子を見るとかしそうなもんだけど、フタバは最初から容赦なしで切り込んだ。


 ラルフお兄ちゃん(小)は頑張って盾で受け止めた。

 1年生であれに反応できる時点で相当すごいとは思う。

 だけど、フタバに押されるとやっぱりラルフお兄ちゃん(小)の方が体も小っちゃいし、力比べでは分が悪いみたいだ。


 押し合いでは勝てないので、ラルフお兄ちゃん(小)は相手の力を利用して、距離を離そうとする。

 だけど、距離を離すときの押し方が足りなかったのと、回避する方向が真後ろだったせいで、フタバにそのまま追撃されてしまう。

今度は自分が下がりながらだから、体制も悪くて盾で止めることは出来ない。

だからラルフお兄ちゃん(小)は、今度はその攻撃を剣の方で止めた。

 片手じゃ支えきれないので、盾を持ってる方の手も剣に添えて・・・。

 私が見た感じでは、今度も何とか耐えたように見えた・・・けど、フタバはそこで力を抜いて構えを解いた。


「なによ、全然ダメじゃない。ちょっとその腕輪、見せてみなさい」

 『守護の腕輪』は実際のダメージを防いでくれるかわりに『判定』する機能がついていて、ダメージを受けた判定になると赤く光る。

 そしてラルフお兄ちゃん(小)の腕輪は、赤く光っていた。

 つまりそれは、負けたってことを意味している。


 でも、なんで?

 フタバの攻撃はちゃんと受け止めたからダメージはないように見えたんだけど。

「剣で剣を受け止めるのに反対の手で支えるときは、支える方の手はちゃんと開いとかないとダメじゃない。基本中の基本でしょ!」


 その説明だけじゃ、剣術に詳しくない私にはよく分からなかったんだけど、どうやらラルフお兄ちゃん(小)が剣で剣を受け止めたときに自分の剣を握っちゃってたから、支えた方の手の指に直撃を受けちゃったらしい。

 ・・・ってことは、自分も相手も木刀だとは言え、ものすごく痛いはずじゃん!

 だって、守護の腕輪はダメージは防いでくれても痛さはそのまんまだからね。


 ラルフお兄ちゃん(小)は、無言。

 痛みに耐えてるのかも。

 正直言って私だったら耐えられないと思う。


「結局、チビスケはただのチビスケだったわけね。残念だわ」

 フタバの言い方、ちょっと意地悪すぎるんじゃない?

 ・・・って思ったんだけど、ラルフお兄ちゃん(小)は

「泣いてないから負けじゃないもん!」

 って言ってもう一度剣と盾を構える。


「なによそのお子様ルール!じゃあなに、あんたあたしを泣かすつもりでいるわけ!?」

 そう言われて、ラルフお兄ちゃん(小)はうぐっと言葉に詰まった。

 だって、どう考えたって、泣かなきゃ負けない、なんていうルールはありえないもんね。

 負けたくなくって思わず言っちゃったものの・・・って感じなんだろう。


「ねえフタバ、もうやめなよ。ラルフお兄ちゃんまだ小っちゃいんだし!」

 私は思わず2人の間に割って入ったんだけど、

「ミルフィが口挟むことじゃないでしょ。だって、そのチビスケはまだまだやる気みたいよ?その子がベソかいて嫌がってたらあたしだってそれ以上いじめようなんて思わないわよ!」

 って言い返された。

 そして、ラルフお兄ちゃん(小)の方を見ると無言のままだったけどちっちゃく頷いた。


 本人は『泣いてない』って言ってたけど、痛みに耐えてる感じは少なくとも半ベソの状態。

 でも、それを言っちゃったらもっとかわいそうな感じだから言わないけどね。


「じゃ、その根性に免じてもう一度だけ相手してあげる。次で最後だかんね。あと、あんたの左手ちょっと出してみなさい」

 自分で『出してみなさい』って言っておきながら、フタバはラルフお兄ちゃん(小)の手をグッと掴んで引き寄せた。

「ケガはしてないはずだけど、一応痛みは消しとくから」

 そう言って、回復魔法。


 フタバ、こういう所は面倒見いいなあ。

 こうしてみてるとさっきまで心配してたのがなんか悪かったなって気になってくる。


「スゴイ、ホントに痛みがなくなった!」

 ラルフお兄ちゃん(小)も目を丸くしてるし。

 剣で戦えて回復魔法が使えるってのはある意味黄金パターンだからうらやましくもある。


「チビスケ!そんなのいいから、早く構えなさい。今度はあんたから打ち込んでくるのよ!!」

 フタバはすかさず厳しい激を飛ばした。

 言い方はやっぱりきつい感じだけど、さっきほど心配な気持ちにはならなかった。

「うんっ!」

 ラルフお兄ちゃん(小)も、それに元気よく応えた。


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