表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

2.小っちゃくなった勇者様①

 私は昨日の大観衆の中でのキスを、夢の中で再び堪能していた。

「んっ・・・」

 自分で出した声が、聞こえていた。

 これが夢だ、って言う認識もあった。

 けど、いいじゃん。

 もうちょっと幸せを満喫したい。

 

 しゅぅぅぅぅぅ・・・

 あれ、何の音だろう。

 なんか、あったかくって気持ちいい・・・開放感に包まれる感じだ。


「ミルフィ、起きて・・・」

 声が聞こえた。

 もう少し寝させておいて・・・

「起きないとやばいよ!」

 今度は体をゆさゆさとゆらされた。


「ん!?」

 次第に意識がはっきりしてきて、私は瞬時に体をこわばらせた。

 なんでかって言うと『あったかくって気持ち悪かった』からだ。

 やってしまった・・・。

 『出ていたのを今止めた』感触があるから、否定のしようがない。

 私は9歳にもなって、やってしまったのだ。

 おねしょを。


 何でこうなってしまったんだろう、と考えてみる。

 そういえば昨日、寝る前にちょっとトイレに行きたかったけど、行かなかった。

 眠すぎたから?

 ううん、それもあるけど、普段だったらそれでも行ってたはずだ。

 ラルフお兄ちゃんに『おねしょ大丈夫だよな?』なんて聞かれちゃったから、多分意地になってトイレに行くって言い出せなかったのだ。

 むう・・・泣きたい・・・。


「ミルフィ起きた??」

 ラルフお兄ちゃんは、妙に子供っぽい声でそう言った。

 なんかおかしいな、とは思ったけど私はそれどころじゃない。

「まだ起きてない・・・」

 私はそう答えた。

 起きてても、起きられない・・・。


「起きてるじゃん!」

 この展開は、お布団をはがされる展開だ・・・って思ったけど、そうはならなかった。

 とはいえ、このままこもっている訳には行かない。

 私はお布団の中から顔だけひょこっとだした。


 そしたら、声の感じと同じくラルフお兄ちゃんがちっちゃい・・・。

「ねえミルフィ、お話しなきゃならないことがあるの。聞いて?」

 本当はラルフお兄ちゃんがちっちゃくなった方が大問題なんだけど、今の私にとってはおねしょのショックの方が大きい。

 でも、このままってわけにはいかないし・・・。


「おねしょしちゃった・・・」

 涙が出てきて、私は鼻をすすり上げた。

「えっとね、ミルフィにおはようのキスをしたの。そしたらおしっこの音が聞こえたからあわててキスをやめて、ミルフィの事を起こしたの。だけど間に合わなくて・・・ごめんね」

 ちっちゃいラルフお兄ちゃんはそう言うんだけど、こんな言われ方したら私、余計ミジメじゃん・・・。


 そしてさらに、

「泣かないで・・・」

 って、頭を撫でられた。

「・・・」

 私が何も言わないでいると、今度は

「じゃあ、おねしょは僕がしたことにしよ!」


 ちっちゃくてもラルフお兄ちゃん、やさしい。

 それからちょっと強引に私の手を引っ張って、お風呂の方に連れて行かれた。

 昨日に引き続き、2日連続で一緒にお風呂というまさかの展開だ。


 そしてラルフお兄ちゃんはおっきな桶にいっぱいに水を入れて、先に全部服を脱いでその中にポイポイっと入れて行く。

「ほら、ミルフィも!」

 一瞬、『ええっ!?』って思わなかったわけじゃない。

 最初は迷ったんだけど、でも脱いでしまうと昨日ほどは恥ずかしくはなかった。

 ラルフお兄ちゃんが桶をポンと叩いて

「はい!」

 って言うから、私もラルフお兄ちゃんに習って脱いだ服を全部桶の中に放り込んだ。


「ほら、これでもうしょうこ無くなったよ。これで体を洗っちゃえばカンペキ!」

 ああ、もう『ちっちゃいなんて言ってごめんなさい』って感じだよ。

 いや、ちっちゃいのはちっちゃいんだけどね。

 

 それからちょっと狭いけど、今日は向かい合って湯船に入ることにした。

 昨日とは逆に私のヒザの上にラルフお兄ちゃんを乗せてあげてもいいんだけど、子ども扱いされたのがちょっと胸がチクッとした感じだったから、ラルフお兄ちゃんにそんな気持ちを味あわせたくはなかった。

 さあ、これでやっと落ち着いて話ができる。

 ラルフお兄ちゃんがちっちゃくなった理由、ちゃんと聞いとかないと!


 で、お風呂の中で聞いた話によると、おっきなラルフお兄ちゃんは勇者様の用事で10年前の世界に行っているらしい。

 それと入れ替わりに10年前のラルフお兄ちゃんがこっちに来ちゃったんだって。

 おっきいラルフお兄ちゃんが16歳だから、10年前だと6歳。

 1年生か・・・。

 ホントはここ、驚くところなんだろうけど、もうなにがあっても驚かないよ!

 このぐらいで驚いてたらきりがない感じだからね。


 ラブラブな『シンコンセイカツ』がおあずけなのは残念だけど、この世界はそんなに甘くないらしい。

 勇者様のお嫁さんはこんなことでメゲてたらだめなのだ。

 ・・・おねしょでメゲてたけどね。


「そうだ、ラルフお兄ちゃん、これ見て!」

 私は昨日サボったお風呂での水魔法の練習を見てもらった。

 『ウォーターカッター』だと1年生には危ないと思って、『ウォーターフレイル』をつかって石でできた床にコツンと当てて太鼓みたいにリズムを取ってみた。


「うわ~すごい。僕もやってみたい!」

 ラルフお兄ちゃんはすぐに興味を持ってくれた。

 将来的にはラルフお兄ちゃんの得意の魔法の属性は『光』のはずだけど、別に『水』の魔法が使えないと言うわけではない。

 だって、それを言ったら私だって本当は『風』だからね。


 それよりもちゃんと魔力が備わっている、ってことが重要で、ちょっとコツを教えてあげるとすぐにまねして使えるようになった。

 やっぱり勇者様の才能ってすごい。


 それで、2人して夢中になって遊んでいるうちに、いつの間にかお風呂のお湯がほとんどなくなってしまっていた。

 風呂桶の中でお湯もないのに2人して丸裸で向かい合ってるって、もはや何してるのか分かんないよね(汗)


 ラルフお兄ちゃんが

「くちゅんっ」

 とちょっと可愛いくしゃみをする。


「あ、風邪ひく前に出よっか」

 私が言うと、ラルフお兄ちゃんもちょっと苦笑い。

 で、脱衣所でラルフお兄ちゃんの頭を拭いてあげてる時に気付いたんだけど・・・。

 ちっちゃいラルフお兄ちゃんの着替えって、ないよね。


 そう、ないのだ。

 私の服を貸してあげるしかないんだけど、男の子でも着れる服、あったかなあ・・・。

 いろいろ考えて、結論としては魔法使い用のローブだったら何枚もあるからなんとか大丈夫でしょ、ってことになった。

 色がエンジ色しかないけどピンクとかじゃないからまだマシだよね。

 あと、さすがに下着は貸してあげられないから、今はガマンしてもらうしかない。

 

 6歳児じゃさすがに一人で買い物は無理だろうから後でいっしょに買いにいってあげないと。

 ・・・これってお嫁さんの務めだっけ!?


 ローブだから上からかぶせてベルトで止めるだけだ。

 色のことはラルフお兄ちゃんも特に嫌がったりはしなかったし、特に問題はなさそう。

 上から被って

「ミルフィのにおいがする・・・」

 って言われるとちょっと照れるけどね。

 あと、ダブダブなのも仕方がない。

 

 私も同じローブだから、おそろい。

 ペアルックっていうやつ?

 ・・・おっと、そんな事言ってる場合じゃなかった!


「おねしょのお布団、どうしようか・・・」

 言っては見たけど、どうしようもないことは分かっていた。

 ここはラルフお兄ちゃん(大)が泊まってた旧王城の中の宿屋。

 つまり、自分の家と違って隠すとかごまかすとか一切できない。


「だいじょうぶ。僕がかわりに宿屋の人にあやまってあげるから」

 ラルフお兄ちゃんはさっきと同じように言ってくれた。

 胸の奥が、ちょっとチクッとした気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ