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ヴェイルズ ~番外編とかいろいろ~  作者: 田中桔梗
二次創作(いただきもの)
50/62

ディーン王女「シンデレラにはなれないけれど」 ※性別が全員違います

「#リプきたキャラを性転換させる」に対しての感想に、SSが届きましたのでこちらに掲載させてもらいました。

作:石河翠様(https://mypage.syosetu.com/730658/)

漫画:貴様二太郎様(https://mypage.syosetu.com/358768/)


挿絵(By みてみん)






 小さな城の裏庭で、ディーンはぽろぽろと涙を流していた。右手に握り締められているのは、エリー王子とセイン王女の結婚式の招待状。初めて好きになったひとだった。とても綺麗で、優しくて、まさに絵に描いたような王子様だった。


 王子よりも年上で、なんの特色もない小さな農業国の王女で、しかもたいして美しくもない地味な女。そんな自分がエリー王子と結ばれるはずなんてないことくらい、最初からよくわかっていた。けれど、エリー王子があまりにも優しかったら、つい夢を見てしまったのだ。分不相応な夢を。


 王子様がお妃様に選んだのは、やっぱり絵本から飛び出したようなお姫様。セイン王女は美しくて、賢くて、お強くて。同じ王女だと名乗るのがおこがましいくらい。だからふたりがお互いに惹かれ合うのは当然のことだというのに、浅ましい自分は心からそれを喜べない。なんて恥ずかしい、惨めな女。


 どうしても涙が止められなくて、けれど部屋の中で泣けば侍女たちに見られてしまうから、ディーンは裏庭に逃げ込んできたのだ。王女が庭いじりなんてと皆が眉をひそめるけれど、そのおかげでここには誰も来ないから。……来ないはずだったのに。


「あら、ディーの可愛さをわからないなんて、エリー王子もおバカさんね。こんなに真面目で、素直な女性は他にいやしないのに。草花を愛する優しいディー」


挿絵(By みてみん)


 この城に遊びに来るなんて連絡はなかったはずだ。結婚式の知らせを受けて、ディーンのことを心配して駆けつけてくれたのだろうか。きっとはっきり聞いたところで、彼女は笑って答えてくれないだろうけれど。


 それにしてもどうしてここにいるのがわかったのだろう。セイン王女とはまた異なる方向性で綺麗な友人は、そっとディーンを抱きしめる。人工的な香りが苦手なディーンのために、友人はこの城を訪れる時には香水をつけていない。それなのにふわりと甘い香りに包まれて、ディーンはどぎまぎした。


 土いじりをするせいで荒れ果てているてのひらを、友人はまるで大切なもののようにゆっくりと撫でる。当然のようにあたたかな指先を絡められて、体温が唐突に上がった気がした。


「泣かないで、ディー。あなたが泣くと、私まで悲しくなるわ」


 それだけ言うなり、ぺろりと舌で涙を舐められた。あまりのことに、何をやっても止まらなかった涙が引っ込んでしまう。彼女は子どもみたいな自分を慰めてくれているだけ。自分と同じ性別の友人に抱きしめられて緊張するなんて、どうかしている。それがわかっている癖に、ディーンはなぜか顔が赤くなるのを抑えられない。


「ディー、酷いクマができているわ。よく眠れないみたいね。良かったら、今夜は一緒に休みましょう。ゆっくり、良い夢を見られるように私が手伝ってあげる」


 どうして、自分の友人はこんなに蠱惑的(こわくてき)な瞳をしているのだろう。どうして、彼女は自分の腰に手を回しているのだろう。まるで口づけられるかのように、至近距離で見つめられて、ディーンは何だかぼんやりとしてしまった。


「姉さま、何をなさっているのです? ディーン様の目が腫れていますが、まさか……」


 かさりと音がなり、ジェルミア王女とよく似た顔が見えた。どうやらあれが話にだけは聞いていた、彼女の不肖の弟らしい。一緒にこの国に来たことはなかったはずだが、どういう風の吹き回しか。そして何が気に食わなかったのだろう、つんとジェルミア王女がそっぽを向いた。


「あら、私がディーを虐めるように見えて?」


「それもそうですね。なんと言っても大事なお友達という理由で、なかなか紹介して頂けなかったくらいですから。ディーン王女、よろしければ一緒にお茶でもいかがですか。おみやげにデールで流行りのお菓子をお持ちしたんですよ」


 そっと手を差し伸べられた。淑女をエスコートするのは、紳士のたしなみだが、田舎者のディーンを小バカにしたように振る舞う貴族だって少なくない。けれど目の前のエーデル王子は、ディーンのことを軽くみたりはしていなかった。女性だからエスコートする、ごく自然にそう考えているらしい。


 ひねくれているという自覚のあるディーンは、きらきらしい姉弟に挟まれて、何だか気恥ずかしい。誰に見られているわけではないけれど、この空間の中で自分が異分子に思えてそっと下を向いた。着心地は良いけれど、流行りから外れたスカートが目に入る。自分でもみっともないと思っていたけれど、ジェルミア王女が気にする必要はないというから、ついついそのままにしてしまっていたのだ。


「そうそう、あなたはすらりとしていらっしゃるから、スリットの入ったIラインのドレスが似合うと思いますよ。よろしければ、今度ぜひ選ばせてください」


 女性に服を贈るというのは、ある種の下心を意味するはずなのに、そんなことなどかけらも思っていない顔が見える。なんて無邪気な王子様なのだろう。


「ディーの綺麗な脚を、他の男に見せるなんてもったいないでしょ。勝手に変なものを勧めないでちょうだい」


 友人のよくわからない発言に、ディーンは首をかしげた。友人のおかげで、失恋の痛みは何だか和らいでしまった。そのまま小さく、ありがとうと呼び掛け、くすくすと笑う。滅多に見られないその柔らかな微笑みに、ジェルミアとエーデルが見惚れていたことにも気がつかないで。




続きも読みたくなる……!!

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