恋するプリンス ~アル王子、どこに向かう?~(2018/05/10)
アル先輩がもしも王子だったら~
というIFストーリーです。
「恋がしたい」
「は? ……あ、失礼しました。突然どうされたのですか?」
この眼鏡、今王子に向かって「は?」って言ったよな?
しかーし、俺はそんな小さなことで怒ったりしねぇ。
「今な、これ読んでたんよ」
「……恋をしたプリンセス……ですか? 珍しく勉強しているかと思えばこんな女性が読むような本を……」
表情も声色も変わってはいないが、こいつは完全に俺を馬鹿にしている。
「ぶわぁーか。だからアランは女心がわかんねーんだよ」
「……では、それを読めば分かると言いたいと?」
なんか眼鏡が光った。これは少しむっとしている証拠。
「違う違う。女性が好む本も色々読めっちゅーことだよ。そんなことより、恋だよコ・イ!」
「はぁ……」
なんだよその気の抜けた返事は! しょーがねーやつだな。
「俺もさ、好きで好きで自分の制御が利かなくなる恋がしてぇなぁーってさ。で、様々な試練を乗り越え結ばれる!! みたいなやつ。って、アランちゃん? 聞いてる?」
対面のソファーに座っているアランを見れば、分厚い本を広げ眉間に皺を寄せてそれを見ている。
俺がこんなに熱く語っているっちゅーのにだ。
「聞いてますよ。したらいいじゃないですか。むしろしてください。アル様にはそろそろお相手を決めていただきたいですから。今まで遊んできた中はいなかったのですか?」
「なんちゅーか、俺を見てるっていうより、王子を見てる感じがして冷めちゃうんだよなぁー……。そうそう、この本のリリー王女もそうだった……あっ!!」
俺は右手をぎゅっと握って立ち上がった!
そう、俺は今、物凄くいいことを思い付いたのだ!
何かを察したのか、アランは物凄く嫌そうな顔をしている。
そうだ。アランはきっとダメだと言うだろう。
しかし俺はやる!
俺は恋をしてみせる!!
◇
「えー、アル様……それでなんで喫茶店なんですか……?」
黒い腰巻きのエプロンに白いシャツが眩しいな、レイ。さすが爽やかイケメン。
俺は返事もせずにうんうんと頷いてると、隣にいるアランが険しい顔で睨んできた。
そんな睨みなんか利くかっつうの!! ってかお前も似合うな。うんうん。
「いいか、作戦はこうだ。俺は一般人。そしてこのお洒落な喫茶店の店長としてお客さんをターゲットにする」
「んー……お客さんと恋愛ってなんかまずくないですか?」
「ふっふっふ。そこだよ、レイくん。そのまずさが大事なのだ。『好きで好きで自分の制御が利かなくなる恋』。これに必要なのは背徳感! しかし王子としてあまり道を外すわけにもいかねえ」
「それで店長ですか……」
「その通り!!」
「はぁ……(このアホ王子……)」
アランの盛大なため息と共に聞こえてきた言葉は無視だ無視。
「よぉーーーし!! 開店準備だ!! アラン、レイ、頑張るぞ!!」
―― 一ヵ月後 ――
店は大繁盛した。
それもそのはず。
俺の入れる紅茶が美味いこと。そして何よりも、アランとレイの評判がいいからだ。
俺は毎日ひたすらカウンターで紅茶を作り、アランとレイが接客する。
キャーキャー言われるのはあいつらだ。
なんか違う。
思ってたのと違う。
恋なんかしている暇なんかねえ。
くそっ!!
だが俺は負けない!!
いつか俺も恋してやるんだーーーーー!!!!
おっと、この茶葉なら蒸らすのはもういいかな。
店内に爽やかな香りが漂う。
「どうぞ」
「あ……凄くいい香り」
俺はお客様の笑顔を見て、まあ、これも悪くねえかなって……。
<恋するプリンス ― 完 ―>
投稿日時メモ:2018/05/10 11:49




