ディーン「これもまた愛の形」(2017/05/28)
作:石川 翠様 http://mypage.syosetu.com/730658/
絵:桔梗
石川 翠様より二次創作を頂きました。
もしも乙女ゲームでディーン王子ルートがあったら……。
16章辺りで分岐してディーン王子を選択した場合のお話になります。
まさかここで分岐するとは……。
二次創作としてお楽しみください☆
喉の渇きを覚えて、エリーはふと目を覚ました。月明かりが部屋の中に満ちている。散々に喘がされたせいで、すっかり気を失ってしまっていたらしい。すでに夜もふけているようだった。
乱れていた夜着は新しいものに代えられ、汗をかいていたはずの肌もすっかり清められている。この意外に世話焼きな夫は、行為の後始末を侍女にさせることを好まない。だから甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたのは、この国の主であるはずの男なのである。その事実だけでも、自分がどれほどこの男に執着されているのかわかるような気がした。
それをどこか嬉しいと思っている自分に気がついて、エリーは少しだけ寂しく思う。こんな男のことなど、大嫌いだったはずなのだ。純潔を散らされた時など、殺してやりたいと思うほど憎んでいたはずなのに、どうしてこうなってしまったのだろう。
エリーは隣で眠る夫の髪を撫でてみる。すうすうと穏やかに眠る痩せぎすの男。意外にも柔らかな黒髪が、さらさらと手からこぼれ落ちた。どうしたことか眠っているはずのディーンが、穏やかに笑う。ああこの笑顔がいけないのだと、エリーは思った。人の命も、自分の国も、簡単に踏みにじる男だというのに、こんな風にどこかあどけない顔をするなんてずるいのではないだろうか。
エリーを手に入れるまで、欲望を剥き出しにしてまるで獣のようであったディーンも、夫になった後は驚くほど優しい。いや、婚姻を交わす前も、優しかったのだ。力ずくで犯すこともできたというのに、エリーが涙をこぼすだけでその手を止めるような男ではなかったか。
ようやっと手に入れたエリーに対して、ディーンは今までの距離を埋めるかのように、懸命に時間をとって会いに来る。お茶の時間や食事は欠かさず一緒に過ごし、出会う前の二人の思い出話を交わしてゆけば、一つ一つ互いの好きなものも覚えてゆく。国王として執務に励む傍らで、それだけの時間を捻出するのがどれだけ難しいかくらい、エリーにもわかっていた。
窓の外を見上げれば、空には大きな月が輝いている。そのすぐそばで、きらりと光る星が見えた。その星の色は、かつて愛した男の瞳の色によく似ている。
「ごめんなさい。もう……選んでしまったのです。さようなら、レイ」
どこか透明な笑顔で、エリーが微笑んだ。この国のかつての王女はそっと瞼を閉じ、愛する夫の頬に口付けた。
(【ルート】ディーン王子 「これもまた愛の形」)
石川 翠さん、素敵なお話をありがとうございました!!
投稿日時メモ:2017/05/28 19:05




