2018年 新春羽子板大会(2018/01/04)
konatsuさんからイラストとネタを頂きまして、そちらからSSを書いてみました。
「手は抜かないからな?」
「はっ。泣きを見るのはどっちだっちゅーの」
アトラス城内にある広い庭園で、アランとアルバートが睨み合う。手に持つのはとある国の羽子板と呼ばれるものであり、セイン王子がエリー王女のためにお土産として買ってきたものだった。せっかくだから遊んでみようということになり、今は決勝戦が行われようとしているところである。
この遊びは、鳥の羽の付いた玉を羽子板で打ち合うのだが、玉を落とすとその度に顔に墨を塗られるというルールがあった。そのため、セイン王子はもちろん、エリー王女、ギルやアリスの顔には既に墨が塗られている。
アランが放つサーブにアルバートが素早く受ける。その打ち返しは強いが、アランもそれを華麗なフォームで打ち返した。
どちらも譲らぬ攻防が繰り返される。
「あっ」
エリー王女が小さく声を上げたときだった。アランの羽子板ギリギリのところで羽が落ちた。
「くっ……」
「へっへっへ~。さぁ~て、アランちゃんのどこに書こうかな~……」
嬉しそうに筆を持つアルバートに、不服そうにアランは顔を出す。
「んじゃ、遠慮なく……むっつり……と」
「おい! 文字じゃなく丸とかだろ!」
「何書いてもいいんだよぉ~だ。悔しかったら俺に勝ってみろ」
「くそっ」
遠くでセイン王子の笑う声が聞こえる。アランはむすっとしたまま定位置につくと意識を集中させた。
「よぉーし、アラン。次は俺からいくぜっ!! ひっさーーーつ!! とるねーどさーーーーぶっ!!!」
アルバートは必殺でもなんでもない普通のサーブを打つ。
「ふざけた名前を付けるなっ!」
アランはイライラしながらもそれを打ち返す。
「いけっ!! 俺のイナズマ!!」
アルバートの強い攻撃になんとか羽子板に当たったものの、場外に飛んでいった。外野で見ていたセイン王子とエリー王女は手を叩く。
「アルバートはとてもお上手ですね」
「アル先輩、ああいうゲームだとめちゃくちゃ強いんだよ。あははは、髭描かれてる。親父さんみたいだ」
結局、何度もアルバートに点を取られたアランは、顔だけではなく腕などにも描かれて行く。
「悔しいからって泣くなよ~」
「泣いてないっ! いいか、手抜いてただけだからなっ!」
「はいはい」
その後もアランは何度もアルバートに挑み続けたが、一度も点を取ることが出来なかった……。