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3-2 衝突

騒動があったのは港の方だという。

男は人ごみをかき分けるように道を進んでいく。

ケイオスと黒服の護衛オルカは男の後をついて進む。

ヴァロは兄の背中を見失わないよう、フィアの手を引きながらそれに続く。

祭りのために通りは人で一杯で見失わないようにするので精いっぱいだ。

人をかき分けるようにして、ケイオスはその場に踏み込んだ。

ここの責任者のケイオスが来たことが皆に伝わり、人垣が二つに割れる。

中央では強面の男たちが対峙していた。

ケイオスは近付くとその場にいた一人の大男に声をかける。

「どうした?」

「会長、リュウレン商会の奴らがうちの商品に難癖つけてきやがった」

「ほう」

事情を聞いたケイオスは目を細める。

「俺たちは見たままのことを言っただけだ」

横から茶化すように声がかかる。

「ふざけんな。言いがかりをつけてきたのはお前らだろうが」

罵声が周囲に飛びかう。既に一触即発の状況である。

「あなたがグリフ商会の長、ケイオス殿ですね」

横から一人の男がケイオスに声をかける。

その男は細い目をしていて、背は低い。

一目で東の国の人間だとわかる服装をしていた

顔にはまるで張り付けたような笑みがある。

ヴァロは一目見て妙な嫌悪感をその男にいだいた。

「あなたは?」

ケイオスはその男と向きあう。

「申し遅れました。私はリュウレン商会の長ユンハと言います。以後お見知りおきを」

その男は丁寧に頭を下げた。

直後強面の男の一人の頬を思い切り殴った。

「申し訳ない、うちの若い衆が迷惑をおかけしたみたいで」

ユンハと言う男は涼しげな顔でそう言ってのけた。

ヴァロは争っている二つの商会の長が出てきたことにより、

どうにかこの場が収まりそうな気配に少し胸をなでおろす。

ユンハは周囲を見渡しながら続ける。

「ただこちらとしても、こんな大騒ぎになってしまっては引っ込みがつかない」

ユンハの言葉に誰もが振り向いた。

ヴァロはユンハの一言に潮目が一気に変わるのを感じた。

ユンハは顔から笑みを絶やさない。

「そこでどうでしょう?この際、商人らしく競売品の価値で白黒つけるというのは?」

「競売品の価値を競うということですか?」

ケイオスの言葉にユンハは頷く。

「そうです。ただ勝ち負けが決まっただけでは面白くない。

負けた方が勝った方に、その競売品の落札額の半額を払うというのは?」

ユンハの提示した勝負法にヴァロは驚いた。

「いいでしょう。私も『商人らしく』その勝負受けて立ちましょう」

ケイオスは笑って余裕をもってそう答えた。

ユンハの表情が一瞬動いたように見えた。

「おい兄貴」

幾らなんでも無謀である。相手の術中に飛び込んでいくのをみて、思わずヴァロは声を上げた。

「まあ見てろ」

ケイオスは横目でまるでそう言うかのようにヴァロを見る。

ユンハは手を叩き、注目を一身に受ける。

「それではいいですね。皆さん。ここにいる皆が証人です」

高らかにユンハは大声で宣言する。

ヴァロは引っ込みのつかないことになってしまったと思った。

これでは完全に相手の術中にはまりに行っているようなもの。

普通ならばそこに勝算はない。

「やれやれ困ったことになった」

当の渦中にいるケイオスは、口ではそういうもののどこか楽しげだ。

「会長」

「この件は後回しだ。皆は仕事に戻ってくれ」

ケイオスは動じない。

そうケイオスが言うと、そこにいた者たちはそれぞれ自身の持ち場に戻っていった。

「兄貴」

人がその場からいなくなるのを見計らってヴァロはケイオスに話しかける。

「競売会で私が勝てば問題はないだろう」

ケイオスの言葉にヴァロは頭が痛くなった。

なぜかは知らないが、相手はこちらをはめる気満々である。

おそらく初めに突っかかってきた男たちもユンハと言う男の指示かもしれない。

そのケイオスの大層な自信はどこから来るのか。

どうやらケイオスの頭の中では、すでに勝てるという前提で物事が進んでいるらしい。

「やれやれ、ここではもめごとは起こすつもりはなかったのだがな…。

全くの予想外。いやはや、だからこそこの世は面白い」

ケイオスはそうつぶやき、にやりと不敵な笑みをこぼした。

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