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2-2 ユドゥンとの対話

扉を開くと妙な香りがその部屋から流れてきた。

その部屋の中には妙な煙のようなものが充満していた。

癖のある香りだが、嫌な香りではない。

人によってはそれを好むものもいるだろう。

東の大陸からもたらされた香というものだということは

ヴァロは以前どこかで聞いたことがあった。

香木を火で熱しその煙を愉しむものだという。

東の大陸では上流階級の嗜好品だと聞いたことがある。

室温は一定に保たれ、冬だというのに快適な温度である。

これもここの結界の成せるわざなのだろうか。


部屋の中は異国情緒にあふれていた。

鹿の剥製やら、異国の壺やら調度品一つ一つ見たこともないモノにあふれている。

ヴァロはただ、無造作に置かれているというわけではなく

場所ごとに考えておかれているような印象を受けた。

その女性は部屋の中央の長椅子に寝そべるようにしていた。

おそらくユドゥンという聖堂回境師だろう。

「こんにちはフィアちゃん。もっとこっちに来てその顔を見せて」

妖しく微笑みながらユドゥンは声を出す。

ルビーのような赤い瞳が挑発するようにこちらをフィアを見つめていた。

長い黒髪が長椅子の周りに滝のようにあふれている。

その姿はまさに妖艶というにふさわしい。

服は東の大陸のものだろうか。鮮やかな赤の前開きの衣服のようなものを着用している。

服の隙間から白い胸の谷間が覗いていたのを視界にとらえ、ヴァロは思わず目をそらした。


フィアは先ほどまでの怯えが嘘のように表面上平静を保ちながら、

ユドゥンの前のソファに座った。

「ああ…なんて愛らしいのでしょう。その美しい金髪の髪。エメラルドのような緑の瞳。

母親似ですね。あの方の子供の頃にそっくり」

ユドゥンはフィアを見て、うっとりと見惚れている。

彼女はもっとも古い魔女の一人だとヴィヴィは言っていた。

四百年前の第二次魔王戦争以前から生きていると。

「御存じなのですか」

「あなたよりもずっと知っています。

あの方はとても、とても美しかったの。それにもっとも毅然としていて。

あの方がいるだけでその場の空気が張り詰めるようだった。最も好きなヒトの一人でした。

ねえ、フィアちゃん。ここはあなたの目から見てどう?」

微笑みながらもその瞳はフィアを捉え続け離さない。

ユドゥンの問いにフィアは少し考え、間をおいて答える。

「活気があって素晴らしい街だと思います」

「そうじゃないわ。私たちにとってあんなものたちいてもいなくても同じでしょう?

私が言っているのはこの結界のことよ」

その一言にヴァロはぞくりと寒気を覚えた。

彼女にとってはヴァロなど有象無象と変わらない存在なのだろう。

つまり今彼女の瞳に映るのはこの場ではフィアのみである。

こうなればヴァロはただ黙ってフィアの斜め後ろで石となっていることだけだろう。

「大丈夫。正直に話してくれませんか?」

見透かしたような彼女の視線はフィアを捉えて離さない。

「とても…とても恐ろしいと思いました」

彼女はうつむいてそう答える。

「フフフ…嬉しいです。あなたの本心が聞けて」

ユドゥンは怒るでもなく、ただ微笑みを絶やさない。

彼女は立ち上がると

「ねえ、フィアちゃん、あなたとはもっとお話ししたいわ」

そう言ってフィアの脇に腰かける。


その後フィアとユドゥンの話は暗くなってからも続いた。


「今日は楽しかったわ。時間が過ぎるのを短く感じました」

頬を上気させユドゥンは恍惚と語る。

対してフィアはどこかげっそりとしていて力をすべて使い切ったよう。

「今日も遅いですし、ここに泊まっていってもいいんですよ」

ユドゥンは残念そうにフィアを見る。

「いえ、宿に荷物をおいてきております。私はこれで…」

顔をひきつらせながらフィアは立ち上がる。

「それなら宿の荷物は私の部下に言って取りに行かせましょう。

遅くなったし食事も用意させましょう」

「け、結構です。今日はありがとうございました。

ヴァロ、行きましょう」

「それは残念です」

フィアはヴァロの手を引きそそくさと逃げるように扉に向かう。

「そうそう、フィアちゃん」

思い出したようにユドゥンはフィアに声をかける。

フィアはびくんと痙攣したようにユドゥンの声に反応した。

「もうすぐこの交易都市で総督府主催の祭りが開かれます。

特に最終日の競売会は、珍しいものも多く出てきます。

良ければ見ていってくださいね」

にこやかにユドゥンは手を振る。

「は、はい」

フィアは顔をひきつらせながら返事を返した。


二人を見送った後ピューレアはユドゥンの部屋に戻る。

「フフフ…分をわきまえてる子って素敵だわ。そう思わないピューレア?」

ユドゥンは顔をゆがめる。

「いささか若すぎるかと存じますが…」

ピューレアは無表情に告げる。

「聞くところによる『真夜中の道化』を退治した手並みといい、

若くても実力は聖堂回境師を名乗れるほどあるのではないかしら?

四方に囲った部屋の配置からこの部屋のからくりまで彼女は見抜いていましたよ。

私との会話の中でも何度も四方に視線がむいてました。

おそらく無意識にでしょうけれど」

「ほう」

ピューレアは感心したような声を上げた。

ユドゥンはその長椅子から身をおこし、立ち上がる。

「あの子はまだまだ強くなるでしょう。

ひょっとしたらこの私を越えてカーナの域にまで届くかもしれません。

ラフェミナがあの子を推挙するのもわかります」

彼女は窓まで足を進める。

その顔は緩みきっており、口元の笑みは途切れることはない。

まるで楽しくて楽しくて仕方がないというように。

「あの子はずっと私たちが待ち望んだ光。だから…あの子を傷つける者は許さない。

あの子をたぶらかすものも許さない。今度こそ私は失敗はしませんよ…フフフ」

そう言って彼女は空に浮かぶ赤い月を見上げた。

この女性はかなり深くヴァロたちと関わることになります。

まだ先だけど。

つーかそこまで書けるかな…。

首が痛い…。

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