終章 彼女の見た夢
アレはずっと以前王国がまだこの世に存在していた時の話だ。
今日はお城でぱーてぃがあると聞いて彼女たちははしゃいでいた。
白と黒のドレスに身を包みその二人の子供は、何も知らずに無邪気にその広い城の中を走
り回っていた。
「どうしたのお姉ちゃん?」
白いドレスをきた子供が
突然足を止めた黒いドレスを着た姉に、手をつないでいる白いドレスを着た妹は怪訝そう
な目で振り返る。
「赤い…」
真紅の赤と呼ばれるものをその目にとらえ、子供は足を止める。
「ユドゥン、あまり城の中を走り回ってはいかんぞ」
遅れて少女たちを追うかのように一人の女性が現れる。
「母上、これはなんですか?」
その小さな少女はその絵を指さし、母親に聞いた。
「王の絵画じゃな」
「王様の?」
少女は聞き返す。
王とはこのくにのなかでもっとも力のある者だと聞いた。
母が唯一頭を下げるモノの一人であり、
獅子のおじさまも、分厚い甲冑をつけたヒトも、大きな狼も、巨大な羽をもつモノも、そ
して金色の瞳を持つ漆黒の竜ですらも、誰もが皆その王の前に跪いた。
誰もが待ち望んだ王。
その絵画の鮮烈な『赤』はその少女の瞼に焼き付いた。
赤く染まるその部屋でユドゥンは一人目を覚ます。
いつの間にかユドゥンはその絵画の前で寝てしまったらしい、
かつてあの地には王がいた。
妹も、母も、無二の親友も。
「…夢ですか…。懐かしいですね。私があのころの夢をみるとは」
彼女は自らの頬に手を当てる。
「涙?この私が?」
すべての魔の理想郷。その中心いたのは王。
そして、王がこの大陸を統一することを信じて疑わなかった。
彼女はもう二度と戻ってこないその日に思いをはせる。
「王…?…まさか…」
絵画の前でユドゥンは頭によぎった疑問を振り払う。
すでに王はいない。
彼女の親友であり三人の王の子が王を封じることを選んだのだ。
そこにどんな事情があったのか、王を巡るどんな確執があったのか。
知ることはできない。知る立場にいるのは遠い空の下にいる母だろう。
当時は彼女は幼かったのだ。
理想を語れる力など持ちえなかった。
「あのモノを逃がしてしまったのは失敗でしたね」
もし人間界でそれを知っているとすればあの男と最後の王の子だろう。
ただし、もう二度と自身の前に姿を見せることはないだろうが。
この話も終わり。一息に負わした感があるなあ。
クファトス(ケイオス)たちとヴァロたちが交差するってのを書いてみたかったので。
一章以来ずっと出てなかったし、登場させられて満足。
いずれ運命の彼方でヴァロはそれを知ります。
その時はとんでもない状況になってるんですけどね。
それじゃ、ミッドナイトクラウン編、最終章いってみましょー。




