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6-3 魔性

ユドゥンの屋敷に火の手がいつになっても上がらない。

ケイラはユンハの敗北を悟った。

こうなればこの地から即刻逃げなくてはならない。

ケイラは勢いよく立ち上がる。

「どこへ行くのですか?」

背後からのいきなりの声に女は体を硬直させる。

振り向くとそこには黒いドレスを身に纏った貴婦人が立っていた。

口元には妖艶な笑みを浮かべている。

「何であんたがここにっ」

顔を思い切りひきつらせながら、ケイラは叫ぶ。

「ここはルーラン。入った時からあなたはすでに私の肚の中ですよ」

ユドゥンは口を緩ませる。

「馬鹿な、もうユンハの符術師部隊を殺してここまで来たのか?

幾らなんでも早すぎる」

「…符術師部隊?言っている意味が理解できないのですが」

怪訝そうにユドゥンはつぶやく。

「…目は少なくともまだ正気のようですね、安心しました」

ケイラにはユドゥンの言っている意味がわからない。

「いつから気づいていた」

彼女の躰からは冷や汗が取り留めなく、滝のように流れている。

「初めからきづいていましたよ。あなたが一年前にこの結界に足を踏み入れた瞬間から。

今回あなたが背後で手引きしているのは気付いていました」

「ひょっとして絵画の件も…」

ケイラは絶望的な

「あなたはフィアちゃんに仕返しをしたかったのですよね。

妹たちを殺された恨みですか?

そこでつながりのあったリュウレン商会の力を使って、

彼女とつながりのある商会を潰そうとしたのでしょう?

もっともケイオスとかいう男がつまらないものを出してくるのであれば、

私も手を出すつもりはありませんでしたけれど」

ケイラはユドゥンが魔女たちの中で言われている一つの通り名を思い出す。


黒幕フィクサー


魔女の中でもこれほどまでに恐れられている魔女はいない。

彼女は大魔女よりも恐れられている存在。

彼女はそれを今体験していた。

「私と関わってしまったことが運のつきですよ」

彼女は口元に亀裂のような笑みを浮かべる。

「フフフ…あなたには聞きたいことがたくさん、たくさんあるんですよ」

楽しげに、それでいて妖艶に彼女は続ける。

「捕まったところで私が喋ると思っている?」

ケイラの背後には魔法式が小さな編まれている。

「…大丈夫ですよ。喋らなくても。…そっちの方がたくさん楽しめますから」

ユドゥンは凄絶な笑みを浮かべた。

生物ならば等しくその笑みに恐怖を覚えるだろう。

その場にあった菓子を手に取り、ユドゥンは一飲みにする。

その様に彼女は全身に鳥肌がたった。

明らかに人のカタチをしているが人ではない。

人のカタチをした別の何かだ。

彼女はこれほど邪悪なものを見るのは初めてである。


女は理解する。

捕まったら終わりだと。

死よりも恐ろしいなにかが彼女を待ち受けている。

本能がそう告げている。


「うあああああああ」

彼女は無我夢中に魔法式を発動させた。

直後、ユドゥンの上体がはじけ飛ぶ。

ケイラは窓から全力で身を投げた。

もう殺したはずである。生物的に上半身を吹き飛ばして生きている生物などいない。

それでも彼女にはそれを倒したという実感が全くわかない。

頭の中の警鐘が鳴りやまない。

彼女は屋根伝いに通りまで下りた。

不思議なことに通りには人っ子一人いない。

彼女はとにかく一路ルーランの外に出ようと試み、振り返ることなく足を動かし続ける。

今すぐにこのルーランを抜けなくてはならない。

彼女の頭にはそれしか頭にはなかった。


ケイラは背後から何かが近づいてくる気配を感じる。

足音はしない。それはまるで地面を這うような音だ。

ケイラは振り向かない。振り向いたらおそらく恐怖で動けなくなる。

それに捕まらないように彼女は必死で足を動かす。


走っていた彼女の眼前に、剣のようなものが何本も空から降り注ぎ彼女の行く手を阻む。

急なできごとに体勢を崩し彼女はその場に倒れこんだ。


びちゃ


気が付くとケイラの足元には黒い泥のようなものが地面にあった。

それは道全体に満ちている。

空を見上げる余裕などない。彼女はすぐさま起き上がりその場を離れようとする。

そこで彼女はありえないものを見た。

「なにこれ…」

黒い泥のようなものに触れた手の肉が消えて骨が見えている。

幻惑魔法の類はそれの使い手である彼女には効かない。

わかるのはそれが現実だということだけだ。

背後から何かが張り付くように彼女の背中を抱きしめてくる。

おもちゃが壊れないように優しく。

「捕まえた」

その声はどこか嬉々としていた。

全身が泡立つのを感じた。もはや恐怖で悲鳴すら上げられない。

まるで全身がそれを拒否しているかのようだ。

ユドゥンが味見をするかのように彼女の首筋を舌でなめる。

「ひぃ」

「悲しいです。お気に入りのドレスが一着だめになってしまいました。

ネズミでも侮ると意外な抵抗をするのですね。でも今日は許しましょう。

今日の私は機嫌がいい」

背後から聞こえるのはユドゥンの声。

ただし背後から受ける感触は人のものではない。

上半身は女性のモノだとわかるが、下半身はざらざらとしていて、妙に固い。

「一ついいことを教えてあげましょう。この結界の中では私は人を殺せません。

そう言う契約なのですよ。だから私は人を殺すのではなく壊すのです」

彼女は耳元でそうささやいた。

「ネズミのあなたにはネズミらしい死を用意してさしあげましょう…ウフフフフ」

ユドゥンはケイラの耳元でそう囁いた。

彼女はもがくも、既に足が太ももまで無くなっていることに気づく。

逃げることはもうかなわない。

全身が絶望で視界が染まっていく気がした。

「いやああああああああ」

彼女は絶叫した。

ユドゥン怖いっす。

最もやばい奴の一人っす。

こいつもいずれ再登場します。

何気に最重要キャラ。

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