表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

6-1 蠢く者ども

ユンハと言う人間は東の大陸有数の名家であり、王家の血筋を

王家の直系ではあったが、九番目の末子であり、王位の継承権とはかけ離れた場所にいた。

立て続けに六人の子供が怪死する。

世間一般には病死とされているが、背後に王位継承の争いがあったのは関係者の目から

見れば明らかであった。

かくして彼は王位継承権三位となる。

継承権が目の前に転がってきた。


彼に欲が出たのはその時だ。


あと二人出し抜けば自身が王の座に座ることができる。

ただし、暗殺はだめだ。

王子が三人になったために、必要以上に警戒されているのだという。

なら皆に私を認めさせるにはどうしたらいいのか。

そこで彼は考える。

実績を上げればいいと。

大帝であり太祖のラカンの成しえなかったこと、

西の大陸の交易都市ルーランを落とすことができれば、皆が我を認めると。

戦闘集団『琥影』はそんな彼にいち早く接近してきた。

平和な時代が長く続き、大陸では戦火が消えていた。

平和な時代は『琥影』にとって毒でしかない。

時間は刃を錆びつかせ、その身に贅肉をつける。

彼らは剣を日々研ぎ澄ませながら、その力を存分に発揮できる場所を求めていたのだ。

かくて両者の益が合致する。

動き始めたユンハの手は早かった。

目をつけた西の大陸と交易のある商会を乗っ取り、

半年をかけて東の大陸から交易都市ルーランに彼らを少しづつ移動させたのだ。

すでにその数は三百人。すべては順調に進んでいるかのように見えた。



リュウレン商会の長であるユンハは戻ってくるなり

入口におかれたツボを思い切り叩き割った。

「くそがっ」

ユンハの怒りはすさまじい。

ユンハは怒りを周囲にまき散らしながら、

従者たちは主の怒りが収まるのを怯えながら待っている。

「あああ、こんな屈辱生まれて初めてだ」

彼の勝利はほぼ確定していた。

そこからひっくり返された挙句に、こちらに手を差し伸べてきやがった。

彼のはらわたは煮えくり返っていた。

「別にいいでしょう。あなたは損をしていないのだから」

あきれたように声をかけたのはケイラと言う女性だ。

金の

「損得の問題じゃない。これは私の面子の問題だ。

あの剣を賭けて、その上で負けたなどと…先祖に対して申し訳が立たん」

面子を気にしているのだろう。

ケイラからすればどうでもいいことだ。

「なら騒げばよかったじゃない」

「あの場で騒げば完全にこちらの負けを認めたことになる。

そんな無様なマネできるか」

ユンハは激昂する。

翁は彼に近づくとの耳元でささやく。

「なら、このルーランを落とせばいいではありませんか?

もともとあなたはそのために来たのですから」

耳元で囁かれた言葉にユンハの動きが止まる。

「祭りの終わった今なら容易くこのルーランを落とせるでしょう」

「フフフ…ハッハッハッハッハ」

一人狂ったようにユンハは笑う。

従者たちは怖ろしくて部屋の外から見ているだけである。

「…確かにあなたの言う通りだ。少し予定とは違ってしまいましたが

こんな場所すぐにでも落としてしまいますか」

口調がもとに戻りつつある、ユンハは幾分か冷静さを取り戻してきた様子だ。

「まず手始めに血祭りに上げるのはグリフ商会の奴らです。

特にあのケイオスとかい言う男は許しません。手始めに奴らの首をいただきます」

ユンハが指を鳴らすと、背後に顔に札をつけた無数の人影が音もなく現れる。

表情は札に隠れ見えない。

彼らこそが東の大陸一といわれる戦闘集団『琥影』である。

「そのあとでユドゥンを殺し、総督府を占拠してみせましょう。あなたの要望通りに…」

ユンハはケイラの前にひざまずきケイラの髪に口づけをする。

「出陣だ」

ユンハは立ち上がり言い放った。


『琥影』を連れ部屋から出ていくユンハを見ながらケイラは思う。

『琥影』も不気味だけれど、私にしてみればもっとも厄介なのは、

東の大陸の連中よりもここの場所にいるユドゥンの方なのだ。

この暗黒結界っていうのは他の結界とは違って妙に得体がしれない。

何度調査しても他の結界は用途、目的が全く分からない。

第二次魔王戦争後に造られたものだと聞いてはいるが…。

東の大陸の連中を相手にするにしても妙だ。

その結界は用途不明、理解不能、正体不明。

そのために、攻略の糸口すら見いだせない。

そもそも都市を囲う結界は大魔女が、対魔王を想定して造られたものである。

ならば力をぶつけてみればいい。

そこで彼女はその力を探るために、東の大陸の人間の力を借りることにしたのだ。

彼女にとって最も良い結末は共倒れになること。

そうすれば自身の主の杞憂も一つ減ることになる。


さあユンハ、あなたのお手並み拝見とさせてもらいましょう。


彼女は一人誰もいなくなった部屋の窓辺に座る。

少し寒いがここからは遥か彼方にユドゥンの屋敷と総督府を眺められる。

結果はどうなるかわからないが東の大陸一の戦闘集団『琥影』を相手にして

『漆黒』のユドゥンもただでは済むまい。


彼女は月の下で一人酒を始めた。

その結果が出るを待ちながら。


それぞれの思惑が交差し、それが始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ