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5-1 商人の戦い

二人が競売会が行われるという会場に着くと、その周囲が人で埋まっている。

皆、正装に身を包み、談笑している。

実にさまざまな衣装が目に入ってくるのは、さすが交易都市ルーランといったところか。

元々は劇や演奏会などを愉しむような巨大なホールである。

ヴァロは騎士団の正装で、フィアはケイオスがどこかから借りてきたドレスに

身をつつんでいる。

さながら姫とそれをエスコートする騎士といったところか。

周囲の注目が二人に集まる。

ドレス姿のフィアの容姿は怖ろしいほど際立ってきていて、

通りを歩く人間たちは誰もが皆振り返るほどだ。

フィアにぴったりのドレスを、どこから借りてくるのか兄貴に問いただしたいとろろだが


兄貴ケイオスとの待ち合わせの場所で待っていると、一人の女性が二人の前に現れる。

「お待ちしておりました、フィア様」

礼服に身を包んだピューレアがお辞儀をする。

ぴしっとした服装をしており、空気がその場だけ違う印象すら受ける。

ユドゥンにここへ来ることを話した覚えはない。

ここに来たことを知っているということは、

結界の中ではヴァロたちの行動などお見通しなのだろう。

ヴァロとフィアは顔を見合わせると、頷きあいこれに従うことにした。

ヴァロとフィアは特別席へ案内された。一重にユドゥンの計らいである。

三階にある特別席になる。そこから会場が見渡せた。

個室のようでその場にいるのはヴァロとフィアだけだ。

文字通りの特別待遇にヴァロは少しだけ居心地を悪く感じた。


特別席に着いてしばらくすると、一人の偉丈夫がフィアの前に現れる。

「初めましてフゲンガルデンの聖堂回境師フィア殿。

私はこの交易都市ルーランの総督をしているバブリス・トトルカナという者。

以後お見知りおきを」

そう言ってバブリスはフィアに向かい頭を下げた。

太子という予想とはかけ離れた豪快な偉丈夫である。

体格はヴァロよりも一回り大きいだろうか。

それはまるでどこぞの豪傑を思わせる。

「初めまして」

差し出される手にフィアは応じる。

「総督なのですか」

「ハハハ…これは昔の名残ですよ。

この地は東の大陸と接することもあり、

幾度も東の大陸の侵攻にさらされてきました。

そのたびに総督が任命され、いつしか総督府という名が定着してしまったというわけです


マールス騎士団領もトップは未だ団長と呼ばれていると聞き及んでおりますが」

「…これは一本とられましたね」

フィアと総督バブリスは笑いあう。

「それにしてもフゲンガルデンの聖堂回境師がこんな可憐な女性だとは」

「聖堂回境師とは思えませんか?」

「とんでもない。その美貌と才気、努力に敬意を覚えます」

「…ありがとう」

フィアはそう言って微笑んだ。

バブリスはなかなかの紳士でもあるようだ。

「あなたは?」

フィアとの挨拶が済むとバブリスの視線はヴァロに向けられる。

「私の護衛を務めておりますヴァロ・グリフといいます」

名を聞くとバブリスは少し考え込むような素振りを見せた。

「グリフ…?つかぬことをお聞きしますが、ケイオス殿とは…」

「ケイオスは私の実兄になります」

その言葉を聞くとバブリスの表情が晴れる。

「やはりそうですか。ケイオス殿のグリフ商会は競売会も初出品すると聞いています。

なんでもあのユンハ殿のリュウレン商会と競売品を競っているとか。

楽しみにさせていただきましょう」

豪快な笑いを残すとその豪傑は、お供の者をひきつれてその場所を去って行った。

ヴァロはまずいことになったと思った。

総督にまでこの話が及んでいるということは

既にルーラン中の噂に上っていると思ってもいいだろう。

もし負けることがあるのならば、商会をたたむだけでは済まなくなる。

「いいよ、ヴァロはケイオスさんのところへ行ってきても」

少女の一言にヴァロははっとなる。

「すまない、面に出ていたようだな」

ヴァロは我に返った。

心配そうにしている少女の頭をなでる。

「俺はフィアの護衛だ。仕事を放りだして兄貴のところに行くつもりはないよ。

そもそも俺が兄貴のところへ行ってもやれることはないんだし、

兄貴のことだ。一人でどうにかするだろう」

自身に言い聞かせるようにヴァロは言う。

「でも…」

「フィアは心配するな」

ヴァロはフィアの頭を撫でた。


「ケイオス殿」

不意に背後から声をかけられケイオスは振り返る。

そこにはリューレン商会のユンハが立っていた。

二人の体格の良い護衛を両脇につけ、顔には張り付けたような笑みがある。

「これはこれはユンハ殿」

ケイオスはすまし顔でそれに応じる。

「強盗に入られたと聞いて心配しました」

「ご心配なく、商品は無事でした」

「それを聞いて安心しましたよ。今日はお互い全力を尽くしましょう。

そうそう、プログラムではどうやら私の方が早いようですね。

今日の競売会楽しみにしております」

そう言ってユンハは二人のお供とともにケイオスの前から立ち去った。

ケイオスの隣の黒服の護衛はつまらなさそうにそれを見ている。

「ケイオス、いいのですか?」

「かまわん。今はこの競売会を楽しもう」

ケイオスの顔から表情が消える。

遠くからざわめきが聞こえてくる。ケイオスはその方向を目を細めて見つめる。

「どうやらここの主が来たようだ。

オルカはあいつの目につかない場所で待機していてくれ。察しのいい奴のことだ。

お前の顔を直に一目みれば気付いてしまうだろうからな」

「ケイオス、あなたは?」

「何かあればしらを切るさ」

そう言ってケイオスは微笑む。

黒服の護衛は頭を下げ、その場から消え去る。


「さあ、今年の祭りも最後競売会を残すのみだ」

太守のバブリスは声を荒げ皆に語りかける。

その勇ましさは将軍を彷彿とさせる。

「今宵は特別にユドゥン様も見にいらしておられる」

太守バブリス指し示した場所には、一人の貴婦人が座っていた。

その女性は一身にその注目を集めた。

黒のドレスに身を包み、その姿は圧倒的なまでの存在感を漂わせている。

同時に壮絶なまでに美しく、そしてそれは妖艶ともいえる存在。

彼女こそこのルーランの交易都市ルーランの真の支配者。

ユドゥンは口元を扇で隠し、手を振るう。

その瞬間会場中が盛大な歓声に包まれる。

ユドゥンが恐れられているのと同時に慕われてもいるということの証でもある。

「ユドゥン様を前にして恥じるようなものを出すことなきよう。

己が商会の名誉をかけこの競売会にのぞんでほしい。以上だ」

あまりに鮮烈な存在感にヴァロは圧倒されていた。

総督バブリスはまるで巨大な火だと思った。

ユドゥンが闇だとするならば、彼はルーランを照らす巨大な太陽なのだろう。

それはまるで太陽と月を表すかのようだ。


「それでは競売会をはじめます」

司会進行役の女性が声を上げる。

競売会が始まったのだ。

「一品目は…」

そして競売会が始まる。


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