表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

4-2 急襲

祭りの二日目。

ヴァロはフィアとともに朝から駆けずり回った。

フィアの同行は断ったのだが、フィアがどうしてもついていくときかない。

ヴァロは嘆息してその同行をゆるした。

少しでも兄貴の力になりたい、そう思ってヴァロはリュウレン商会の情報を集めた。


商会の前でヴァロは待ち伏せる。

フィアも来たいと言ったが、ケイオスが出てくるのがいつになるのかわからないために

宿においてきた。

ケイオスは黒服の護衛を連れて商会から出てきた。

「兄貴」

ヴァロが鍵をかけているケイオスの背後から声をかける。

「どうした、こんな時間に」

余裕のある笑みでケイオスはヴァロを見る。

「どうしたヴァロ、こんな遅くに。そうだ、少しそこで飯でも食っていくか」

ケイオスは酒場を指さした。酒場に入るとすぐさま二階にある個室に案内される。

どうもケイオスの行きつけの店らしい。

兄貴の隣には当然のように黒服の男が座った。

「兄貴、今日も帰らないつもりか?」

料理をつつきながらヴァロ。

「今日は宿には戻るつもりだよ。出来ることはすべてやったからな」

ケイオスの目の下はうっすらと黒くなっている。

おそらく昨日はほとんど寝てないのだろう。

ヴァロは黒服の護衛をちらりと見る。

「大丈夫だ。オルカは私が最も信頼する者の一人だ」

ヴァロがいわんとすることを察したのかケイオスはそう言ってくる。

「ユンハと言う男のことなんだが、どうもやばいぞ、あの男。

素性がつかめない上にかなりの私兵らしきものを持ってるらしい」

例の札を額につけた集団である。

話を聞いてみて、その異様さを実感させられた。

代が変わって何度かリュウレン商会は他の商会ともめたらしいが、

敵対していた者は悉く不審死を迎えていると聞いた。

背後ではその謎の集団が関与していると思われる。

「私兵。あの札を額につけている集団のことだな」

「私が調べたところによれば、もともとはあの商会の者ではないらしい。

あの商会は一年前に代替わりが行われている。

昨年急に出てきて前の商会長の座を奪い取ったらしいな。

反発する者もいたらしいが、容赦なく切り捨てたという話だ。

それ以前のことは誰に聞いても知らないだそうだ。

こちらも手は尽くしてはみたんだがな」

ケイオスが昨日宿に戻らなかったのはそう言うことをしていたらしい。

「なんだ兄貴も調べていたのかよ」

「出来ることはすべてやったと言ったはずだ。

ちなみにリューレン商会の出し物は宝剣らしい。

一目見ただけで高価とわかるぐらいのな」

ケイオスと言う男に抜け目は無い。

「ただ二人が調べてくれた行為に感謝する」

ケイオスは穏やかに笑った。


「おや、商会にかばんを忘れたようだ。取りに戻るとしよう」

店を出るとケイオスはそんな一言をつぶやく。

「兄貴らしくないな。ほら鍵」

ヴァロはケイオスに向けて手を出す。

「すまない、かばんは私の机の上に出ているはずだ。

ヴァロ、それじゃ頼む」

ケイオスはヴァロに商会の鍵を手渡した。

人気のなくなった商会の廊下をヴァロは進む。

暗闇の中、ヴァロは小さな物音がするのを聞いた。

ヴァロは泥棒かと思い、足音を消してその物音のする方へ近寄る。

目を凝らすと闇の中、見慣れない二人の人影がいる。

その二人の人影と視線が交わった気がした。

「お前たち一体何を…」

ヴァロが声をかけると、すぐさま刃物のようなものをこちらに向けて投げてくる。

行動は素早かったが、グレコの投擲を経験しているヴァロからすれば

避けられて当然のレベルである。ヴァロは難なくその刃物を躱す。

直後背後で小さな爆発が起こる。

その刃物が爆発したらしい。

もし腕に刺さっていたりでもしたら、腕ごと吹っ飛んでいただろう。

見たこともない術にヴァロは戸惑う。

東の大陸で使われている術のようだ。

爆発した点から考えると、起爆札に近いだろうか。

爆発に照らされその者達の姿をヴァロは目撃する。

見えなかったわけではない。全身を黒い服装、黒い仮面のようなもので包んでいるのだ。

標的が無傷だと知ると、二人はこちらに向かって駆け出してきた。

ヴァロは素手で二人の人影と対峙する。

こちらの急所を拳で正確に突いてくる。

それは見たこともない型の攻撃だった。

ヴァロは体を捻りながら二人の攻撃をかわす。

二人の体術は見たこともない上にここは室内。

脇に差した剣を振り回すには狭すぎる。

黒服の二人にヴァロは劣勢を強いられた。

「どうした」

騒ぎを聞きつけケイオスと黒服の用心棒が駆けつけてきていた。

「兄貴」

人が駆けつけ、分が悪いことを悟ったのか、二人の人影の姿は真っ直ぐに窓から身を投げ


出す。

すぐさまヴァロは窓の方へ走るが、二人は通りの人ごみのなかに消えていった。

明らかに手馴れている相手は戦闘のプロだ。

深追いするのは危険すぎる。追跡をあきらめヴァロは警戒を解いた。

「何があった?」

「部屋に入ったら黒い男が二人何かを探していた。

連中、ただの物取りにしては妙に手ごわかった」

「ほう」

ケイオスは動じない。

まるでこの襲撃も見透かしていたかのようだ。

「リュウレン商会の奴らじゃないのか?」

ヴァロは頭に湧いた疑問をケイオスにぶつける。

「ユンハは競売会に絶対に勝てるという自信があるようにみえた。

わざわざこちらの手をつぶして競売会出られなくするのでは意味がない。

それに証人を作ってまで競売会で争うつもりなのだから、

競売会の舞台で派手に負かしてやろうとも思っているはずさ」

それを知りながら受けて立つ兄も相当自信があるんじゃないかとヴァロは思う。

「奴らの使っていた術は見たこともない術だった。こっちの大陸では見たことがないもの


だ」

「…なら主の知らないところで、物事が動いていると考えるのが妥当だろうな」

ケイオスは冷めた視線で続ける。

その物言いにヴァロは少しだけ引っ掛かりを感じる。

「まさか兄貴はおそった連中の目星がついているのか?」

「さあな、誰であるかまでは、一介の商人である私にはわからん」

ケイオスは肩をすくめて見せた。

「俺はここに泊まり込む。奴らがまた狙ってくるかもしれない」

「無駄だ。私の考えではおそらく次は無いはずだ。一緒に宿に戻ろう」

そう言ってケイオスは背中をみせる。

「…兄貴はひょっとしてこの襲撃も見越していたのか?」

その言葉は自然とヴァロの口から出てきた。

「まあな、ヴァロには悪いが来るかも知れないと思っていた」

「…まるですべてが兄貴の手の内にいるみたいだな」

ヴァロは自分も相手も誰もが皆兄貴の手の内にある、そんな気がした。

「それではつまらん、少なくとも私の手の内から出てもらわないとな」

ケイオスは不敵に笑う。

ヴァロは兄貴の笑みに寒気を覚えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ