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剣豪魂  作者: 富野夷
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新撰組、出動!

「新撰組の諸君、出動の命令が下りましたぞ」

近藤勇である。

「はい。でも、新撰組って、まだ、あったんですか」

 これは、沖田総司だ。

「まあ……」

 と考えながら、、

「とにかく、諸君。出動ですぞ」

 近藤は言葉を続けた。

「諸君、謹聴しましょう」

 そう言ったのは、最近、この雲上の無辺際にやってきた、土方歳三である。

「恐竜を進化させるのである」

 天下に名を轟かせた剣豪は、地獄へも極楽へも行かない。この無辺際に来て、凶暴な生き物を人のためになるように進化させる、その進化に従事するのであった。

 近藤の言葉に、

「恐竜ですか」

 面々もさすがに驚いたようだった。

「テラノソウルスという、恐竜だそうである」

「テラノソウルス?」

「寺の僧留守?」

 面々は顔を見合わせる。

「あ、それは、近藤さん――」

 一番の知恵者の山南敬助が、

「ティラノサウルスですね」

 と発言した。

「うむ、そのサウルスである」

 恐竜の中でも、もっとも凶暴とされる物である。


「で、何に進化させるんですか」

 沖田が尋ねる。

「ニワトリに進化させるとのことだ」

 今回の出動の大変さを感じて、面々はまた顔を見合わせたのであった。


さて、元新撰組は、改めてティラノサウルスを見に行った。

ティラノサウルスは、雲上の最果てで、ひたすら突進を繰り返している。

面々の目の前を、ただ凄まじき咆哮とともに走りすぎていくのである。

「ひさしぶりに、黒船を見たような気分ですな、近藤さん」

「おれも、そう思っていたよ、歳」

歳とは、土方歳三のことである。

「ティラノサウルスは、肉食恐竜の中でも最強なのです」

 山南敬助である。

「ほう、肉食であるか」

 近藤勇が大きくうなずく。

 この時代に珍しく、近藤は豚の肉食を好んだ。この雲上では、イノシシを豚に進化させる部門の局長である。

「しかし、あの肉食最強をニワトリにするのは、至難ですよ」

 山南は首をかしげる。

「でも、小屋に入れてしまえば、なんとか進化しますよ」

 そう言う沖田は、オオカミを犬に進化させる名人である。


「沖田くんは、いいところに気がついている」

 宮本武蔵が元新撰組の会話に、入ってきた。

「これにあるのは」

 不可思議な物体を、面々に見せた。

「ブーメランである」

 武蔵は物体を手に取ると、投げて見せる。

 その手を離れた物体は縦に鋭く回転して進み、不意に横回転になって、それから、こちらへと戻ってきた。

「これを投げて、ティラノサウルスを追い立てて、小屋の中に入れてしまうとよろしい」

そう言うと武蔵は、手製のブーメランを面々に配付した。

「これならば遠方からの攻撃が可能ですね」

 土方歳三が言い、面々が頷く。

「この先のところは、ヘビの頭みたいですね」

 沖田がブーメランを手にして、嬉しそうに言う。

「この形こそが、よく戻ってくるのである」

 武蔵は幾度か、ブーメランを投げて手本を見せた。

「では、わたしは、塚原卜伝のところへ行かねばならないので、後はよろしく頼む」

 そう言って、宮本武蔵は去って行った。

 元新撰組の面々は、それからブーメランの修行に勤しんだのである。

 私の家の近くに池があります。そこにアオサギという鳥がきます。その鳥を見ていると、目付きや「ギャオウ」という咆哮に近い鳴き声、首や足の動かし方、どれをとっても恐竜的です。この説は前々からありますし、近頃では、ティラノサウルスの遺伝子かなんかがニワトリに近いというのがネットにもあるようです。『沖田総司の黒猫は、実はティラノサウルスだったニワトリを狙っていた』とか、書けないかなあ。

 次の回は『塚原卜伝、鍋蓋を語る』を予定しています。

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