表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣豪魂  作者: 富野夷
6/29

カルチャーセンター夢想権之助

本日は、当カルチャーセンターの体験入学にお越しいただき有難うございます。見学の方も、どうぞ宜しく御願いいたします。どうぞどうぞ、膝を崩して、楽な姿勢でご覧ください。

新しいお教室を紹介させていただきます。

杖道教室になります。

杖道は「じょうどう」と読みます。

これをご覧ください。四尺二寸一分、約124cm、の白樫の丸棒の杖を使います。

杖は「じょう」ですが、そのまま「つえ」と読んでもらって全く差し支えはありません。

そういったぐらいですので、この武道、まさしく老若男女、どなたでも学べるものです。

しかし、杖道の歴史は古く、四百年の伝統があります。

神道夢想流、夢想権之助という人物が創始した古武道なのでございます。

見学の夢想権之助は我知らずえびす顔になっている。


杖は刀から身を守る護身術とお考えください。

ですから木刀も使います。同じく白樫で、三尺三寸五分、約100cmです。

神道夢想流開祖の夢想権之助は、宮本武蔵の刀と対戦して、この杖を用いて勝利を収めたことは有名な話です。

見ている夢想権之助は、ますますえびす顔になる。


もちろんご安心ください。いきなり木刀と打ち合うようなことはありません。

まずは杖のみを使って、これが自分の腕の一部にように振れることを目標にいたしましょう

ただ、力は特に必要がないのです。

刀よりも長い杖の、その遠心力を使って振っていくのです。

ちょうど水泳のクロールのように肩を回す動きが多くなりますので、肩こり対策としてもバッチリです。


では、実際に私が振ってみましょう。

まずは剣道のように杖を構えます。

そこから剣道のように振り上げるのではなく、杖を後ろに引きます。

意外に思う人もあるかもしれません。

もう少し詳しく説明しましょう。

右手前、左手後ろで剣道のように構えたとします。

左手で杖を後ろに引きます。それから、右手で杖の先端を持ちます。

その右手を支点にして、滑らせるようにして左手で打ち込むのです。

ちょうど車のワイパーが半円を描くようにして、逆の右手の打ち、そしてまた左手の打ちと繰り返していくのです。


どうですか、みなさん、やってみたくなりましたか。

どうぞ一緒に、杖を振ってみましょう。

見学の方でも、よろしければ一緒にいかがですか。

権之助は思わず「はい」と言って立ち上がりそうになったが、さすがに開祖として、それは止めにしておいた。

号令とともに、皆が杖を振りはじめた。


権之助は飽きもせずに眺めている。

やがて沖田総司が来たので、権之助は、教室の邪魔にならないように、そっと教室を出た。

杖道の杖は、丸い棒であると書いた。

すると、棒を、くるくる回すような技があるんですか、と質問を受けた。

孫悟空の如意棒のイメージがあるのだろうか。しかし残念ながら、くるくるは回さない。

くるくるをやるのは、中国武術である場合が多い。非常に巧みに回している。

しかし何故くるくるする必要があるのだろうか。返答に困るのではなかろうか。

そう言えば、ブルース・リーのヌンチャクも恐ろしいほどの速さで回転するが、実際の攻撃では、打ちや突きに限られていた。

また、空手系の選手による、ヌンチャク対ヌンチャクの全国大会というものが、ちゃんとあるが、いわゆるブルースー・リー的な回転はない。回すことはなく打ち込む、しかも足を狙って前のめりに打ち込むスタイルであった。

回す理由をもし挙げるなら、回転の技量を見せ付けることによって、相手の戦闘意欲を鈍らせるということぐらいになるのではないか。


ところで、杖道には、相手の刀を半回転させて防御する技がある。

「繰り付け」という技である。

攻撃の刀の、握っている手と手の間の柄の部分に、杖先を当てる。(この刀の柄を取る、というのも独特であるが)

そのまま杖で円を描くようにして刀ごと相手の腕を後ろに押しやって、さらに刀ごと相手の体を押さえつけてしまい身動きを取れなくするのである。

文字で説明すると分かりにくい。

しかし例えるなら、罠が、動物をばちりと押さえて捕らえてしまうのに、似た動作である。

護身術としての杖道、の真骨頂と言えるかも知れない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ