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剣豪魂  作者: 富野夷
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沖田総司が桃太郎

山南敬助がゲルマン民族の警備から帰ってきた。

「どうだったかね」

宮本武蔵が問う。

「ゲルマン民族は勇敢ですよ。フン族に押されてというのには、やや誤解があるかもしれませんね」

「ふむ」

さすがの武蔵も返答に困っている。

「ゲルマン民族に、薩長同盟のことを教えてやりましたよ。ローマ帝国で武器を借りて戦ったら宜しかろうと」

「余計なことを言いやがる」

そう言ったのは芹澤鴨である。

「それはそうと、面白いものを見つけてきました」

山南は、武蔵にそれを手渡した。

両刃の直刀であった。

「ゲルマン人の武器の一つです」

これには武蔵が目を輝かした。

「ゲルマン人め、なかなか譲ろうとしないので、仕方なく腰の物と交換いたしました」

「刀と代えたのか」

芹澤は驚いたが、武蔵はそんなことは気にしない。

「タケミカヅチが、こんな刀を使っていたな」

そんな感想を述べた。

「沖田君などは帰りましたか」

「いや、まだだな」

直刀の素振りに余念のない武蔵に代わって、芹澤が答える。

「私も土方君の所には行ってみたいのだが、なにぶん、カモの世話があるからな」

そんな芹澤に対して、山南は早くも出かける準備をしている。


さて、沖田総司である。

桃太郎の桃の警備をして入る。

おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行って、桃が流れてくるわけだが、その桃が別の者に奪われないように見張っているのである。

しかし、桃がなかなか流れてこない。

そのうちに、おばあさんと顔馴染みになった。

沖田のことである。おばおさんと、そして、おじいさんとも、すぐに仲良くなった。

今は家族も同然で、一緒に暮らしていたのである。

そこへ、山南が迎えにやって来たのである。

「おじいさん、おばあさん、私は、そろそろ行かなければなりません」

「ずっと一緒に暮らしいるわけにはいかないんだねえ」

おばあさんが、しみじみと言った。

「やはり、私には退治しなければならない恐竜がいるのです」

沖田も涙ぐんでいる。

「世のため、人のためだ、仕方があるまい」

そう言ったのは、おじいさんであった。

沖田は身支度を整えると、山南と無辺際への帰路につく。

おじいさんと、おばあさんは、いつまでも見送っていた。

「沖田さん、わたしたちには、あなたこそが桃太郎でした」

おばあさんが言う。

おじいさんもうなずいた。

沖田総司も振り返って何度も手を振った。

鹿島神宮は、タケミカヅチを御祭神とする常陸一ノ宮です。

しかし別の一面として、時の朝廷の東国支配の最前線基地の役割も果たしていたのではないでしょうか。西部劇で言えば、騎兵隊の砦みたいな。

それにしても、常陸=茨城県は古代には、東国の先進国だったようです。芹澤鴨の名の由来でもお馴染の『常陸風土記』が東国唯一現存していたり、常世=理想郷は実は茨城県という説があったり。

現在では、関東の五番手、六番手扱いの茨城県からは想像できませんが。

また、鹿島周辺はウナカミ国という、謎のインカ帝国みたいな国があったという説もあります。

でも、理由はちゃんとあると、私は思っています。

海流です。親潮の流れを海図で確認すれば、一目瞭然。

実は西国から舟を使うこの時代、親潮に乗れば必ず鹿島近辺に辿り着きます。つまり、茨城県辺りが当時は交通の要衝だった訳です。

人の往来が多ければ、先進文化も吸収して発展もし、独自文化を花開かせていたのだと思います。

逆に、そのために西国の侵略を真っ先に受けたという皮肉な結果にもなりますが。

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