新撰組、解散!
ここは天上の無辺際。
剣豪として名を馳せた者は、地獄でも極楽でもない、
雲の上のまた上の、この無辺際にやって来るのである。
無辺際には季節というものがない。
いつも白い骨のような枯れススキが、遥か彼方までの荒野を覆っているのである。
今、やって来る者がある。
芹澤鴨である。
引き連れる物は、ティラノサウルスであった。
この恐竜は、ニワトリへと進化させる過程にある。
ゆえに今このティラノサウルスは、芹澤鴨とさして変わらぬほどの背丈に縮んでいる。
吠えて首を振るのであるが、鴨が巧みに制御するのであった。
ススキの荒野の一本道の向こうから、駆けつけてくるものがある。
「芹澤さん」
沖田総司であった。
「集合がかかりましたよ」
芹澤はうなずいた。
「よし、走るか」
そう言うと、ティラノサウルスが走り出すのは意外であった。
沖田は、喜んで並走した。
さて、新撰組である。
「ティラノサウルスの捕獲以来、我が隊は非常に評判がよろしい」
近藤勇である。
「警護の依頼が、各方面から、ある」
「では、私から、それについて発表します」
土方歳三である。
「その一つ、ゲルマン民族の大移動の警護」
「ゲルマン民族???」
隊士の面々が、首を傾げるが土方は気にしない。
「その一つ、桃太郎の桃の警護」
「あ、それ、わたしが行きます」
沖田が、すぐに手を挙げた。
「その一つ、源義経の北行の警護」
相変らず、その他の面々は首を傾げたままだ。
「仕方ない、私が行こう」
土方が自ら言って率先した。
「山南君、君は知恵者だ。ゲルマン民族とやらに行きなさい」
土方の命令では、山南も首を縦に振らざるを得ない。
こうして、各隊士の役割が、それぞれに決められたのである。
芹澤だけがティラノサウルスがいるということで、雲上に残ることになった。
実は、芹澤には、カモをアヒルにする仕事もある。
「では、、雲上の新撰組は、いったん解散ということだな」
近藤が言った。
「もちろん再結成ありですよね」
沖田が、すかさず言う。
「もちろんだ」
その言葉には、
近藤、
土方が、
二人そろって、うなずくのであった。
宮本武蔵はまだ修行中です。