月夜に笑う兎3
凄まじい勢いで何者が落下してくる。
何者かは、手を翳し、手に持っている物を人形の腕に突きつける。
するとドラム缶のように大きい人形の腕がいとも簡単に断ち切られた
「ばぁぁぁぁ――――」
右腕を失った人形は叫びながら、後ろに後ずさる。
その間に何者かは人形の腕から解放された明美を受け止める。
「大丈夫ですか?」
そう声をかけたのは明美と同じ年頃の少年だった。
「ええ、助かったわ」
「それなら良かった。ペボ、彼女の事、頼めるかい?」
少年がそう言うと明美の目の前に魔法使いの様な恰好をした猫が姿を現す。
「こっちは任せておくニャン」
「大丈夫なの?」
「任せておくニャー。それよりも危ないから少し下がるニャン
」
ペボと呼ばれる猫(?)の誘導で危なくない位置まで下がる。
少年の手には剣が握られているが、その剣には刃は無くあるのはただの柄のみだった。
「おまえ、許さない」
人形は狙いを少年へと替え、左腕を地面に叩きつける。
振り下ろした拳を難なく躱し、少年はその腕の上を駆けていく。
腕を踏み台にして少年は人形の頭上までジャンプする
握られていた柄に青白い光が集まり刃の形を作りだしていた。少年はそのまま人形の頭に剣を振り落す。
「っぎ、ごぉ」
何かを言いかけた人形が音も無く消えていく。
少年はふぅ~と一息つき、何事も無かったようにこちらに歩み寄る。
「これはいったい何なんですか?」
呆気にとられてた明美が訪ねるが、少年は困ったように首を傾げて
「何から説明しようか?」
そんな事を言ってペボと顔を合わせるのであった。