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ノスタルジックメモリア  作者: 千成いなせ
2/9

月夜に笑う兎2

「どうしたの明美?」


親友の由美子にそう話かけられた。


「何だか最近誰かに付けられてるような感じがするの」

「え~それってストーカーじゃない?」

「そう思って後ろを振り返っても誰もいないんだよね」

「もしかして怪談か何か、やめてよ、私そうゆうの苦手なんだから」

由美子は耳に手を当てて聞こえないフリをする。

「ごめん、ごめんそんなつもりはなかったの」

「でもお祓いとか行った方が良いんじゃない?」

「そうかな~」

「絶対そうだよ」

友人との他愛も無い会話だが不安だった心が自然と落ち着く。




談笑に夢中になっていたが明美だが母親に頼まれていたことを思いだす。

「あ、買い物頼まれてたのすっかり忘れ物した」

「一緒に行こうか?」

「近場だからいいよ~。それに由美子この後、用事あるでしょ」

「そうだけど~何かあったら電話するのよ」

「分かった、じゃまた明日学校で」

「うん、じゃね」


由美子と別れ、家の近くにあるスーパーに向かう。

頼まれた夕飯の食材が入ったレジ袋を持ち、通い慣れた道を歩く。

帰ったら何をしようか?そんな事を考えていると、突然、"キーン"と耳鳴りがする。

耳鳴りがしたかと思えば今まで見ていた町の風景が変わる。

建物も空の色も全てが灰色に染まり、疎らだった人影もいつの間にかいない。

そして何よりさっきまでと違うのは目の前に現れた異形の化け物がいること。

赤ん坊の人形のような形をしたものだが大きさが違う。人の三倍はある。


「見つけた」

そう呟きながらこちらに近づいてくる。

「こ、来ないで」


必死に逃げるが人形の走るスピードは思ったよりも速かった。

後ろから徐々に迫りくる化け物の恐怖で足が思う通りに動かない。

足がもつれ、そのまま転んでしまう。

振り返ると人形は真後ろに立っており腕を伸ばしていた。

巨大な腕に捕まれそのまま待ち上げられる

逃れようと体を動かすが手のひらの中では身動き一つ出来ない。


「捕まえた」

そう言って大きな口を空ける。

このままいけば数秒後には自分は食べられるだろう、

この光景に翻弄され怖くて声も出ない。ただ出来るのは目を瞑り現実から逃避するだけ。

明美がその目を再び開けた時には景色が一辺していた。









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