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月夜に笑う兎1
汝、力ヲ求メルカ?」
辺りを見渡すが声の主の姿が見当たらない。
「誰なんだ?」
「ソノ問イニ答エルツモリハ無イ」
やはり声だけ響いてくる
「お前なら、この状況をなんとか出来るという訳なんだな?」
「我ハ力ヲ与エルノミ。後ハ汝次第ダ」
少しだけ間を空けて、
「分かった。なら力をくれ」
「ソノ前ニ一つアル」
「何だ?」
「力ヲ得ルニハ代償ガイル、ソレデモ欲スルカ?」
少年は拳を強く握りしめ言う
「守りたいものがある。その為なら覚悟は出来ている」
声の主は問う
「本当ニ良イノダナ?」
「ああ」
「汝ノ覚悟シカと受けトッタ。力ヲ与エヨウ」
その瞬間少年は光に包まれた。
廃墟の中、息を整える少年の姿があった
「終ワッタヨウダナ」
戦いの一部始終を見ていたのか、声の主が話しかける
「何とかね。でも体中ボロボロだよ」
「一ツ伝エ損ネタ事ガアル」
「代償の事かい?」
「ソノ通リダ」
「覚悟なら出来ている。代償は?」
「ソノ代償ハ―――――――――」
そこで目が覚める。
「……夢か」
あの日の出来事は戻らない過去と知っている。理解している。
それでも少年は思う。
もしあの頃の日々に戻れたらと。