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光のもとでⅠ 第七章 つながり  作者: 葉野りるは
サイドストーリー
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07 Side Minato 01話

 午前中に仮眠も取れたし、秋斗に連絡も入れた。あと、今日はとくにやることないわねぇ……。

 翠葉の疼痛発作に関する調べ物でもしようか――。

 でも、わからないのよね。

 あれだけ痛がっているにも関わらず、血液検査での炎症値には表れない。CTにもMRIにもレントゲンにも、核医学検査も何もかもやっているのに何ひとつ出てこない。

 正直、自分の手には負えない。そんな気がしている。

 紫さんも私も、僧帽弁逸脱症からきている痛みだと思っていた。けれど、最近は腕や指先にも痛みが生じていると翠葉が白状した。

 整形外科の医師とも話したし、検査技師を交えての話し合いもした。けれど、皆が首を傾げるばかり。

 精神科医との話で脳内におけるホルモンバランスが崩れたときに疼痛として現れるケースがあるという話は聞いたけれど……。

 現に、消炎鎮痛剤が効かないときには常用外として用いる三環系抗鬱剤が効くこともある。

 あの子の身体の中で何が起こっているのか……。

 そんなことを考えながら調べ物をしているときだった。

 家族からの着信を知らせる着信音が鳴り始めた。

「お母様かしら?」

 ディスプレイを確認し、違和感を覚えながら応答した。

「楓から電話なんて珍しい。どうしたの? 今日もヘルプに来いって話なら遠慮するわよ?」

『秋斗がホテルで倒れた。今、静さんから連絡が入ったとこ』

「ちょっと待ってっ。私、ついさっき電話で話したばかりよっ!?」

『その電話のあとに倒れたらしい。結構な分量吐血しててこれから病院に搬送されてくる』

「……胃潰瘍か十二指腸潰瘍ね」

『俺、今から病院に行くから姉さんのほうから病院に連絡入れてほしい。場合によっては輸血が必要になるかも。院内血ってことはないと思うけど、司と連絡がつくようにしておいて』

「わかったわ」

 いつもは落ち着いている楓がかなり慌てていた。静さんが取り乱して連絡を入れてくることはないだろうから、状況を聞いてかなり良くないと判断したわけね。

 固定電話の短縮ボタンを押し病院へ連絡を入れる。

「学校医の湊よ」

『お疲れ様です』

「すでに搬送要請は入っているかと思うけど、秋斗が運ばれてくる。オペ中でなければ父に診てもらえるよう伝えてもらえるかしら。それからRHマイナスABの輸血パックを緊急確保。無理なら司を連れていく」

『少々お待ちください。――搬送要請を確認いたしました。藤宮涼医師に連絡を入れます』

「お願いね」

 秋斗が吐血、ね……。コーヒーの飲みすぎと日ごろの不摂生。加えて、楓からの電話と私からの電話。

 それだけで一気に胃にきたか……。ま、相当気に病んでたってことね。

「これは翠葉には知られたくないわね……」

 楓が言うとおり、院内血はめったにやらない。が、RHマイナスABは輸血パックの在庫が極端に少ない。念のため、司には連絡を入れたほうがいいだろう。

 今の時間だと部活か生徒会。携帯にかけて出なければ部活ね。

 なんとしてもマンションに帰る前には捕まえたい。

 司の携帯にかけると意外と早くに出た。

 携帯の向こうから嫌そうな声が聞こえてくる。

『何』

「今どこ? 周りに人は?」

『ひとりでテラスを移動中』

「秋斗が倒れた。大量に吐血したらしい。状況は詳しくわかっていないけど、もしかしたら輸血が必要になるかもしれない。病院側で手配できれば問題ないけど、手配できなかった場合には司の血が必要になる」

『……わかった、連絡のつくところにいる。しばらくは生徒会で図書棟。そのあと、部活には出ずにマンションへ戻る。翠のマッサージがあるし、夕飯をゲストルームで食べたら姉さんの家に帰る予定。……もしなんなら今から病院に行くけど?』

「まだいいわ。それから、このこと翠葉には――」

『わかってる。でも、それなら栞さんと海斗にも言わないほうがいいと思う』

「そうね、栞は顔に出るし、海斗は口を滑らせる。今のところ、極秘扱いよ」

『了解』

 必要なことを話すと通話は切られた。

 藤宮の人間には稀にRHマイナスが生まれることがあり、秋斗と司はその中でもとくに稀と言われるRHマイナスABだ。

 血液バンクにはあらかじめ用意されているはずだが、それでも万が一、ということはある。

 ふたりには十六歳を過ぎてからずっと献血をさせてきた。だからこそ、こんなときには輸血パックが問題なく届くと信じたい。

 あとはお父様がどうにかしてくれるはず……。

 お父様に連絡が入れば必然的に紫さんにも連絡がいくだろう。

 すぐにでも駆けつけたいところだけれど、あと二十分で職員会議が始まる。

 それが終わったら病院へ行こう。

 ふと携帯を見た瞬間に着信があった。ディスプレイには崎本美波と表示されていた。

「はい、湊です」

『湊ちゃん、擦過傷の手当てなんだけど……』

「擦過傷?」

『うん。水で洗ったら――』

「シート貼るだけです」

『了解。湿潤療法でいいのよね?』

「誰か怪我でもしました?」

『それはあとで……』

 そう言うと通話は切れた。

「……拓斗か?」

 まぁ、初等部って言ったら怪我をよくする盛りよね。海斗もよく怪我をしてはお母様に手当てをされていたっけ……。年が経つにつれ、その役割は司がするようになっていたけれど。

 そんな小さい頃を思い出すと少し心があたたかくなった。

 私たち姉弟と従弟は本当の姉弟のように育ってきた。

 従弟という関係であっても、一般的に言われる従弟とははるかに強いつながりだと思う。

 だからこそ、何かあれば心配も大きくなるというもの。

「……こんなことでくたばってるんじゃないわよ」

 従弟に思いを馳せ、マンションで何が起こっているとも知らずに私は保健室をあとにした。

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