7.5話:その男ただのスケベに非ず。
今回で1部終了です。
ナカスのプレイヤーに関して独自の考察と独自設定がございます。
GoogleDocなどよりギルドのお名前を拝借しております。
あと、しれっと某所より無断でお借りしている冒険者がおります。
久し振りの八姐無茶振り無双。
「ゲフゥ…、御馳走様でした!」
「…御馳走様でした…お義姉ちゃんハシタナい!」
義姉妹は両手を合わせ『ご馳走様』をする。
「いえいえ、お粗末さまです。」
食べたあとを片付けつつ、残った蟹身を殻に綺麗に小分けして持ち帰り出来るようにする鎌吉。
「さて…鎌吉くん、なんで君が“味のする”料理を作れるのか?そろそろ、教えてくれる?」
9日振りの味のある料理を堪能し、幾らか心に余裕が出来たランエボから鎌吉に質問が飛ぶ、八郎は甲羅に味のしない“お酒”を注ぎ、杯代わりの甲羅に波々と注いだ酒を一気に飲み干す。
「プハァ~♪これくらいは私でも出来るのか…酒の味はしないけど、これはこれで美味しいわ!」
元来、オオトラの八郎は此処ぞと云わんばかりに独り酒盛りを始める、“料理”の秘密も大事だがこの手の実験も大事とばかりに魔法鞄の中に入っていた酒類を有りったけ取り出し、次々と甲羅に注いでは煽っている。
「…ランエボちゃん?話する前に…、先生が飲酒始めちゃってますけど?大丈夫です?!」
普通の大きさの蟹なら兎も角、巨大カニの甲羅を杯代わりに酒を煽る八郎の姿を見て不安になる鎌吉だが、ランエボは平然としている。
「大丈夫!お義姉ちゃんの肝臓はブラックホール並みで、あれくらいなら意識飛ばないから話してOKだよ~。」
次々と酒樽を空にする八郎を観て苦笑しか出ない鎌吉は、気を取り直して説明に入る。
「そいぎんた~味のする料理ですが、カラクリは至って簡単です!僕のサブ職は<料理人>まぁ、ゲーム時代よろしくメニューからコマンド入力だと“見た目立派で、味が無いモノ” しか作れませんが<料理人>が普通に“手作業”で料理すれば、味のする料理は出来ます、 因みに僕LV90です。」
さらりと、種明かしする鎌吉…しかし、予想よりもリアクションが無い…八郎は呑んで呑んで呑まれて呑んでで『なんだ、サブ職<料理人>なら出来るか~そうかそうか~♪』くらいの反応、(こっちの世界でも味がしないとはいえ、チャンポンにすると廻りは早いようだ…)ランエボは一瞬驚いたが、その後は明後日の方を見つめ何か歌を口ずさんでいる。(これはランエボが物凄い勢いでお脳をフル回転させている時の仕草だが、鎌吉には呆けているようにしか見えない。)
「鎌吉~♪質問♪」
「?何ですか?先生?」
持っていた酒樽を全て空にした八郎が陽気に手を振り質問する。
「あんたは“実際リアルでも”料理作れる系男子?」
「?はい、普段でも料理が好きで自分で料理してました…それが何か?」
八郎の質問の真意が解らない鎌吉は怪訝な顔をする。
「じゃあさぁ~サブ職<料理人>でLV90、だけど、実際には“料理なんて作った事在りませ~ん♪”なんて奴が手作業で料理作ったらどうなる?」
云ってる事が理解出来たらしく鎌吉は考えつつ言葉を選び答える。
「…多分、宝の持ち腐れ…作ったモノは味はするでしょうが、これで味覚が“ガキ大将で天下無敵の男”と同じレベルなら間違い無く『味のする不味い食べ物』の出来上がり…で…す…ね。」
自分で云っておいて想像出来たのだろう、若干顔色が悪くなる鎌吉、尚も続く八郎の質問。
「なるほど~、じゃあLV20くらいの<料理人>でも、実生活ではプロの料理人は?」
「…多分、レベルを上げないと現実世界と同じような難しい料理は作れないと思います、出来て僕がやったような簡単な工程で済む料理でしょうね。」
鎌吉の答えを聞いて何故か満足げにニヤニヤする八郎…ランエボは今だに虚空を見つめ歌を口ずさんいる…が突然、鎌吉の方に身体から向き直り真剣な眼差しになる。
「ねえ?鎌吉くん、これって他の生産系サブ職でも同じなのかな?あと、<料理人>が出来ない事ってある?」
ランエボの質問にすぐに返答が出来ず、考え込む鎌吉…『推論ですが…』っと前置きをして持論を展開する。
「<料理人>に出来ない事は、発酵食品を作る事とお酒を作る事だと僕は思います、その2つはおそら<サブ職<醸造職人>辺りかと…あと他の生産系だと、アクセサリーの類は<細工師>、布地や革の加工は<裁縫師>辺りが手作業で物が作れるとは思いますよ?ただ、僕のサブ職が<料理人>なんで調理に関しての検証は出来ても他の生産系サブ職は流石に誰かがやってみない事には明確に『出来る』とは今の処、明言できませんね…。」
言葉を慎重に選ん話したつもりだが、義姉妹は揃って鎌吉を観ながら笑いを堪えている。
「な~んば、笑いよっさるとですか!」
思わず、顔を真っ赤にして怒る鎌吉、真面目に答えたにも関わらずこの仕打ち、彼が憤慨しても致し方ない。
「いや~悪い、悪い、鎌吉、あんた助平の割にそれ以外の所は生真面目なのね…こんな訳の判らない異世界で、しかもこの短期間で色々、自分なりに自分の出来る事やら色々模索してたんでしょ?面白い奴~♪」
「「ね~♪」」
ニヤニヤ笑いながら鎌吉を茶化す2人、今度は違う意味で顔が真っ赤になり顔を伏せ暫く沈黙している…恥ずかしいらしい…。
「最初からそうしてりゃ可愛げもあるのに…鎌吉~♪あんた最初のデートで焦ってドツボにハマってその日の内に振られるタイプでしょ?」
「なっ……!」
……思い当たる事が在るらしい。
この後、一通り義姉妹に弄られ心を抉られ女性の恐ろしさを身を持って知る鎌吉だが、それと『おっぱい』への拘りはまた別物だと割り切る切り替えの速さは若さ故か…。
ある程度のお馬鹿なやり取りを終わらせて改めて自己紹介となったのだが……。
「じゃあ、改めて私は…」
八郎から切り出した処を鎌吉が遮る。
「元、<黒剣騎士団>の伊庭八郎女史、メイン職<武士>サブ職は別名“自殺サブ職”<剣狂>昔とあるサーバーで流行った日本人プレイヤー狩りを数人で、そのサーバーまで乗り込みギルド1つ潰したって噂から“羅刹女”“キラークィーン”の二つ名持ち、<遊撃隊>というギルドの元ギルマスでもある。黒剣騎士団時代の二つ名は“チープスリルジャンキー”でムードメーカー兼トラブルメーカー、2016年5月17日に引退。」
すらすらと八郎のゲーム時代の来歴を列挙する鎌吉…八郎は鳩が豆鉄砲を喰らったような……鯉が餌を要求するような、なんとも滑稽な顔をして震える人差し指で鎌吉を指差す。
そんな八郎を余所に今度はランエボに向き直り、にこやかにランエボの来歴を列挙しだす。
「え~っと先生とほぼ入れ替わりで<エルダー・テイル>を始めた妹さんのエボリューションさん、メイン職<守護戦士>サブ職<鎧職人>主力武器が珍しく騎乗鎗の為、付いた通称が『ランサー・エボリューション』“ランエボ”、ソロでは在りますが黒剣騎士団の中堅メンバーや一部古参と交友あり、仮面の<召喚術師>さん主催の北欧サーバーの大規模戦闘に参加したメンバーの1人。で!“黒剣残念職三人組”の生臭<神祇官>義盛さんの4号さん!あの!八割九分九厘九毛!男だらけの硬派戦闘系ギルドで唯一!ハーレム形成してる男の敵!ギリギリギリギリッう…羨ましくなんか無いんだからね!もげろ!」
………………。
「「は?」」
“義盛の4号さん”発言に絶句する義姉妹…、黒剣騎士団内でも義盛達以前からの古参メンバーや一部のプレイヤーは周知の事実なのだが、大半のプレイヤーは義盛が“女性”だという真実を知らないのだ。
現に義盛達以降に黒剣騎士団に入団した女性プレイヤーの一部には義盛目当てで入団して来たプレイヤーも居る、そして常にサツキ、ヘルメス、朝右衛門を連れて行動している事もあり一部の男性プレイヤーからは<西風の旅団>ギルマス、ソウジロウ=セタほどまでではないにせよ嫉妬の的となっている…、そしてランエボはその4号さんと一部プレイヤーからは認識されているらしい…。
『(ランエボ…義盛って、まだ“男”だと思われてるの?)』
『(…本人が諦めて、もう否定も肯定もしないから、大半が“モテ男”だと思ってるよ…、たまに「あんなオネェ言葉野郎がなんでモテる」みたいな陰口聴くし…)』
『(なまじ、声が男前でアバターも男だからねぇ~、よくあの豆腐メンタルが耐えてるなぁ…。)』
「「本人が聞いたら凹むんだろうな~…。」」
「??何がです?」
「んとね、こっちの話~、取り敢えず、私は義盛さんの4号さんじゃないからねぇ~鎌吉くん♪」
鎌吉が思わず後退りしてしまうほどの凄みと負のオーラを醸し出すランエボ、それ以外にもツッコミ処はあるが概ね間違ってはいないので義姉妹はそれ以上は突っ込まなかった。
そして改めて鎌吉が自己紹介をする。
「改めまして、僕の名は“キティー・ホーク”メイン職<暗殺者>LV87サブ職<料理人>LV90、プレイ歴1年半くらいの、ナカスを本拠地にしてる生まれも育ちも九州は長崎県の佐世保。今年19になる浪人生でオタクでリアル料理人志望のソロプレイヤーです。」
何とも簡単な自己紹介だ、余りプライベートにツッコミを入れるつもりも無いがそれでも簡単過ぎる。
「あっさりした自己紹介だねぇ~、なんか他に無いの?九州出身なのに訛りが少ないのは何?仕様?」
どうでも良い事に食いつく八郎にヘラヘラと答える鎌吉。
「そこですか?アレです、僕は生まれも育ちも佐世保なんですが、両親はどちらも関東の人でして…、そいぎんた~普段は標準語なんですが、友人や近所の人がバリバリの佐世保弁なんで、たまに方言が出るんですよ。」
「は~、そんなもんなんだ…旅行とかでしか余所の地域に行った事ないからピンと来ないなぁ~。」
変な処に関心するランエボ、これを皮切りに義姉妹は鎌吉を質問責めにする。
何時、料理の秘密に気付いたのか?多分、この異世界での身体能力の高さに順応してるようなのに、何故PKに囲まれた時に反撃しなかったのか?何故、義姉妹のゲームでの来歴を其処まで知っているのか?ゲーム時代からのナカスの情勢と、現在“鎌吉”が知りうるナカスの情勢、何故1人で本拠地外のゾーンを寝蔵にしているのか?義姉妹に接触したのは故意か偶然か、今後どうするつもりなのか?
兎に角、久し振りに冒険者と接触した所為か?義姉妹の知的好奇心を擽る逸材“鎌吉”はそれこそ<盗剣士>が繰り出す連撃のような質問にタジタジだ。
「と…取り敢えずですね…1つ1つ行きましょう…、僕は厩戸王じゃないので一度に云われても答えられません!」
流石に、辟易した鎌吉が悲鳴地味た声を上げる。
「ん~…、じゃあ1つ目~!鎌吉!あんた、童貞でしょ?」
完全に胸揉まれた事への意趣返しである、『水に流す』と云ったのは何処の自称“永遠の26歳”だったか…。
しかし、そんな八郎の思惑は外れる。
「あ~、童貞ですよ?女性とお付き合いした事が無い訳では無いですが、だいたい最初のデートで振られますね。やっぱり、アレですか?2人っきりになった時にキスより先に胸揉むのが拙いんですかね?」
…イヤ、いきなりそれは無いだろう…、もう少し空気読めよ!女性も初デートでキスくらいは覚悟?してるだろうが、キスより先に胸揉まれるなんて想定してねーよ!
「…ごめん!聞いた私が馬鹿だったわ…。」
聞いた事を全力で後悔する八郎、奴は筋金入りのおっぱい聖人(星人では無く敢えて…)だった…。
質問する気力も失せた八郎に変わり、今度はランエボが質問する。
「鎌吉くん、サブ職<料理人>が料理を作れるの何時、気が付いたの?」
その質問に、今更ながらに何故か周囲を警戒する鎌吉。
「…スミマセン、ノーコンの島って冒険者は僕らだけですか?」
「?何を警戒してるか知らないけど、それなら大丈夫だよ鎌吉?ゴンザレスのおっちゃん…あ~、往復船の船長勤めてる大地人のおっちゃんね、に、毎回乗船前に確認してるけど、あの日以来、ノーコンの島に来てる冒険者は私達、義姉妹だけだってさ。」
話に割って入る八郎、現在ノーコンの島に上陸している冒険者はここに居る3人だけなのは既に確認済み、且つNPCである大地人とコネクションまで既に持ち合わせている。
「…なら大丈夫ですね。僕が気付いたのは異変が起きた初日です。腹が減ったので食料アイテムを食べたら不味い、その事に腹かいて露天で手に入る調味料、素材アイテム購入して、セントラルリバーで魚釣って調理したんですよ!そしたら普段に味のする料理が出来るじゃないですか!だから素材アイテムも色々と試してみたら味も匂いもする料理が出来る!…事はその時、気付いたんですが…その時はサブ職が関係してるなんて気が付かなかったんです…」
そこまで云うと鎌吉は云い澱む…その後に何か在ったに違いない事は表情を見れば一目瞭然だが、聞かない事には話が進まない、なので八郎は目で続きを話すように促す。
「…その翌日、先生達と出会った後の話です、あっあの時も今日も遭遇したのは偶然ですからね?それはさて置き…ハットリバーで魚を今日みたいに釣ってたんですよ…、そしたら今日とは別の奴らに絡まれまして…アレは今日より酷かった僕が魚を食べてたらイキナリ<オーブ・オブ・ラーヴァ>で不意打ち喰らって魚は横取りされ<デスクラウド>喰らって半死半生…で、そいつら僕が焼いた魚食べ終わって、残りの魚を自分達で焼いたら黒焦げのゲル状になって…その後は云わずもがな…『なんでお前だけ魚がまともに焼けるんだ』だのなんだの…死に掛けては<霊薬>で回復されてボコられ…『知らない、解らない』と云えば死ぬギリギリ手前まで痛めつけられ…それの繰り返しです…あの頃はこの身体を上手く使いこなせ無くて、されるがまま…いよいよヤバくなった時に咄嗟に“煙羅煙羅の煙管”出して煙羅煙羅に救われました…、取敢えずアクノス跡地に運ばれて…。 」
「鎌吉!!そいつらの特徴は!!!」
話の途中で八郎が話を遮る、その眼には怒りのドス黒い炎が浮んでいる…今からでもナカスに帰り、そいつらを見つけ出し締め上げる気なのだろう…。
「…お義姉ちゃん!!気持ちは判るけど、そいつら殺したってまた生き返るんだよ?」
「ランエボ!!誰が殺すなんて云った?そんな奴ら殺す価値も無い、鎌吉がやられた事を万倍にして返してやる!!足の指から一枚一枚爪剥いで、一関節づつ切り落として、脚から生皮剥がし…。」
完全に頭に血が昇っている八郎は本気で殺る気だ…しかし。
「あぁ、それなら昨日済ませました、先生みたいな残酷な事はしてませんし殺してはいませんよ?ただあいどんのー、ボコにしてフリチンにしてケツの穴にあいどんのーの武器刺して煙羅煙羅に頼んでカセギの島に捨てて来ました。」
非常に清々しい笑顔でサラッとえげつない事を云ってのける鎌吉…、アクノス跡地に運ばれて以来、彼は義姉妹と同じようにこの異常に高い身体能力に身体と感覚を馴らす訓練などを始めた、最初はアクノス跡地、地上1階から50レベルくらいのモンスターを倒し特技の発動を確認し、徐々に倒すモンスターのレベルを上げ、ゲーム時代以外のモーションでも特技や通常攻撃が繰り出せるかを研究、HPがギリギリになったら煙羅煙羅を召喚し脱出、腹が減れば料理の練習を繰り返し、偶にギルド会館7階へ行き本を借りてはこの世界の情報を頭に叩き込むの毎日を繰り返したらしい…。
「?…じゃあ鎌吉くん、さっきの中学生もやっつけられたって事でしょ?なんで戦わなかったの?」
ランエボの質問は至極真っ当だ、自分をなぶりモノにした連中にはキッチリ生き恥かかせて、今日、自分にPKを仕掛けた中学生には全くの無抵抗…やってる事が矛盾している。
「あれですか?だって彼らは僕に不意打ちなんてしてませんよ?しかも特技すら使わなかった、明らかに殺意も悪意も無いですもん、彼らが苛々してる前を陽気に歩いてりゃ、そら怒りますよ。だから大人しくされるがままだったんです。」
鎌吉からすれば、自分に非があるし相手は只の八つ当たりで悪意も殺意も無いから大人しくしていた…、気が済んだら止めるだろうという認識だったようだ。
スパーン!!!
「あ痛っ!」
いつの間にか取り出したハリセンで八郎が鎌吉の頭を叩く!(あ、すごい久し振り。)叩く!叩く!叩く!
「あ~この野郎!!私の怒りのやり場をよこせ!コイツめ!コイツめ!」
振り上げた拳の振り下ろす場所を失った八郎は鎌吉に八つ当たり、ハリセンで頭を乱打する…人、それを理不尽という…。
八郎の気が済んだ処で次の質問に移る何故、義姉妹の来歴をあんなに知っているのか?
「云ったじゃないですか~!僕はオタクだって、<エルダー・テイル>始めてから攻略サイトや“まとめ”とか“Wiki”とか、日本サーバーのプレイヤー…、特に“二つ名持ち”やそれに付随する関連事項は総て網羅しましたよ!だから引退したプレイヤーでも現役でも有名処は大抵、プライベート以外!ゲームでの来歴はチェックしてましたから!」
この台詞に義姉妹は誰かさんを思い出した…やたらハイテンションでお調子者でヨイショに弱い器用貧乏なランエボと同い年の暗殺者を…、彼女の場合はそれに加えて自身も“二つ名持ち”になるのが目標だったが…、今回其処は関係ないので次の質問に入る。
「ナカスの街の状況でしたね、僕はプレイ歴は浅いのもあるし、本拠地自体には必要以上に頓着してなかったのでアレですが、アキバやミナミみたいに飛び抜け大所帯のギルドも無ければ、ススキノみたいに破落戸ギルドが幅効かせてる訳でも無し…、<バイアクヘー><第十一戦闘大隊><紅蓮><紅葉の風>くらい…古い処で<アイガー修道院>ですかね・・・有名処って…ゲームの頃ならそこらがナカスの看板みたいにしてた処で何の問題も無かったと思いますよ~。」
ぞんざいと云うか投げやりというか…どうにも義姉妹には引っ掛る鎌吉の最後の言葉尻が気になる。
「変に引っ掛る物言いだね?」
八郎が鎌吉に尋ねると『他所の本拠地は知りませんが』と前置きしてナカスの状況を説明する。
鎌吉は云う、下手に<エルダー・テイル>がハーフガイアプロジェクトなどとやってるのが悪いと…更に唾を地面に吐かんばかりに毒づく。
義姉妹はソレの何が悪いのかピンと来ないが…曰く、全く架空の大地ならば問題は無かった…なまじ地球を1/2サイズに縮小した地形が問題だとか、要は地元意識の強い地域の人間は余所者を排除しようとする傾向があるという事らしい・・・、ナインテイル自治領とは現実世界の山口県と九州全域の事だ。
鎌吉が云うには九州人、特に福岡の人間は縄張り意識が強いとの事、九州外から遊びに来る分にはフレンドリーに接するのだが、余所者が地元福岡で音頭を取るのを嫌う傾向が在る。判る人間に判る説明をすると交通機関、バスは某私鉄が福岡では先駆の為、市バスが全く発達していない。(寧ろ無い)
同人誌即売会やコスプレイベントなども関東に本拠を置く企業体のイベントよりも地元の個人団体主催イベントの方が集客率が高い(正しくは高かった時代が長い。)
893にしても排他的で指定暴力団5団体中、某日本最大の構成員を誇る団体傘下2団体、残り3団体は隣県の団体と組み地元外の団体及び其処へ組みする団体を排除すべく戦後から血で血を洗う抗争を続けて来ている。
福岡に限らず、九州の他県にも県民性というか気風というものが在る、熊本の“肥後もっこす”、 宮崎の“ いもがらぼくと”、 鹿児島の“ぼっけもん” 、佐賀の人間が通った後はペンペン草すら生えないなど様々だ。
約9日間で徐々にその傾向が表れ出していると鎌吉は説明する。
現在のナカスの街は大きく分けて3つのグループになるという。
『九州在住(山口県も含む)、九州出身でナカスの街に本拠を置くプレイヤー』
『九州以外の他地域在住で、他の本拠地から流れ込んでナカスの街を本拠とするプレイヤー』
『何らかの理由で他所から流れて来た…ないし、九州出身もしくは在住でも逸れ者の寄せ集めがナカスの街の一角に集まって本拠としているプレイヤー』
表立って抗争をする訳でも無いが、かといって誰かが音頭を取って纏まるという事も無い、これ以上状況の悪化もなければ改善も無いであろうと云うのが九州在住、ナカスの街を本拠地とする鎌吉の見解だ。
「アキバなんかは雑多だから気にもしなかったけど、ナカスの街はそうなんだぁ~。」
「えぇ、そんなもんですナカスは・・・。」
元々、ナカスは“残念職ぷらすワン”に連れられて来るくらいで、内情を全く知らなかったランエボは感心し、ナカスを拠点として動く鎌吉は情けないやら阿呆らしいやらで、ため息を付く。
「もう少し聞きたい事もあるけど…、で?鎌吉、あんたはこれからどうしたいの?」
後先考えずに、剛速球を『ストライクゾーン』というより『バッターの顔面』目掛けて投げ込むような質問を飛ばす八郎。
「…。」
黙りこむ鎌吉…。
「ねぇ、鎌吉くん?私達、義姉妹はね?元の世界に帰りたいの、でも私達だけじゃどうする事も出来ないから、知り合いがたくさん居る私達の本拠地アキバの街に戻って皆で帰還方法を探そうってお義姉ちゃんと決めたの!…でもね?<ノウアスフィアの開墾>実装で、今までには無かったクエストや大規模戦闘がナカスからアキバまでのルートに増えたかもしれないし、他にも何か異変が在るかもしれない…だから最低でも1パーティー…欲を云えばフルレイドは仲間を集めたいの…。」
「…??」
少し戸惑い、ランエボの云わんとしている事を測りかねる鎌吉。
スパーン!!!
辺りにハリセンの壮快な打撃音が鳴り響く・・・。
「本当に!!鈍いね、あんた!今のナカスが嫌いなら私らに着いて来い!!ただし、エロい事しようとしたら…後は判るね??」
観る者が観れば色々な意味でドキッとする笑み(主にM男にはご褒美的な)を浮かべる八郎。それでも踏ん切りが付かないのか押し黙る鎌吉。
「『鳥八十』の鎌吉は!!伊庭八郎秀穎に最後まで付き従ったよ?キティー・ホーク!!あんたが私に“鎌吉”と呼ばれて異議を申し立てなかった時点であんたは鎌吉で!私は伊庭八郎秀穎だ!!私らに美味い物作る為に仲間になれ!! 」
云ってる事は無茶苦茶だが、これが元黒剣騎士団“チープスリルジャンキー”伊庭八郎の八郎たる所以だ、こうなっては何処の誰だろうと拒否権などは無い!もうただただ、巻き込まれて玩具にされて一緒に悪戯の片棒を担ぐという選択肢しかない。
呆気に取られポカ~ンとしている鎌吉に八郎から最初の檄が飛ぶ!
「鎌吉!!ゴンザレスのおっちゃんに残りの蟹身分けてやって食べさせろ!!多分、大地人は“味のする料理”なんて食べた事無い筈だ!!きっと喜ぶよ♪」
「…は、はい!!先生!!」
なんとも複雑な笑みを浮べながら残りの蟹を船着場まで運ぶ鎌吉、なし崩しではあるが“仲間”が1人増えた。
まだまだ課題は在るが当面、食事には困らなくなった。コレから3人は本格的に仲間探しをしたり厄介事に巻き込まれたりの日々だろう。
~三匹が!!!第1部了~
次回予告
お久し振りですぅ~♪ヘルメスですぅ♪第1部完結、八姐お疲れさまぁ~♪
次回からはぁ、番外編『アキバの4人娘』が始まりますぅ~♪主役は、私達なんですけどぉ~♪このまま番外では無くぅ本編に昇格を~…
ピクッ
後方、約500m先で金貨が落ちる音を確認!その数およそ30枚!!!
あっ用事を思い出したんでぇ~♪それではぁ~♪
キッキッキッキ…、このまま番外編にとって変わられてたまるかってーの!!
おう!2部から俺等も参戦だ!




