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三匹が!!!  作者: 佐竹三郎
~1章ナカス混乱期~
6/26

5話:義姉妹は考える…蟹の事を…優先事項は蟹料理。

取敢えず、大災害2日目終了です。事後になりますが或未品様、ユンさん、龍くん、エルヴィン氏を少しばかりお借りしております。ご不快でしたらご一報を

 夕暮れ時、失意に打ち拉がれハカタ灯台船着場まで戻った2人、露天や店が閉まる前にナカスのメインストリート“タイハク通り”にて、ヴィシャスに教わった通り、唯一?『味』がする食べ物、野菜や果物など素材アイテムと砂糖、塩などの調味料を仕入れる。

 ついでに本日の反省を踏まえて大地人経営の武器屋にて、LV90用の一番攻撃力の低い、“桧の棒”と“竹ヤリ”を購入し本日の宿を決め泊まる事にした。


 宿で2人部屋を用意してもらい、部屋に着くなりベッドにダイブする八郎。


「わ~い♪ベッド~♪冴子!ベッド大好き~♪」


 昨日の今日なのでかなり疲れているのか?いないのか?年甲斐も無くベッドで枕を抱き締めゴロゴロする駄目な大人の見本を恥ずかしげも無く披露する八郎。


「ん?静香さん?今?歳がどうとか云った?」


 突然、殺気漲る鋭い視線をランエボに送るが、当のランエボは八郎に背を向け林檎をかじりながら、<ダザネックの魔法の鞄(マジックバック)>を漁っていた。

 どうやら、八郎の気のせいのようだ…(チッ『残念職と呼ばないで(仮)』の頃より、歳の話に敏感になってやがる。)


 ながらで鞄を漁りつつ溜め息をつくランエボ、食べ終わった林檎の芯を見ながら呟く。


「ね~、お義姉ちゃん…この世界さぁ、お風呂無いんだよ…有っても只のオブジェなんだぁ~、それとね、お義姉ちゃん、下着の替えか水着持ってない?」


「……。」


「…ねぇ?聞いてる?お義姉ちゃん?」


「……で……ん…。」


「…?お義姉ちゃん?」


「……秀くん……。」


「……寝ちゃったか……。」


 ベッドの方を見ると義姉は涙を流しながら眠りに就いていた…、ランエボは義姉の腰から<ダザネックの魔法の鞄(マジックバック)>を外し、刀を抜きベッドの横に立て掛ける。


(ごめんなさい、お義姉ちゃん…私が誘ったばっかりにこんな訳の解らない事態に巻き込んで…。)


 口にも表情にも出さないがランエボは義姉を拡張パックの導入日に誘った事を後悔していた…だが半面、義姉が傍に居てくれる事が…下らない言い争いでも、相手をしてくれる身近な人がこの異世界に居てくれる事が有り難くも思う。

 昨夜などベッドで眠れたとはいえ、1人寝がこんなにも心細いものだと思ったのは小学校低学年以来だろうか…。

 なんだかんだ悪態を吐いて気丈に振舞ってはいたが義姉も心細かったのであろう事は、寝言と涙で推し量れる。

 そんな義姉の判り辛い優しさにランエボの瞳に涙が溢れた…。



   ~ちりりりりりりり~ん♪~

    

     ~ちりりりりりりり~ん♪~


       ~ちりりりりりりり~ん♪~


「だ~!!五月蝿い!大介さん何時なんじだと思ってるの!」


 ついさっきまで、泣きながら寝ていた八郎が鬼の形相でベッドから起き上がる、察するに誰か知り合いから念話が入ったようだ、義姉がまだ寝ぼけ眼だったので慌てて零れ落ちそうになった涙を拭って誤魔化す義妹…八郎の方はそれどころではないらしく涙を拭ったのは見られてはいないようだ。


「…あ~っと!寝起きでおみそが覚醒してないからちょっと待ってよ大s…ヴィシャス…。」

   

 そう云っておもむろにベッドから降り、一番近い壁目掛けて頭突きを一発!『ゴスッ』と鈍い音と共に宿屋自体が軽く揺れる…。額を撫でながら涙目の八郎。


「痛たたた…、ごめん!で?アキバ(そっち)で何かあったの?」


『…今、なんか豪快な音がしたな…まぁいい。お嬢、<放蕩者デボーチェリ・茶会ティーパーティー>に居た、“セタ”って<武士>の坊主を覚えてるか?』


「~ん?あの、常にオネーちゃん侍らせてた、小便臭そうな喋り方する坊やがどうかした?」 


 …完全に<西風の旅団>およびSFCソウきゅんファンクラブを敵に回す問題発言である!八郎に掛かれば、旦那様以外の男性はアウトオブ眼中なのが良く分かる。


『…お嬢…今の発言でアキバの女性プレイヤーの大半、敵に廻したぞ?…ってくだらん話はさて置き、そのセタの坊主が衛兵と殺りあって死んだ…』


「は!?何?ヤッパリ死ぬの私ら?」


 余りに衝撃的な出来事を聞かされ青ざめる八郎。


『まて、まて!話しは最期まで聞け!確かにセタの坊主は死んだが、大神殿で蘇った!良く聴けお嬢!俺達は死なねー!否…“死ぬ事すら出来無い”んだよ!』


 続いたヴィシャスの言葉に更に顔が青ざめる…まだ覚醒しきって無い頭では上手くおみそが働かないが、この異世界では“死”が絶対的な終着点にならない事はかなり重大事だという事だけは認識出来る、そしてこの事実が広まれば必ず良くない事(・・・・・・)も起きるだろう。

 振り返ると“死ぬ”という言葉に反応したのであろう義妹の顔色はよろしくない、取敢えずジェスチャーでランエボに部屋からの退席を促し、部屋から出て行ったことを確認し念話を再開する。


「ゴメン!師匠、義妹いもうとが傍に居たから退席させた。…“死んでも生き返る”事は判った、他にそっちで変わった事は?」


『…そうか、義妹ちゃん傍に居たのか申し訳無ぇ、変わった事か…昨夜の時点で話には出てたんだが、<黒剣騎士団うち>の大半の女性陣と戦闘に耐えられない連中が脱退ぬける、女性陣は<西風の旅団>…あ~お嬢は知らねぇか…件のセタの坊主が立ち上げたギルドに移籍、古株の一部はウッドストックの処に移籍だ。』


「義盛達も移籍?と、脱退ぬける事に対して大工(あの馬鹿)は何だって?」


『義盛嬢ちゃん達や極一部は残留、大工カーペンターは“ウチのやり方に着いて来れない奴は辞めちまえ”だとよ…相変わらず不器用だよアイツは…。』


「義盛達は残留…アイツは(あの馬鹿)相変わらずか…らしいやね(・・・・・)…、らしいから…、誤解を受けやすいんだろうけど。」


 <黒剣騎士団(古巣)>の現状に少し感傷的になる八郎…。


『あと、“狐将軍”の秘蔵っ子とその後輩が<黒剣騎士団うち>に戦闘の稽古つけてくれたが…あの兄ちゃんオッカネーな、たった2日くらいでこの異世界・・・・での戦闘をモノ(・・)にしてやがる。』


「第三帝国陸軍元帥殿の秘蔵っ子?面識は無いけど、狼牙の盗剣士の兄ちゃんよね?へ~、ゲーム時代はそんな悪目立ちするタイプじゃなかったのにね?」


『まぁ、その狼牙の兄ちゃんの教え方は大工カーペンター達には難しくてな、後輩の猫人の暗殺者の兄ちゃんに<黒剣騎士団うち>の大半を占める馬鹿野郎連中が教わってたがな…。』


「…その猫人の兄ちゃんも<黒剣騎士団うち>の野郎どもと同類?で?何でまた寄りにも寄って<黒剣騎士団うち>なのよ?」


『さぁ~な…ヘルメス嬢ちゃんに云わすとな、狼牙の方から“金の匂い”がするんだとよ…こんな異世界で今現状、“金”なんて石ころとそう大差ないんだがな…。』


「…ヘルメスちゃんのセンサーが働いたか…、何か“金”をかす方策でもこの短期間で見いだした…っと見るべき?」


『かもしれんが、その事と<黒剣騎士団>に戦闘の稽古つけるのに繋がりが見いだせねぇ…ありゃ、<D.D.D>の大将より曲者かもな…。』


能面眼鏡クラスティより曲者…、って事は…絶対お近付きになりたくないタイプか…。」


『お嬢の苦手とするタイプではあるな…、あとな、下らねー話だが義盛嬢ちゃんが体格差と性差に耐えられずにエンクルマから<外観再決定ポーション>貰って実寸・・・・になったぞ?』


「何もかもが正反対に設定してたからね~あの娘…、でも“声”はまんまでしょ?知らない奴は認識出来ないんじゃない?ネカマに間違えられて凹むんじゃない?」


『まぁ、そのウチ慣れる(・・・)だろうさ…、で?そっちは何か変化は?』


「ん~、コレと云って収穫は無し!強いて云うなら巨大カニ(アスコットクラブ)は油断しちゃいけない!アイツ等は、正に魔物だ!」


『…意味が解らん…、まぁ、こっちじゃお目にかかるのも難しいが肝に命じとく、じゃぁ夜分に悪かったな、お嬢。』


「あ~師匠気にしない、気にしない、なんか変化あったら、こっちからも連絡するわ。」


『じゃあな…。』


「じゃあね。」


 念話を終え、ベッドに座り込み天井を眺める八郎、思い知らされるのは手持ちの情報の少なさ、既に何かに気付き行動に移している者達が居ることの焦り…、着流しの懐から煙管を取り出し口に運ぶ。

(さてはて、動かない事には何も始まらないか…、今日みたいな戦闘じゃ戦闘訓練にもならない…いっそ高レベル帯のゾーンで戦闘訓練…いやいや、生き返るのは判ったけど、“死んで”なんのデメリットも無しなんて事も無いでしょうし…いっそグリフォン遣って空路でミナミ経由してアキバに戻る?でも1日4時間の制限があるからどれ位で到着する?しかも、ミニマップも使えない、地図も無いで高レベルモンスター出現率の高いゾーンを回避したり出来る?新規、大規模戦闘レイドのトリガー引いた時、どうするよ?たった2人じゃどうにもならない…どうするか…)


  ~ちりりりりりりり~ん♪~


 思案を巡らせていると、義妹からの念話が入る、…完全に存在を忘れていたらしい八郎は慌てて念話に出る。


『お義姉ちゃん、シドさん?からの念話終わった?』


「ゴメン!ゴメン!終わったから戻っておいで。」


『…ん、判った。』


 数分後、装備を解除したラフな姿のランエボが帰って来る、少し顔色が悪くもみえるがBSの表示は何処にも見当たらないし、HP、MPもMAXなのでこの数分の間に何かあった訳では無いらしい…多分、ヴィシャスとの念話のやり取りで出た“死”について考えて不安になっていたのだろう。

 一旦、ベッドの傍らに呼び寄せヴィシャスとの念話の内容と先程まで思案していた内容を包み隠さず、総てランエボに開示する八郎。


「…ゲームと同じで死んでも生き返る…か…ゲームの頃、同様の“デスペナ”だけじゃなくて何か他にもペナルティーが在るってお義姉ちゃんは考えてるの?」


 先ずは“死からの復活”について義妹から質問される。


「まぁ、生き返るって分かっていても実践する気は無いから断言出来ないけど、多分…通常のデスペナルティー以外にも何か在る気がする…それが何なのかは判らないけど…ね…。」


「…そこは私も同意見、なるべく死なないようにやった方が良いと思う…あ…、それで気になったんだけど、“大地人(NPC)”はどうなんだろうね?冒険者と同じく不死なのなぁ…。」


 突然、笑えない質問をする義妹を睨み付けようと思ったが、義妹の眼は真剣そのものだ、だから考えながら質問の答えを述べる。


「…それは判らない…、でも私達…大地人の云う処の“冒険者”は不死でも、大地人(彼ら)は不老不死では無いと思う…覚えてる?昨日の屋台でのやり取り?屋台のあの気のいいおっちゃんは私ら“冒険者”は不死の存在(・・・・・・)だって云ってた…って事は大地人には“死”が存在するって事じゃない?」


 言葉を選びつつ話す八郎…、その言葉を聞いて益々、難しい顔をするランエボ。


(…お義姉ちゃんと私は考えた事の着地点が一致してるけど…他の“冒険者”が総て私達と同じ結論に達するとは限らないのよね…。)


 現在の時点でこの義姉妹と同じように“大地人(NPC)”を認識している“冒険者”は少ないだろう、そしてこの2人が危惧している事は先々起こり得る事であるが、それはまだ後に起こる出来事である。


 この後、深夜まで義姉妹は議論を交わし当面の目的として、LV80以上のモンスターを倒せるようになる事、地図を手に入れる事、巨大カニ(アスコットクラブ)を食べる手段を見つける事に決まった。


 …最後の1つに2人して合意している時点で食事にかなり不満がある事が伺えるし、まだ蟹尽くしの食卓を諦め切れずにいるらしい・・・、下着とかお風呂とかも重要ではありませんか?お2人さん??




次回嘘予告


赤いシグナル非常のサイン、突然襲い来る謎のエネミー、正体不明のエネミーに苦戦を強いられる義姉妹!そんな時、3人目の存在を無視して現れた謎の男。


次回第6話:電人ザボーガーに乗って現れた4番目の男!その名はライダーマン!


Pプロと東映からクレームが来るからヤメナサイ(苦笑)



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