任務依頼
ようやく辿り着いた目的地。オレは車窓から外をのぞき、唖然としてしまった。
「おいおい、冗談にしちゃ笑えないぞ……」
空港から長い時間をかけて着いたのは、昔の自分にとって馴染みの深い場所。今でも鮮明に記憶に残っている場所だった。
そこはある名家の所有している大きな屋敷。
呆然とするオレを余所に、洗練された動きで扉を開く黒服の男。この家のお抱えの使用人である人間なら、この洗練度も頷けた。
「どうぞ」
「……ありがとうございます」
放心状態ながらも、どうにかお礼を返すことが出来た。
「ではこちらへ」
「……はい」
促されるままに、重い足を引きずって男の後を着いて行く。
眼前に広がる大きな屋敷は外観はもちろんのこと、内側の風景も荘厳なものだ。日本らしい建築物の中に、西洋風の要素を取り込んだ様式。それは見ているだけで圧を感じさせるものがあった。
屋敷内へ入るための入り口。一般の民家でいう玄関に当たる場所は、やはり一般とはスケールの違うもので、屋敷と同じく近寄りがたい荘厳さに満ちている。
門と呼べるそれは開かれ、屋敷の内側に招かれた。
内側は西洋と同じように、靴を履いたままで生活する形式。自分が住んでいた向こうにある家は、日本と同じで玄関にて靴を脱ぐ形式だったために、若干の違和感に包まれる。
それもわずかな時間のことだ。すぐになれたオレは先導する黒服の男について歩き出す。
幾度となく入ったことのある屋敷は、まるで新築と見紛うほど綺麗にされており、五年前と全く変わっていない。変わった所と言えば飾ってある装飾品が増えた気がする程度だ。
しばらく廊下を歩いていると大きな扉の前に辿り着いた。
ネームタグやプレートといったものはない。それでもここが誰の部屋であるかなど、すでに察しがついていた。
案の定、丁寧な口調での説明がされる。
「こちらが旦那様の書斎でございます」
黒服の男はそう告げてから扉をノックをした。
「東雲恭弥様をお連れ致しました」
「入ってくれ」
内側から男の声が聞こえたのを確認してから、黒服の男は扉を開けた。
ここには初めて入る気がする。いくら何度もきた屋敷だとはいえ、あまりにも広い屋敷の全体を知っているわけではないのだ。
にわかに緊張しながらも部屋の中に入った。途端に目の前の光景に圧倒されてしまう。
廊下に飾られていた品々が霞んで見える程の装飾品や本棚などの家具。部屋の中心にはかなり高級そうなソファーが置かれている。
そこにはスーツを着た三十代後半くらいの男性が腰かけていた。
この男性は、幼馴染みである天堂舞華の父親であり、天堂家現当主を担っている天堂藤十郎。昔に幾度となく会ったことがあるので、それなりに知っていた。
さて、ここまで言えば、ここがどこだか察してもらえることだろう。ここは天堂家の所有する屋敷。オレと同い年の幼馴染みが暮らしている既知の場所であった。
「遠路遥々すまないね。飛行機と車での長旅は相当に疲れただろう」
かけられるのは労いの言葉。その言葉でフリーズしていた思考が動き出す。動き出した思考の中で、オレは真っ先にこう思った。
主にあんたがオレを名指ししたせいだがな、と。
もちろんそれは口にしない。それが社会でうまくやっていく秘訣だ。
「いえ、お気になさらないで下さい。これも仕事の内ですので」
なんてことはない。ただの社交辞令を返すと、藤十郎は一つ頷いてから、黒服の男に視線を向けた。
「彼と二人で話がしたい。席を外してくれ」
「畏まりました」
藤十郎の言葉に恭しく頭を下げ、黒服は部屋を出ていった。その姿が完全に扉の向こうに消えてから、藤十郎が話を切り出す。
「さて、早速仕事の話をしようか」
しかし、すかさずオレは口を挟む。
「その前に一つお訊きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「答えられる事なら構わないよ」
「現在、日本では優秀な人材の育成に力を注いでいると耳にします。それにも関わらず、なぜ海外にいた面識の無いはずの自分を名指しされたのでしょうか?」
なぜ海外に居る自分の事を知っているのか。なぜ海外に居た自分が名指しされたのか。そして……藤十郎は自分が天月恭弥であった事に気付いているのか。
疑問はできるだけ早い内に解消しておくにこしたことはない。
オレの問いに藤十郎はうっすらと笑いながら答えた。
「君が一番適任だと思ったからだ。それに君と私は初対面ではないだろう?」
「――――――っ」
その言葉を聞き、体が硬直した。やはり予想通りに、オレが天月恭弥であったことに藤十郎は気付いている可能性が強まってきた。
いや、そう判断するのは早計だ。自分は五年以上も日本から姿を消しており、髪や瞳の色も変わっているため、見た目は以前とは大分変わっている。
バレているはずはない。
バレている方がおかしい。
絶対にバレているわけがない。
だから落ち着け。
そう心の中で何度も唱えてから出来るだけ冷静を装って訊ねた。
「どういう意味でしょうか。自分には一切記憶に無いのですが?」
動揺を極力殺した返答。それを耳にする藤十郎は、「やれやれ」と苦笑いを浮かべているばかりだ。
「もう少しで六年か……。君もあのころとは随分と変わったようだ」
告げられる答えを知らしめる言葉。どうやらオレの願望は、あっさりと裏切られたようだ。この反応を見て、予感が完全に確信に変わってしまった。
藤十郎には完全にオレの正体がバレてしまっている。
どおりで藤十郎は自己紹介をしてこないし、こちらに自己紹介を求めないわけだ。むしろ、気が付くのに遅すぎた。
出会い頭の会話ですぐに気が付かなければならなかった問題だ。
オレはもう二度と天月に関わりたくない。
一瞬本気で口封じをしようと思ったが、寸でどうにか自制して動きそうな体を止めた。ここで暴れれば確実に問題になる。どんな理由があれ、姉さんや仲間の顔に泥を塗るような真似は絶対にしたくなかった。
それを察したのだろう。
「君もこの話題にはあまり触れられたくないようだから話を戻そう。そこに座ってくれ」
その場に満ちた空気を払拭するかのように着席を促した藤十郎に従い、机を挟んだ対面のソファーに座り、本来の話の続きを目線で問う。
「私が依頼したいのは護衛の任だ。君には家の外にいる間、常に娘の護衛をしてもらいたいと思っている。もちろん報酬は君が望むだけの額を出そう」
そう言って、目の前に一枚の写真が差し出された。
その写真には、黒曜石の様に綺麗な黒髪を後ろで一つに結い上げており、わずかに蒼みがかっている瞳が印象的な少女が写っていた。年の頃は見た目から十五、六歳くらい。
写真の少女をオレは知っている。彼女の名前は天堂舞華。五年前まで一緒にいたオレの幼馴染み。
その写真に写っていた姿は、記憶の中にある姿よりも大分成長していた。まぁ、五年以上も経っていれば当然か。
そのような感想を抱きながら訊ねた。
「なぜ護衛が必要になったかお聞きしたいのですが」
それを聞かねば話が進まない。
護衛を依頼するということは、なにかしらの理由があるはずだ。
藤十郎はその理由を語る。
「近頃はとある事件が多くなってきていてね。それから防ぐために、君をわざわざ国外から召還したわけだ」
「事件の内容は?」
「未成年の学生が誘拐される事件だ。犯人の手がかりは一切なし。目的も不明。場所も不規則。拐われた者達は未だに見つかっていない。それが立て続けに六件も起きている」
「つまり自分の娘も巻き込まれる可能性があると?」
「察しがよくて助かるよ。そういうわけだから君に舞華を守ってもらいたい」
「……そうですか」
告げられる事件の内容。
オレは今、非常に呆れていた。
今現在、日本国内では誘拐事件が立て続けに六件起きている。目的も不明、拐われた者達は未だに見つかっていない。
それはしっかりと理解した。
でも、それだけだ。実際に舞華が標的になったという情報があるわけでもないし、連続で起こっているとはいえ事件の総数はたったの六件。世界規模で見るのなら、もっと被害者の多い事件はいくつも存在している。
つまりオレが何を言いたいのかというとだ。
『いくら自分の娘が可愛いからって、親バカを炸裂させてんじゃねぇぞこの野郎!』
ということだ。
はっきり言って、ある意味オレもこの事件の被害者である。不確定要素ばかりの憶測に振り回されるこちらの身にもなってみやがれ。ぶっ飛ばされたいのか。
不穏な空気を悟ったのか、藤十郎は補足情報を慌てて情報を付け足した。
「この事件の対象はいずれも魔力の高い学生なんだ。それなのに、舞華は護衛をことこどく嫌って、近付けさせようとしないのだよ」
うん、やっぱり単なる親バカじゃねぇか。自分で墓穴を掘ってやがる。再び、先ほどの分に上乗せして呆れてしまう。
だが、同時に納得する自分もいた。
この天堂家は、優秀な血縁を持つ家系故に天の称号を与えられた家系である。その家系の娘ならさぞかし魔力も高く、質も良いものだろう。その上、彼女の身を守る護衛もいない。誘拐犯にとってはいい的だ。
……が、普通はそんなこと有り得ない。
「いくら魔力が高いといっても天族を狙うでしょうか? 犯人もそこまで馬鹿ではないと思いますが」
天族の人間は一般平均に比べて総じて魔力の量が桁違いに高い。その分、当たり前のように魔法を使った戦闘能力も高い。
どんな目的があるのかは知らないが、天族を狙うのはリスクの方が大きすぎる。それなのにわざわざ危険を冒してまで誘拐などするのだろうか。
当然の疑問に、藤十郎はいたって真面目な口調で返してきた。
「だからこそ学生の内に誘拐するのだろう。君が一番よく知っているのではないかな? いかに名家に生まれ魔力が高くとも、扱う者が未熟、または無能な使い手ならば意味がないと」
さも当たり前のように言う。
どうやらコイツはオレに喧嘩を売っているらしい。プツンと何かがキレた。
「正直、面倒くさいことは嫌いだけど、ここであんたを潰すくらいは大した手間じゃないよな」
冷たく唸るような声が部屋に響いた。
突如オレを中心として、溢れ出す殺気が部屋中を支配していく。同時に吹き荒れるのは身体から漏れ出た魔力の暴風。その標的になっているのは、目の前に居る藤十郎だった。
バタン!
数瞬遅れて扉が荒々しく開かれる。開かれた扉から部屋に入ってきたのは、先ほどの黒服の男。
彼は入室後、銃をこちらに突きつけてきた。
「貴様なんのつもりだ!」
大きな怒号。その言葉には一切耳を貸さず、殺気と魔力を放出したまま、藤十郎を黙って睨み続けた。
藤十郎はそれにも関わらず、入ってきた黒服の男を一瞥する。
「私は部屋に入ってきていいとは言ってないぞ。それと誰に向かって銃口を向けている。彼は私の客人だぞ。早々に下がりたまえ」
「し、しかし!」
黒服の男がこちらを見据え反論しようとするも、藤十郎に遮られた。
「下がれと言っている。私の命令が聞けないのか……!」
「も、申し訳ありませんでした!」
天堂家の当主らしい威厳に満ちた声で一喝された黒服の男は、顔を真っ青に染め上げ、慌てて退室していった。
藤十郎はこちらに向き直る。
「すまなかった。君を怒らせるつもりはなかったんだ。どうか許してほしい」
そう言って頭を下げた。
藤十郎の言葉に急激に感情が萎えていく。むしろ、しょうもない挑発に乗った自分が恥ずかしいくらいだった。
オレは殺気と魔力の放出を沈め、形だけでも頭を下げておいた。
「こちらこそ無礼な真似を働き、申し訳ございませんでした」
心の中では少し驚いていた。
本気の殺気と魔力の暴風。藤十郎はそれを正面から受け止めても、平然と顔色を変えずに立っていた。普通ではあり得ないことだ。普通ならば耐えきれず、昏倒するレベルだったはず。
流石は天堂家当主といったところか。
「さて、私のせいでかなり遠回りになってしまったが、返事を貰えないだろうか?」
……自覚はあるんだな。それなら最初から喧嘩を売ってきてんじゃねぇよ。
苛立つ内心を見せないように取り繕う。
「返事もなにも、先ほどお聞きした話では、護衛を拒絶して一切近付けさせないと言ってませんでしたか? それに護衛は自分でいいんですか? 大事な娘さんなら、もっと人選に気を使った方がいいのでは?」
オレは護衛の任に就きたくないあまりに次々と問題点を並び立てる。これでどれか一つでも悩めば、それを理由に護衛の任を辞退出来ると算段していた。
だが、それは上手くいかない。
「確かに護衛である事が娘に知られるのはあまり好ましくないが、君なら大丈夫だろう。それに人選にも間違いはない。今、日本国内で最も安全なのは、君の側なのだから」
その言い回しに、苦虫を千匹ほど噛み潰したような表情になるのが自分でも分かる。
遠回しな答え。これで逃げ道は断たれてしまったのだ。正当な理由も無しに拒否することは出来ない。
しばらく悩んだが、仕方なく割りきった。
「……分かりました。自分で良ければ引き受けさせて頂きます」
「君ならそう言ってくれると思ったよ」
嬉しそうにそう言う藤十郎。なんだか本気で腹が立ってきた。二、三発殴ってやりたい。
でも、ぐっと堪える。この場で暴れれば、あっという間に日本の警察と知り合いになってしまう。それだけは勘弁被る。
必要のない面倒事は、できるだけ避けるにこしたことはない。
いや、この任務の時点で十分面倒事か……。
「では依頼の内容を確認させて頂きます。護衛の対象はこの写真に写っている天堂家御令嬢。契約の規定として一つ、この方をあらゆる害悪から守ること。二つ、近くに居ながらも、護衛だということを悟られない。三つ、必要がなくなれば解任。契約の規定は以上で宜しいでしょうか?」
藤十郎は「うむ」と一つ頷いた。
「では早速明日から君には、私立凪城学園、更に言うなら娘と同じクラスに通ってもらうことになる。担任の教師と引き合わせるから、明日は登校したら職員室に寄ってもらいたい」
「分かりました」
「それでは必要な手続きは理事長である私が済ませておくから、君は私が用意しておいた宿でゆっくりと休んでくれたまえ」
親バカな上に職権濫用だ。そう思ったが当然口には出さない。二度目になるが、それが社会でやっていくための秘訣だ。自分にそう言い聞かせなければ、すぐにでも口に出してしまいそうだった。
「では手続きの際、書類にはこのように記載しておいて下さい」
オレは持参していたメモ用紙に、生年月日や血液型など手続きに必要になるであろう情報を偽って書いた物を藤十郎に手渡す。
藤十郎はそれを受け取り、書かれている内容を確認すると、苦笑いしながらも承諾した。
「では失礼します」
軽く頭を下げた後にオレは踵を返し、部屋を出ようとした―――が、訊いておかなければならないことがのこっているのに気付いた。
「そういえばどこまで自分の事を調べたんですか?」
先程の、『まぁ確かに護衛である事が娘に知られるのはあまり好ましくないが君なら大丈夫だろう。それに人選に間違いはない。今、日本国内で最も安全なのは君の側なのだから』という言葉。
前半は幼馴染みだから、万が一バレてもなんとかなるんじゃないかという意味に取れる。
しかし、後半部分は違う。まるで今の自分の素性を知っているかのような口振り。これは看過できない重要な案件だった。
「私が集めた情報は、君が『別の名』で名を馳せ始めた頃からだ」
本当にツイていない。どんな情報網を持っているかは知らないが、個人情報をほとんど調べ上げるとか、人としてあり得ない。ていうか、完全に犯罪だ。下手なストーカーより質が悪い。
そうは思ったが、そんなこと二の次だ。今は確かめておかなければならない最優先事項がある。
「それなら自分がどこに所属しているのかもご存知で?」
「もちろんだ」
藤十郎は得意気に頷いている。なんだか急に頭が痛くなってきた。
「あそこの情報は厳重にロックされてるはずなんですけどね……」
なんというか呆れてものも言えない。
オレが所属している場所は一部の人間を除き、氏名、年齢、家柄、国籍、戸籍、性別、扱う魔法など全ての情報が厳重かつ厳格にロックされている。情報を知り得るのは、そこの仲間同士と一部の上層部の人間だけだ。
そんな情報を調べ上げたとかどんだけ苦労したことやら。
そうして苦労をした末に情報を得たからこそ、本来は名指しで指名されるされるはずもないオレは此処に呼ばれたということ。なんとも迷惑な話だ。
「それでは僭越ながら一つ忠告させていただきます」
「ふむ、聞いておこうか」
「世の中には、知らなければ良い事の方が多いんですよ。余計なことを知って自分の首を絞めるのは愚か者がすることだ」
冷たい声でそれだけ告げ、返答を聞く前に今度こそ踵を返して部屋を後にする。
扉を開けた先。扉のすぐ側にはさっきの男が控えていた。
ここにも面倒事が転がっていたらしい。彼は敵意剥き出しで睨んでくるも、オレは肩を竦めて苦笑いすることで受け流す。
面倒事はのらりくらりとやり過ごすのがベストな選択だ。
「ミスター。帰りも案内をお願いしていいですか?」
「……どうぞこちらです」
刺々した態度ながらも、きちんと敬語で話しているところは、流石プロだなと感じてしまう。
オレなんて一瞬で敬語なんて吹き飛んだ。まさかこんな形で自分の未熟さを教えられるとは思わなかった。
来たときとは逆の道のりを辿り、天堂家の屋敷をあとにする。
その時にふと思った。そういえば、舞華には会わなかったな、と。
今日は国民の休日たる日曜日。彼女もこの屋敷内にいるはずだ。にも関わらず、顔を合わせることはなかった。
これこそ天の采配というやつだろうか。
その考えに至り、首を横に振った。
「なに下らないこと考えてんだか。天はいつでも無情だってのにな」
無窮に広がっている晴れ晴れとした青空。その先にあるもの。オレはそれを見上げて呟く。
「オレは天が味方だろうと敵だろうと、降りかかる火の粉は全部はね除けてやる。それが例えどんな面倒事だとしてもな」
オレは自分の周囲で起きた出来事の数々を思い起こす。あり得ないほどの理不尽。痛ましいほどの惨劇。捨てられたあの日から、様々なものを体験し、また目にしてきた。
だからこそオレは力を得ることができたのだ。
「さて、それじゃ、行こうか」
オレは意識を切り替える。切り離された思考から、目先の事柄へと。
それから黒服に車を出してもらい、オレが今日から寝泊まりすることになっている場所へと送ってもらった。
時間にしてわずか六分とかなり近い。
車から降り立ち、景観を眺めた。
「へぇ、いい場所だな」
着いた場所には立派な一軒家だった。外観も良く、立地している場所も良い。更には綺麗に手入れされた庭まである。
一頻りに見回って満足した後、鍵を受けとり、家の中に入った。
「家の中まですごいな」
思わず感嘆ほ呟きが漏れるほどに凄かった。広いリビングには大きなソファーやテレビといった調度品。周りは高価なものばかりだというのに、居心地の悪さを一切感じさせない飾り付け。
ダイニングキッチンには当たり前だが冷蔵庫が置いてあり、中身も充実している。その他にも、二階へと繋がる階段があり、幾つか部屋があった。
こんなにいい場所を本当に一人で使ってもいいのだろうか。とりあえずオレはリビングに戻る。
「今日からここがオレの家か。悪くないな」
ふと、机の上にあるものに気付く。
そこにあったものは制服だった。基調となる色は純白で、黒いラインがあしらわれている上下対の堅苦しそうな制服。これが私立凪城学園の制服なのだろう。
サイズがきちんと合っているのか些か不安だが見た分には着れそうだ。
制服を元あった場所に置き、壁に掛けてある時計に目を向けると、まだ昼の十二時を過ぎたところだった。
普段なら寝るような時間帯ではないのだが、今日はなんだか無駄に疲れた気がする。理由は言わずもがな。
オレは側にあった大きなソファーに身を預ると意識を手放し、そのまま深い眠りに落ちた。
ということで、予期せぬ邂逅の第1号はヒロインではなく、まさかのヒロインの父親でした(´д`|||)
普通はヒロインが1番目にくるものなんじゃないだろうか?
自分で書きながらそう感じていました。
さて、予期せぬ邂逅の第2号は誰になることやら……




