またいつか一緒に【第三話】
今回は、設定事項を用意しました。以下の内容に添って、執筆お願いいたします。
リレー小説(第二弾)設定・注意事項
★全40話
★一話2000文字以上
★登場人物数制限なし
★ファンタジー要素無し
★SF要素無し
★地の文は主人公視点
★重複執筆可
★ジャンルはその他
★執筆予約制廃止(予約を入れてくださる著者様を拒みはしませんが、ある程度の執筆予約が入ってからの執筆開始はしません。執筆予約を入れられた著者様に関しては、活動報告に掲示させていただきます)
★執筆著者様は、執筆前にご連絡ください
★執筆投稿後、必ず御一報ください
★あらすじは、前話までの要約を明記
★全ての物語を聖魔光闇がお気に入り登録します
★後書きに執筆著者様募集広告を添付
よろしくお願いいたします。
一話:聖魔光闇先生 http://ncode.syosetu.com/n1590t/
二話:日下部良介先生 http://ncode.syosetu.com/n2296t/
三話:ふぇにもーる
車椅子バスケをした日から、早くも三週間が経とうとしていた。あの日以来、僕は昼間でもカーテンを締め切って部屋に篭り始めた。身体は動かない。隙間から覗く明るい日差しを少しでも浴びると、あまりにも自由すぎる周りの人間達が恨めしくなって僕の心は一層深く沈んだ。
あの日以来、最初の一週間は遥も毎日見舞いに家まで来てくれた。丁度、春休みだからファミレスのアルバイトが終わった後に時間が空くのだった。夜のほんの一、二時間しか僕の部屋に居なかったが、それでも誰かが尋ねてきてくれるだけでも嬉しく思った。
そんな遥も、四月から大学生になった。怪我をして一週間を過ぎた辺りから『新生活の準備があるから』と、昼間のアルバイトが終わった後に遊びに来てくれる頻度が減った。部屋の扉を叩く間隔が一日、二日、三日と徐々に開いてゆく。
かつての友だった連中はもっと薄情なものだ。あれから三週間が経とうとする現在、既に見舞いにも来なくなり、連絡などくれないに等しいものになっていた。僕の中ではもう、奴らは友達とは思っていない。それどころか、奴らに対する恨みの気持ちだけが日を追うごとに八つ当たりのように増してゆく。
けれどもこの自由の利かない身体では一人で何処かへ行く事も出来ないし、追いかけていって背中から一思いに刺してやる事も敵わない。だからこうして、専ら毎日のように部屋でコンピュータの画面に向かっている。数日経つ内に、ようやく左手でマウスを扱うのにも慣れてきた。
『復讐ノ奨メ』
画面には、今日もこのサイトの名前が映し出されている。真っ黒な背景に、陰鬱なドロドロとしたフォントで文字が書かれていた。いかにも今の気分を煽るような鬱々しいそのホームページには、全国の誰かに恨みを持った人間達の吐き溜めた言葉が浮かんでいる。
『憎い』『許さない』『殺してやる』『私の物を返せ』『死んでしまえ』
あぁ、今の僕の気持ちにぴったりと合致する言葉ばかりじゃないか。そうさ、かつての友だった奴らに耳元で思い切り吐き散らしてやりたい。
そんな中、つい先ほど掲示板に書き込まれたばかりの、こんな書き込みがあるのを見つけた。
『復讐の代行、請け負います。詳細はメールにて』
いかにも怪しい書き込みだとは思ったが、ついその文をクリックしてしまった。
『思い描いているような復讐をしてみたいと思いませんか。そんな時は私共にご一報を。貴方に代わって、私共が復讐を遂げて見せましょう。今まで憎いと思っていた相手が、見る見るうちに人生の地獄へと堕ちて行くのです。恐怖で家から一歩も出られなくするのもお手の物。痕跡を一切残さず、犯人が分からないまま四肢不自由に陥らせるのも簡単です。どうです、相手の人生はあなたの決断一つで左右される時が来るのです。まさに手籠に取れる快感を得られる事でしょう。
さて、具体的にはいくつかございますが、下記にございます復讐例をご覧になられてください。復讐の内容によってご報酬が変わってまいります。あくまでも例でございます為、復讐プランはこれに限った物ではございません。ご依頼者様の望む、細かな復讐プランにも対応させていただきます。
一、相手の命を奪う。復讐プランとしては最もシンプルなものでしょう。もちろん、私共にお任せいただければ犯人の痕跡など一切残しません。ご依頼者様に被害が及ぶ事も一切ございません。犯人の存在しない、完璧な自殺に追い込む事も可能です。
ですがこの復讐は、相手の苦しみが一瞬で終わってしまうために復讐としては生ぬるい部類に入るでしょう。そのため、ご報酬は最もご利用しやすいリーズナブルなものに設定させていただいております。詳細はメールにて。
二、相手の財産を失わせる。あらゆる手段を用い、法的に合法な形で相手を破産に追い込む復讐プランです。この復讐プランのポイントは、失わせるのは現金や不動産、株などの財産に限った事であり、それによって相手に広がる二次的被害は含まれておりません(例、家族の離別。社会的信頼等)。あくまでも財産にポイントを絞った復讐でございます。くどいようでございますが、あくまでも合法的に復讐を致します為、ご依頼者様に被害が及ぶ事は一切ございません。詳細はメールにて。
三、相手を犯罪者にし、社会的立場を失墜させる。あらゆる合法的な手段を用い、相手を重犯罪者に仕立て上げる復讐プランです。重い刑期と同時に、社会的な失墜を期待できます。相手が犯罪者化する事による二次的被害を最小限に留めるため、人命が関わる犯罪は避ける事になります。復讐が成功した場合、相手に社会的苦痛を最大限与えられる可能性がございます。ですがその分リスクも高く、十分な効果を期待できない場合もございます。くどいようでございますが、あくまでも合法的に復讐を致します為、ご依頼者様に被害が及ぶ事は一切ございません。詳細はメールにて。
四、相手を身体的・精神的に追い詰め、苦痛を与える。あらゆる合法的な手段を用い、相手の肉体・精神を人生に支障をきたす段階にまで極限に破壊します。命までは奪わずに苦痛だけを与え続ける、最もご依頼者様の復讐欲をご満足させる事が出来るプランでしょう(例、相手を身体不自由に追い込む。監禁。性的暴行。ストーキング。家宅侵入等)。詳細はメールにて。
尚、ご報酬は現金に限った物とは致しません。対価に見合った物をご報酬としていただく事で、私共は常にご依頼者様の心強い味方となります』
その書き込みを、一心不乱に僕は見ていた。心を揺さぶられているのは確実であった。恐らくここに書き込まれているのは闇の業者の連絡先。犯罪のプロ。復讐屋さん。この先に進めば、恐らく僕はもう戻って来れない。今はまだまともだ。けれど。
しばらくぶりに携帯電話の無機質な着信音が部屋に響いた。気だるいが、少し埃を被り始めていた携帯に手を伸ばす。メールだった。口梨 来栖の名前がそこにあった。あぁそういえばあいつも四年生大学に通い始めたんだったな。何々。
『やっほー、久しぶり。怪我の具合はどうだ。俺、大学行って早速彼女できちまった。今度紹介しにお前ん家行くから』
携帯など開かなければ良かった。着信など無視すれば良かった。添付されていた写真には、最近流行っている大人数アイドルグループの先頭で踊ってでもいるような、人形のように可愛い黒髪の女の子が奴の頬にキスしている写真であった。
ニキビだらけの来栖の顔が、写真越しに汚れて見えた。僕が身体不自由、一人で出歩く事も出来なくなったこの現状を知っていて、こうやって彼女の写真付きでわざと自慢してきたのか。
返信するのも馬鹿馬鹿しい。奴のために文字を打つ価値など無い。かろうじて頭の中のどこかで、奴が友達だと思って留めていた理性が一瞬にして吹っ飛んだ。頭の中で血が沸騰し、湧き出てくる底無しの憎しみが今の僕の全てだった。
僕の左手は、自然とマウスを再び握っていた。画面に出ている文字を食い入るように見た。揺れるカーテンの隙間から伸びる日差しが鬱陶しい。
「四番だ」
自分以外の幸せな者など壊れてしまえばいい。汚く撒き散らして壊れてしまえばいい。僕に不快感を与える者など、僕の世界の敵なんだ。
「報酬は、何がいい」
感情の赴くままに、僕は業者にメールを送ってしまった。もう戻れない。戻りたくもなかった。さぁ、復讐の始まりだ。
これはリレー小説です。
リレー小説とは、複数の著者様による合同執筆(合作)の事をいいます。
前回同様、執筆して頂ける著者様は、事前にご一報、そして投稿後にご一報ください。
よろしくお願いいたします。