第八嚢:この感情につける名を未だ知らない
内容:一人称私。幼馴染と姉。一応ファンタジー。ラストを後で書きなおします。短編だからって展開が速すぎますよね。
今、書き直しています。
本当は全部の話を書きなおしたほうが良いのですが、この話を曝しているのが一番恥ずかしいので優先して書きなおさせていただきます。
今週中にも更新したいと思います。
それと、小説削除のガイドもみたのですが、不注意で頭も悪いせいかこのページの削除の仕方がわかりません。
図々しいお願いと思いますが、知っている方がいらっしゃれば教えてくださると助かります。
それともこれは削除できないものなのでしょうか。 朝目が覚めると同じベッドの上に美少女が乗っていた。
私の双子の妹である。
お姉ちゃんおはよ、といいながら私の胸を堂々と揉んでいるが、何度確認しても私の血のつながった実の妹である。
鼻血を垂らして、息を荒げ、せっかくの美貌を無駄にしているが、毎日鏡の中で見る顔と瓜二つだから間違いようもない。
私はとりあえず妹の胸を鷲掴みにし返し、ひゃっだかきゃっだか可愛らしい高い声を上げて妹が力を抜いた瞬間に思いっきり体を起き上がらせた。
妹はゴロゴロと音をたてて転がり、部屋の壁に体をぶつけ、動かなくなった。
私は妹が気を失っている間に制服に着替え、居間へと向かう。
居間には既に幼馴染がいた。
わけあって同居しているわけだが、ヘタレだから私たちに手を出すことはないと両親揃って断言されている男である。
私は男と挨拶をかわし、食卓につく。
そこにはすでに食事が並べられており、私たちは二人揃って手を合わせ、いただきますと言った。
もくもくと朝食を食べていると、ようやく目を覚ました妹が居間へと姿を現した。
そして日課となった怒声を男に浴びせる。
私と男は慣れたことなため、右から左に聞き流し、朝食を食べきる。
私たちはそろって食器を片付け、鞄を持ち、玄関へと向かう。
私の腰に手を回していた妹が邪魔だったので手刀を繰り出し、倒れた妹を残し、学校への道を歩いた。
男とは同じクラスのため、共に教室の中に入ると、級友たちに挨拶と同時に囃し立てられる。
いくら否定しても無駄なことは長年の経験から学んできたため、気にせず自席へ座る。
視界の片隅で、男が他の男子生徒たちに笑いながら殴りかかられているのを見る。
毎日の光景である。
その後、お姉ちゃんなんで私を置いて行ったの、と遅刻ギリギリに妹が教室に入ってきた。
わめく妹を無視しながら、鞄から取り出した文庫本を開く。
見かねたのか、隣の席に座る男が苦笑しながら、妹をなだめる。
幼馴染のため、私と妹の間の仲裁役をすることが男は多かった。
そんな男に対して妹が八つ当たりするのも同じくらい多かった。
私は罵詈雑言を吐く妹が少し落ち着いたのを見計らい、声をかけた。
堂々と教室に入ってきたが、妹は私とクラスが違う。
そのため朝のSHRが始まる時間が過ぎていることを示唆すると、あわてて教室を出ていった。
それと同時に、男と共に深いため息を吐く。
級友も担任も毎朝のことなため、騒ぎもせず、私たちの一角を無視するように既にSHRを始めていた。
私は隣の男を見て、ポケットにいつも入れているハンカチと絆創膏を渡した。
男はそれを受け取り、かすり傷から零れる少量の血を拭き、絆創膏を貼る。
そのままハンカチをポケットにしまった。
私は担任の出欠確認に返事を返した。
昼休み。
私の机の上で隣の席に座る男と共にお弁当を開く。
同じクラスのこともあるし、弁当箱を二つに分けるのが面倒だと言って男は一つの大きな弁当箱を買った。
私たちはいつものように同じ弁当箱で昼食を味わう。
男の料理の腕前は高校生男子には珍しく一流に近いものがあると贔屓目かもしれないが思っている。
そのため、食事に関しては男に全般的に頼っている。
その代わり掃除や洗濯など他の家事は私がすることになっている。
私は男に迷惑をかけていることを意識していた。
男に引け目を感じていたから、できることはやっておきたかった。
ただ、私は料理の才能が皆無だった。
お弁当の中のある一点を見て、私は箸をとめた。
私がリクエストした野菜炒めがまだ半分残っていた。
男は人参やピーマンなど野菜が嫌いという意外な弱点があった。
私はそれを見て、箸でつまめるだけつまんで、男の口元に運ぶ。
苦々しそうな顔をした男に野菜を食べる大切さを述べる。
私が引かないことを分かっていたのか、男はしばらくして、決意を固めたように口を小さく開いた。
私は男の口に野菜炒めを運び、手元にあったペットボトルを渡した。
男は涙目になって野菜炒めを食べ、渡したペットボトルのお茶で流し込んだ。
それに満足した私だったが、復讐のように男の箸につままれたカボチャの煮付けを見て、固まる。
首を振って、拒否を示したが、男は笑ったまま、私の口元にカボチャの煮付けを押し付けた。
渋々食べたカボチャの煮付け。
私は先ほどの男と同じようにお茶で流し込む。
そして口直しのように大好物な甘口の卵焼きを頬張る。
自然と零れる笑み。
それを見て男も笑みを返した。
放課後、男と一緒に帰宅しようとすると、男が知らない女生徒に呼びとめられていた。
とりあえず私は教室に残り、男を待つことにした。
それを見て、クラスの女生徒たちが騒ぎ出す。
曰く、隣のクラスの美少女は男が好き。
曰く、彼女は他人のものだと更に燃える。
曰く、優しい性格のため男にはファンが多い。
曰く、だけど私という恋人がいるため男に告白する人間は少ない。
私は何を言おうか迷った。
そもそも私と男はつきあっていない。
だから私としては男がその女生徒と付き合っても構わないと思っている。
むしろ、そのほうがいい。
男は私たち姉妹から離れたほうがきっと幸せになれる。
家が隣同士ということもあって、生まれた頃からずっと一緒にいた幼馴染。
私と妹の間に挟まれて、振り回されていた幼馴染。
気の強い妹に殴られても、方向音痴な私が何度迷子になっても、苦笑しながら助けてくれた。
そして、男は私たちによって人生を大きく狂わされた。
小学5年生の頃、男が交通事故にあって大怪我をしたのは私たちのせいだった。
はじまりは、妹を鬱陶しく思った私が男を連れて、二人っきりで公園に遊びに行ったことだった。
その帰り道、家の近くで待ち構えていた妹が激昂して男をつきとばした。
家の目の前には普段は車の行き来が少ない道路。
だけど、その時に限って一台の車が走っていた。
妹は男を殺そうとしたのだ。
血に染まる男を見て、私は悲鳴をあげた。
頭の中が真っ白になって、男のもとに駆け寄り、泣くことしかできなかった。
そして、気付けば病院にいた。
私たちは大人たちから叱責されたが、当時の記憶はおぼろげだ。
ただ覚えているのは眠る男の姿。
私はずっと男の傍にいた。
男の両親からなじられ、どんなに叱責されて、病室から追い出されても、少しでも私は男の傍にいたかった。
学校にも行くつもりがなかった。
両親から力づくで学校に連れて行かれても、私はすぐに学校から逃げだし、男の病院を訪れた。
そんな日々が続いて、男が目を覚ました。
私には一年のような気がしたが、実際は一週間もすぎていなかったと思う。
私は泣いた。
男はいつものように優しく私の頭を撫で、笑うだけだった。
そんな男に待っていたのは、歩くことができないという未来を示唆する医者の宣告だった。
それでも男は笑っていた。
いつものように笑ってみせた。
私は毎日家と病院を往復し、妹を両親に監視させるよう頼み、男のリハビリに付き合った。
学校に通わない私に男は通学を約束させたため、実質リハビリに付き合う時間は少なかったが。
一緒に勉強したり、遊んだり、学校での話をしたり、私たちはできるだけ事故前のように過ごそうとした。
そんな生活を続けて半年がたったある日、男は退院した。
リハビリが順調に行き、長い間歩き続けることも走ることもできないが、松葉杖をついて男は歩けるようになった。その松葉杖も少しして、使用しなくなった。
その頃になると、男の両親も私のことを許してくれるようになり、更に事故後の私への態度を謝罪までしてくれた。
だが、私は許されたくなかったし、自分を許すこともできなかった。
私はその行為を自己満足と知りながらも、男の幸せを見守るためと称して、事故の前以上に男の傍にいるようになった。
男はそんな私を許してくれた。
最初はそれで満足できていた。
だけど徐々に私はこれが本当に男の幸せなのかと疑問と絶望に襲われるようになる。
むしろ私がそばにいないほうが男は幸せになれるんじゃないか?
そう思っていても、私はそれを男に聞く勇気がなかった。
だけど、そろそろ潮時かもしれない。
最終進路希望調査のプリントを見て、私はそんなことばかり考えていた。
結局男は告白してきた女生徒と付き合うことはしなかった。
夜。
寝つきの良い妹がぐっすりと寝入ったのを見計らい、一階にある男の部屋に足を向けた。
週に何回かの私と男の秘密。
この行為がいつから始まったのかはよく覚えていない。
気が付いたら始まっていた。
ただ両方の両親が海外出張に行くことになり、回数が増えたのは確かだった。
それでもいつも男は優しかった。
私は男の優しさに甘えることしかできなかった。
その日も男はいつものように優しい笑みを浮かべながら、私を部屋に迎え入れた。
だけど、いつもと違うところが一つだけあった。
男は何かを手に持っていた。
不思議に思った私は男の差し出したものを見て、血の気が引いた。
妊娠検査薬。
私はしばらく生理が来ていないことを今さらながらに気付いた。
愕然とした私に待っていたのは、最悪な結果だけだった。
男の幸せを望んでいたはずの私の行動は全て裏目にでてしまった。
ようやく男を解放してあげられると思ったのに、どうしてこんなことになったのだろう。
男の人生そのものを強く縛りつけることに絶望を感じた。
だけど。
だけど、どうして。
どうして、私は泣きながら笑っているのだろう。
潤む視界で見つめる男の笑顔は何故か幸せそうに見えた。
初恋で、ずっと愛し続けた男に抱きしめられながら、私はどうにもならない感情に戸惑いつつ、それでも男の背中に手をまわした。
追記:妹はオープンにヤンデレ、男はむっつりヤンデレ。