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詩集

桜の木

作者: ロースト

桜に妖精が宿るというのなら、

なぜ悲しみを生む。

贄として、嘆きを好む。


美しく咲き誇る木に不相応の不吉に連れていかれた、故人。

生々しく、

赤黒い液体が吸われていく。


塗れた根本がむせ返るほどに芳しく死臭を放つ。

人の頬の紅潮を思わせる色合いの、ふんわりとした花びら。

知らず現実感が薄れていく。


過去に捕らわれず、

現在に留まれるのは愛しい人の痛み。

流す涙を止めることも出来ず、

感情か剥がれ落とされるのを見ているしかできない。

その無力が歯痒く、さらなる血を流す。


所詮は他人で干渉は厭われる。

この距離を隔てた遠い場所から見つめるしかない。


まるで祈るように、縋るようにその花弁見つめて、

君が何を思うのか。

俺にはわからない。


この景色を見続けることに、罪悪感や痛みを、猜疑を覚えても。

視線を逸らすことはできないから。

せめて、レンズ越しで。

また明日、会うときには偽りの笑顔の交差があることを知るから。


痛々しさに、俺の心が締め付けられる。

それでも、明日は俺も仮面を被るから。

偽りでいいから、その笑顔を俺にください。


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