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漂流した冒険者  作者: 三幸奨励
絶海孤島編
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第2話 漂流した冒険者

目を覚ましたとき、砂の感触が違った。


体を起こす。隣にさっきの魔物の肉塊が転がっていた。波に引きずられてきたらしい。あの巨体が、妙にちっぽけに見えた。


見渡す。森。見たことのない樹木。遠くに山。港も、町も、何もない。


『現在地、既存地図と照合不能』


「……は?」


『該当地域、認識外』


——認識外。


じわじわと染みてくる。地図にない場所。誰にも知られていない場所だ。


森の奥から視線を感じた。木陰に小さな影がある。狼のような魔物で、身は一メートルもなかった。ひどく怯えていた。


「に……肉を……」


——声?


「……喋れるのか?」


『取得スキル《波長理解》によるものです』


倒した魔物から少し切り分けて差し出した。狼は一歩、また一歩と近づいて、静かにそれを受け取る。


「ありがとう。恩に着る」


そう言って、森へ消えた。


「さてと……」


ここがどこで、なぜここにいるのか。帰れるかどうかも分からない。


でも今は——


「……とりあえず、こいつ食うか」



夜、焚火を囲んで座り込んだ。


三度も僕を殺したあの化け物は、今や目の前で焼かれている。焼けた肉を一口かじると、重みが口に残る。体の奥に温かさがじんわり広がった。


頭の中で今日のことを整理した。


《死に戻り》——死ねばその場で復活する。ただし時間は戻らない。死因を理解していないと発動しない。同じ死因では二度目がない。


「……思ったより怖いな」


『偶発的な即死の場合、復活は不可能になることがあります』


「初見殺しが一番危険か」


苦笑した。ゲームみたいだが、痛みは現実だ。死ぬたびにあの冷たさが喉に残る。


翌朝、森の中を慎重に歩いた。《波長理解》を使うと、木々の奥に七匹の気配があった。今は戦うべきじゃない。引き返した。


開けた丘に、黒い石柱が立っていた。触れると微かな振動が伝わってきた。


『高濃度魔力反応です』


魔物は濃度の高い魔力に引き寄せられる。この島には、そういう場所が多いのかもしれない。


山の方角を見やると、空間の裂け目のような揺らぎがあった。視線がこちらを見つめている。でも、襲ってこない。


「あれは……今は無理だ」


理解してから死ね。理解してから転写しろ。それがこの力の使い方だ。


森の奥で昨日の狼を見つけた。


「昨日の肉、美味かった?」


狼はしばらく黙っていた。それからぽつりと言った。


「ここは、落ちた者の島」


「落ちた?」


「選ばれ、捨てられ、流れ着く場所」


それだけ言って、森の奥へ消えていった。


落ちた者の島。


「……帰れるのか、僕は」


『不明です』


即答だった。希望もなければ保証もない。


山を見上げた。あそこに、この島の答えがあるのだろう。


「この島で、生き延びる」


「……いや」


生き延びるだけじゃない

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