水無月に浮ぶ
静かな水無月だ
雨音が散るように静かに降る
けれど不思議とこの静かな夜空の向こうには
明るく澄み満ちてゆく月があると想えたりする
雨音は鼻歌まじり
あのひとの微笑みが見え隠れ
(洗い物をしているわ
今日は手洗いしているの)
あのひとの手が丸い器を撫でてゆく
わたしの心も丸くなる
雨音は花唄まじり
水無月に浮かんだ月は雨を掬ったような微笑み
きっと、きっと、そうだね、
海の底からだって 仄かに香るように灯ってみえるんだ
夕焼けに散る雨粒がさくらいろの音符を弾かせて流れているなんて
そんな気持ちになるんだ
いいじゃないか
語り掛けてくれるひとときくらい
そう想って睡ろうじゃないか
水無月にあのひとが浮かべてくれた満月だよ