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入学前なのに劣等生と呼ばれるんですが/5

 買い物袋とぴったり必要な物を買えるぐらいのアウルムを持たされ、《グロウリー大市場》まで歩く。


 


 しかし、さっきのスキルは何だったんだ?


 バグ……とか言ってたっけ。


 あれが僕の特殊スキルなのか? 


 いろんな物を浮遊させるのが僕の能力なのか?


 一応特殊スキルは手に入れたものの、これをどう生かすのか、そもそも何に使えるのか先が見えてこないな。


 


「おい見ろよ、あいつが噂の『劣等生』だぞ」


「すげぇ、本物だ」


「特殊スキルも持ってないらしいぜ」


 


 グロウリー大市場までの道のりで、そんな噂している声を耳に挟んだ。


 そういえば、もう学院生はもう帰宅時間だったっけ。やけに自分の話が聞こえるワケだ。


 今更スキルの話を話題にされても、弁明しようとも思わないし、何も感じなかった。


 しかも今は《バグ》があるのだから、そんなことを気にするのも野暮ってもんだろう。


 


 そう考えようとはしたが、うざったいものはやっぱりうざったい。僕は耳を塞いでグロウリー大市場まで歩いた。




「必要なのはパンと、家畜の餌だけか。これぐらい明日でもいいってのに」


 


 爺さんの愚痴を垂れ流しながら、頼まれた物をポイポイ袋に詰めていく。


 買い物ほど面倒で暇なことはない。さっさと買って帰ろ。


 1キュープラムの誤差も無く寄越されたアウルムで買い物を済ませ、市場のテントから出た。





「ぐわあああぁぁ!」


 


 衝撃展開、僕の元へ筋肉質な男が飛んできた。




「うえああぁ?!」


 驚きながらも全力で避けた。




「嫌だ! やめてくれ! 俺はまだ、死にたくない!」


 


 震える足取りで、市場のテントに隠れようとした男の前に、一本のナイフが突き立てられた。




「はいはい、邪魔だからどいててね」


 


 ザクンッ!!


 命乞いも虚しく、男の胸にはナイフが突き刺さった。男は断末魔を上げたあと、ぐったりとして動かなくなった。


 あまりにも一瞬の出来事。


 僕は驚く暇もなかった。




「ん、君、この人と知り合いなの?」


 


 マントで顔を隠した人物から、話しかけられた。


 僕は首を横に振る。仮に知り合いだったとしても、僕は同じようにしただろう。




「僕はウルン。実は、人捜しをしてる最中なんだよね。それなのにこいつがついてく


るから、うっかりやっちゃったってワケ」


 


 ウルンと名乗る人は男をべしべし叩きながら笑う。


 ウルンが完全に頭おかしい人だって事は分かる。


 早く逃げないと、自分もあんな目に……。


 人生最大の固唾を飲んだ。


 殺されるかもしれないのに、何故か脚が動かない。爺さんの時は機敏に動けていたのに……。




「そうだ! 君、この人を知らないかい?」


 


 ウルンはおもむろに懐から絵を取り出した。


 


 ……そこに描かれていた絵は、完璧に自分の特徴を捉えていた。


 確実に死んだ。標的になっているのは自分だ。


 多分ウルンはバウンティハンターかなんかで、賞金首になっている僕を捕りにきたってとこだ。


 思い当たる悪行はないが、ウルンはそんなこと知る由もないだろう。バウンティハンターは執行人スイーパー見習い、もしくは誰彼構わず斬りつけたい奴が殆ど。ムカつくやつに復讐するためにバウンティハンターを名乗る人もいると聞く。


 せっかくスキルも手に入れたのに……。


 思わず諦めの涙が溢れた。




「君……、この絵の人と似てるね」


 


 速攻で触れてほしくないことに触れられた。




「君、だったんだね」


「……っ、そうです」


 


 夕焼けと静寂に包まれる二人。


 何分にも続く静寂の中、ウルンがようやく口を開いた。




「君の実力を試したいんだ。僕の《決闘》に付き合ってくれない?」

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