楽しい職場
――――ジリリリリリリr…………。
朝だ……。
けたたましい目覚ましの音が聞こえる。
ああ……うるさい……鬱陶しい……。
時刻は七時、二度寝するわけにもいかず、体を起こす。
「ああー……めんどくさい……だるい……しんどい……。」
そんなことをついぽろっと言葉にしながらも、朝の支度を済ませ、職場に向かう。
「おはようございまーす。」
「おはようー。」
同僚の何人かが返答をくれる。
ああ、めんどくさ……働きたくないわ……。
そんなことを考える。
「おはようございます!瀬濃さん!」
可愛らしい声でそんな挨拶が聞こえてきた。
目を合わせると、満面の笑顔だ。
俺はなんだか嬉しくなる。
「あ、ああ、おはよう。相野さん!」
精一杯元気に返したつもりだが、上手く返せただろうか?
「今日も頑張りましょうね!」
「ん?……ああ……そうだな……頑張るか!」
仕方ない。
相野さんにそんな風に言われたら、頑張るしかないじゃないか!
といっても仕事内容はいつもと変わらず……。
午前中。
……品出しをして、それが済んだら、お客様対応やらレジ打ちやら接客だ。
休憩を挟んで午後。
「あの……瀬濃さん?」
相野さんに呼ばれた。
「ちょっと聞いてもいいでしょうか?」
もちろんだ。
どんなことでも聞いてくれ。
俺は包み隠さず、全て答えるさ。
「ん?どうかした?」
「えっと……この在庫の数、おかしくないですか?」
「いや、これはいいんだよ。そこにある在庫とは別に、倉庫にある在庫も数に計上されてるから、これであってるんだ。」
「あ、そういう事だったんですね!ありがとうございます!」
なんて嬉しいありがとうございますなんだろう!
もう、それだけで俺の今日の一日はいい一日だったよ!
「おつかれさまでーす。」
そんな一日ではあったが、いつも通りの仕事を終わらせて、いつも通り帰宅する。
今日も特別なことは何もなかった。
いや、正直ちょっといいことはあったけど……。
そんなことを考えながら、食事も風呂も済ませて眠りに就く。