世界の仕組み
向かうのは、集会所。
ゲームなんかで言うギルドやセンター、あるいは、クエストカウンターとでも言ったところだろうか。
人によって、表現方法が違うこともある。
こっちの世界の住人は、各々好きな呼び方で呼んでいる。
要は意味さえ分かればいいのだ。
他に同じような役割を担っている場所もないので、ギルドや集会所と言えば、皆ここを思い浮かべることができる。
ギルドに着き、早速3人で掲示板の前に立つ。
「……これなんかはどうだ?」
一緒に来た2人に問う。
今回の目的は、日々暮らしていくのに困らない程度に、適度に稼げればいい。
そんな目的のつもりで、ギルドに来た。
「……どれですか?」
ベルに聞かれたので俺は答える。
「ゴブリン退治。」
ミオも確認する。
「いいと思います。」
内容としては、ここから少しだけ離れた町外れの森に、ゴブリンが生息しているので倒して来て欲しいというもの。
ゴブリンといえば、下品で汚いイメージだ。
大抵の女性は嫌がる。
だが、今回は必要最低限倒してくれば十分な事と……ミオもベルも決して弱くはない。
また、俺の事を信じてくれてもいる。
そんなわけで、受ける依頼はあっさりと決まり、さっそく森へ向かう。
この、依頼という表現に関しても、人によってはクエストやミッション等と好きな呼び方で呼んでいる。
こっちのこの世界は、良い意味で割と自由なのだ。
この世界に関してだが……この世界は、アースガルドと呼ばれている。
地球と比較するなら、約7倍程度の大きさがあるらしい。
それにも関わらず、あっちに比べて、重力も少し弱い。
つまり、疲れ難く、素早く動くことができ、少し高く跳躍することも可能だ。
そんなにでかい世界だと、環境とか物理法則とかも滅茶苦茶じゃね?
そんな事を理論的視点から言う人間もいるかもしれないが、それも含めて自由なのだ。
そもそもの世界の造りが違う。
そうなのだから仕方がない。
少なくとも、今俺がいる此処は確かに存在するし、自然環境の影響で酷い目に遭ったりもしていない。
まさにご都合主義。
世界の存在すらも自由とは素晴らしいな。
ちなみに、通貨の単位はガルドという。
アースガルドに引っ掛けてそうなったのか、偶然そうなったのか、実は通貨の呼び方が先だったのか、その辺の細かい事は俺には分からん。
さらについでなので……魔物に関してもいうなら、魔物という呼び方に関しても、人によっては表現方法が違う。
魔物、モンスター、エネミー、怪物、化物……。
他にも、少数派だが、イマジンなんて表現するやつもいるとか、そんな場合もあるとかなんとか……。
まぁ、それだけ色々な魔物が居るという事でもある。
食用としても扱われるモンスターや魔物もいる。
そりゃ確かに食べる事を考えると、怪物とか化物なんて表現をするのは、少々はばかられるだろう。
そんなわけで、魔物の呼び方も自由なわけだ。
要は意味さえ分かればいい。
さらにさらに、こっちのこの世界の魔物は、生殖本能が旺盛だ。
どういう意味かというと……まず、産まれる数が段違いだ。
ピーグルと呼ばれているあっちの世界の豚のような魔物がいるのだが、通常、豚は半年の間に10匹程度子供を産むといわれている。
だが、このピーグルという魔物は、一ヶ月ほどの間に、10匹程度産む事が可能で、成長も早い。
気性は穏やかで、見た目は可愛いピンク色をしている。
その可愛さから、食べることを躊躇う人間もいるが……生きるためだ。
仕方がない。
そして何よりも……美味いのだ。
とても美味い。
こいつさえ居れば、他に食べ物なんか無くてもいいんじゃないかってくらい肉が美味い。
実際、家畜としても飼われていて、主食になるような米や麦と合わせて農業をしているやつなんかは、ほぼ完全に自給自足すら可能だろう。
実は、今朝ミオの作ってくれたシチューにもこいつの肉は入っていた。
ミオの料理スキルもあってなのか、とても美味かった。
いただきますとごちそうさまは忘れない。
ただ、この魔物の生殖本能が旺盛というのは、このピーグルに限った話だけではない。
他の魔物も同様で、それ故に数が増えすぎた魔物は、定期的に討伐の依頼が出されているし、その依頼が尽きる事もない。
なんであれ、この世界の魔物は一部に限った話ではなく、生殖本能が旺盛なわけだ。
また、そのおかげで食料の面から言っても、特別な贅沢さえしなければ困ることはないので、こっちの世界は本当に平和なわけだ。
そして、この平和な理由としては、もう一つ理由がある。
人間同士が搾取をし合う必要が無いことは言うまでもなく、ましてや、人間同士で殺し合う事もそうそうない。
その理由としては、人間同士で殺し合いをした場合、殺害したり、相手を傷つけた側には、大きなデメリットがあるからだ。
ゲームなんかで言うところの、他者に対しての自身へのデスペナルティー……。
いや、そんな甘いものではない……。