ミオとベルと朝食
「おはようございます。」
朝食を取るために食卓へ向かうと、食事を準備してくれていた彼女が、すぐに挨拶をしてくる。
俺の事を起こしに来てくれた少女も、彼女の手伝いをしながら俺を待ってくれていた。
まったく、2人とも今日もかわいい……。
この家には、俺を含め、3人の人間が住んでいる。
まずは、この俺『アイラ』。
見た目は、特にイケメンでもなく、もの凄く優れた能力もない。
勉強も出来る方ではないが、周りの平均的な人間に比較すると、少しだけ頭の回転は速いかもしれない。
ただ、そんなものは、他の人間と比較する事なんて出来るものじゃないので、言い代えるなら……少しばかり考えるのが好きな人間、とでも言ったところだろう。
まぁ、そんな些細な違いはあるかもしれないが、要するにどこにでも居る普通の人間だ。
また、髪型も極端に短かったり、長かったりもしない。
さらには、よく女性に好かれると言われる三高でもない。
身長は、平均と比較すればほんの少し高いかもしれない。
だが、高収入や高学歴などでは無い……と、思う。
どちらにしても、この点に関してはこっちの世界において、何の関係も無い話なわけだし……。
まぁ、そんなどこにでもいる普通な俺と、そんな俺を慕ってくれているあとの2人の住人は、俺とは性別の違う2人だ。
1人は、平均的な女性の身長か、もしかすると、彼女もやや高めの身長かもしれない。
太ってもいない。
むしろ、スタイルは良い方だろう。
彼女は『ミオ』。
紫色の髪が綺麗な女の子だ。
まるで、月明かりに照らされた桜のような、紫色を帯びた艶やかなセミロングの髪で、漢字で書くのであれば、美桜と表記するのが最も適切だろう。
性格は礼儀正しく、その見た目通り、大人しく奥ゆかしい女の子と言える。
だが、一緒に暮らしている俺だからこそ分かるが、彼女は、心に少しだけ闇を抱えている事を俺は感じている……。
まぁ、それはこれから見え隠れする事もあるだろう……。
このミオが、朝食を作って待ってくれていた女の子だ。
そして、もう1人の住人は、身長は平均的な女性よりも少し……いや、かなり小さめだろう。
あっちの世界の公共交通機関を利用するような事があれば、おそらく、半額で乗ることも不可能ではない。
左右で2つ結びにされた、腰ぐらいまである長く青い髪が、彼女が動くたびに揺れる。
この少女『ベル』も、性格は大人しい方だ。
ただ、ミオに比べると、ベルの方が見た目通り少し幼い印象で、ミオよりも無邪気さが目立つ。
その反面、見た目ほどの騒がしさは無く、時々大人のような表情もするのだ。
だが、ベル自身は、そんな幼い見た目を気にしてもいる。
とにかく小さいのだ。
色々と小さい……。
男であれば、誰しもがほぼ必ず目が向いてしまうであろう胸も……そう、小さいのだ。
だが、俺が見る限りでは、特別小さいと言うよりは、見た目相応で、発展途上とも言えるだろう。
しかし、彼女自身は、自分の胸のそれが小さい事をとても気にしている。
そこがまた可愛くもあるのだが……。
彼女が気にする理由としては、ミオのそれが大きい事もまた相まっているのだろう。
そう!ミオのは大きいのだ!
大事な事だからもう一度言おう!
ミオのは大きい!!
とは言っても、大き過ぎるわけでもない。
きっと、直接聞けば、ミオは恥ずかしがりながらも、サイズを答えてくれるだろう。
だが、聞いたことはない。
それは、きっと彼女は、太っていると思われたのでは?等と気にしてしまうタイプだからだ。
これは、直接聞くわけにはいかない。
まぁ、個人的には、大きかろうと小さかろうと、好きな人を好きなことには変わりないわけだが……。
そんなことを考えて彼女達に見惚れていると、せっかく俺が起きてくるのに合わせて朝食を用意してくれたのに冷めてしまう。
ミオに怒られてしまう。
そんなわけで、色々な事はあるが、この家で3人、日常の日々をわいわい楽しく送っている。
「ごちそうさま。」
「お粗末さまです。」
朝食のメインは、シチューとパンだった。
今日は3人で出掛ける約束もあって、ミオは栄養価の事もよく考え、口当たりの良い食事にしてくれた。
朝からこうも手間を掛けたものを作るのは、きっと大変だっただろう。
食事を終え、3人とも支度を済ませ、外出をする。