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董卓の娘  作者: 神奈いです
第一章 黄河の北で
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算盤

どうも、大悪役トウタク令嬢むすめはかなげな美少女の董青(トウセイ)ちゃんです。



董卓パパが物凄く怖かったです……

あ、はい。私も悪いと思ったので素直に謝りました。


確かに娘にいきなり魔王だと思われたら嫌だよね。

本人を見る限り悪役っぽさないし……


甘んじて罰を受けました、お尻痛い。



「まぁあれはお嬢様が悪いですわ」


と声をかけてきたのは令嬢ではなく、関西カンセイ言葉の郭汜(カクシ)司馬たいちょうです。

すらりとした長身とこれまた長い手を激しく振って身振り手振りで主張します。


主公とのさんは敵には激しく、部下には優しい、まさに真の英雄ですわ」

李司馬リーたいちょうも言ってたけど、父上ってそんなにすごいの?」


董卓と言えば武勇はそれなりで、それ以外はだいたい暴虐の限りを尽くして政治も放置してる話ばっかりだし、その武勇のすごさも大体が呂布リョフや配下の騎馬隊の活躍で本人は遊び惚けてる印象が……。


「そらもう、馬に乗っては千里を行き、騎射は右や左に百発百中ってなもんですわ。戎狄いみんぞくにも連戦連勝。しかも勝っても功を誇らず、朝廷の恩賞はすべて部下に配ってひとりじめもなさらしません。

普段の生活もご質素、その分を名士との交流や部曲ぶかにお使いですし」


はぁ、なんか全然印象が違いますね……それと。


郭司馬カクたいちょうは父上がお好きなのですね」

「へ?いや、いやワイはほら、能がないんで。主公とのさんが出世するなら少しでもお力に成れたらええなとだけ」

なんかオッサンが照れて鼻をかいてますが……赤くなるな赤くなるな。



「馬鹿を言うナ!!貴様は主公とのから絹を貰った時ニ「儲かるからしばらくお世話になろかな~」、などと言ってたではないカ」

御屋敷の中庭にちょっとなまり気味の李傕(リカク)司馬たいちょうのデカい声が響きます。


「あん?オドレも「この将軍の元なら出世できそうダ」なんて言うてたやないか!」

「そうダ、それで何が悪イ。強い首領を選んで戦うのが出世の道ダロ」

いばるないばるな。



まぁ、純なのか不純なのか分かりませんが、董卓パパは部下の人望はあるようです。


なんか李傕(リカク)さんと郭汜(カクシ)さんの二人がにらみ合いを始めちゃったのでなだめます。

確かこの二人って董卓パパの死後に政権を取るけど仲間割れして衰退しちゃうんですよね……


「まぁまぁ、二人とも将来は長安の都でナントカ将軍になるんですから。仲良くしてください、仲間割れは良くないです」


「えっ?」「えっ?」



……あ。


「巫女のお告げやー!!」

「ヨシ!やる気にナッタ!!」


あわわ、また余計なこと言っちゃったかも……

話題、話題を変えよう!!



……ん?リーさんがごつい身体を丸めて何かちまちま石を転がしたり竹簡たけのいたにちまちまと字を書いています。

太い指で石を溝にハメようとして、あ、転がってった……


「ぐぐぐ、やる気にナッタのに、算盤ガ?!」


なるほど、これは算盤そろばん……の先祖なんですね。

溝の並んだ板に石をいれて、何か一生懸命計算しているようです。


落ち着いて石を拾って、溝に並べなおして……

ガタンと音を立てて板が飛び跳ねました。


不器用すぎるでしょ?!貸して?!!


「いえいえ!?これは俺の仕事デ!!!」

「はいはい、あわが蔵に324こく、おとといの倉入れが44石2、昨日の倉入れが32石8斗で、蔵出しが41石2斗……。

1石って何斗だっけ?」

「10斗ですガ」

「359石8斗なり……と」


いや、算盤使うほどの計算でもない気がするけど、ちゃっちゃっと検算して終わらせてあげました。


「す、スミマセン、お嬢様、俺の仕事ナノニ」

「ううん、こんなの簡単簡単。次は麻布が2じょうしゃくと3丈2尺と……1丈って何尺?」

「10尺デス……」


いいですね!単位も十進数で!!ノってきました!!

……って算盤がちょっと使いづらい。せめて数珠が棒に刺してあってチャッチャとできるといいんだけど。

ただの溝に石並べてるだけだもんなぁ……


「最後に鉄が23きんりょう6しゅ……えっと、1斤が10両で100銖でいいですよね!」

「あ、イエ、1斤16両で、1両24銖デス……」

「なんで?!!!!!!なぜですか!?漢の人たち!!!!」

「申し訳アリマセン!!!」


李司馬リーたいちょうがごつい身体を丸めて謝ります。


いや、リーさんのせいじゃ……


おおう、繰上りに繰り下がりに分数になって……

ああ、もう全部計算してあげますよ?!




 - - - - - - - - - -  


「お嬢様!ありがとうゴザイマス!!」

「お嬢様、ワイからもお礼を申し上げますわ」


帳簿の群れを蹴散らしたところ、李傕(リカク)さんと郭汜(カクシ)さんが感動してお礼を言ってくれました。

なんか背が低くて筋肉質のリーさんと、長身で痩せ気味のカクさんが並んでると、どっかの悪役トリオみたいですね。センターがいませんが。


ところで、そもそもリーさんは武官ですよね?


「はい、ですガ、主公トウタクさまから少し書き仕事もシテみろト均輸官きんゆかんニ……」

なんかすっかり身体が小さく丸めて恐縮しちゃってます。


均輸官?


「ああ、モノの売り買いをする官吏ですわ。均輸きんゆ平準へいじゅん官って言いましたかな??

ほら、収穫の時期は穀物が安くて端境期はざかいきは高いですやろ、そういうのを政庁で売り買いして物価を安定させるんですわ」


わー、なんか面白そうですね!!!取引ゲームみたいで!


「そうでっか……?商賈あきんどみたいで人気のない仕事なんですけど」

「それに俺ハあまり才能ガ……」


え、商人みたいだと人気がないんですか……?

なるほどなるほど。じゃあ私が手伝ってあげましょう!!

ちょっとおうちの本を読みつくして暇だったんですよね!!!


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やだ……李傕、郭汜って表示できるのね……

※漢字が表示できない人が居たら言ってください

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現行連載作  迷宮伯嫡子はカネがない

大借金で領地取りつぶしの危機である。頼れる親や重臣たちは外出中、財布は空で留守番役。
状況を切り抜ける特別なご加護や卓越した武勇や超魔力なんかもない。
そんな状況だけどボクは前向きに取り組んでいく。
まずは軍資金ゼロで軍隊を動員?できなきゃ領地は大変だ?
― 新着の感想 ―
[一言] > 粟が蔵に324石、おとといの倉入れが44石2斗と、昨日の倉入れが32石8斗で、蔵出しが41石2斗 > 350石8斗なり ?? 気のせいか、答え、359石8斗の様な気がするが… でも、こ…
[一言] はははお戯れをドロンジョ様
[一言] >なんか背が低くて筋肉質の李さんと、長身で痩せ気味の郭さんが並んでると、どっかの悪役トリオみたいですね。センターがいませんが。 あの……センター……(控えめに指を差す)
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