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董卓の娘  作者: 神奈いです
第一章 黄河の北で
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讖緯説(よげん)

うちに戻ってきました。


正式名称を大漢ダイカン河東郡カトウぐん安邑県アンユウけんとか言います。

県より郡の方が大きいんですね。

河東郡の太守ちじである董卓トウタクパパの居城です。



なかなか立派な城壁を持つ大きなお城で、人口も多いです。

町全体が城壁に囲まれている城壁都市なんですね。

なんでも昔の魏の国の首都だったそうで……あれ、魏の首都ってギョウだったのでは?

と聞いたらギョウが魏の首都になったことはないそうです。あれ?




「はぁ……いや河伯かわのかみは悪神ではないが。もう少し普通のお告げが良かったの」

李司馬リーたいちょうがえらい食い気味に「神のご加護が!」と報告したのを聞いても、董卓パパはあまりうれしそうではなさそうでした。

まぁ、そうですよね。私だって神が憑いていると言われても別に念力でモノを動かしたり、テレパシーが使えるわけじゃないので得するわけでも……


使えないかな?むむむ。

使えるかも?


ぼやいている董卓パパを尻目に手をうようよ動かして遠くの壺を動かそうとしてみます。

うごけー、うごけー。



「あいや、義父上ちちうえ、あの巫女がそこまで言うなら、これはおろそかにできませんよ。

 一族の運も開けるのではありませんか?」


ワクワクしながら話しかけてくる礼儀正しい若者は、董卓パパの娘婿の牛輔ギュウホ兄さんです。

実の兄さんは居たそうなのですが早くに亡くなったそうで、牛輔ギュウホ兄さんが親族筆頭のような感じです。


いや義兄さんって割と強硬に巫女に視てもらえと騒いでいましたよね。

李司馬リーたいちょう牛輔ギュウホ兄さんもそうですが、親族たちも部下たちもなんか迷信深い人多い気が……



小青(青ちゃん)はどう思う?何か変わったことはあるか?」

「いいえ、父上。何ともありません。神通力もありませんし……」


壺を動かすのをあきらめた私は、董卓パパを拝して言いました。


「あのような図に何か力があるとも思えませんし、気のせいだと思います」


ギロッ?!

董卓パパの顔色が変わりました。


「……小青(青ちゃん)、人が信じているものについてあまりそういうことを言ってはならん」

「あ、申し訳ありません」


いや、今の顔怖かった。

やっぱり魔王なのでは……


董卓パパはマジメな表情で神妙に言い聞かせるように話しだしました。


讖緯よげんは人知の及ばぬもの、凡人の運命には関わらぬが国運は左右する。

 下手に新しい説を立てたと知られれば謀反にもなりかねん。

 皆の者、本件、および小青(青ちゃん)が河伯の巫女だなどという話については他言無用にいたせ」

「「ははっ!!」」


周りにいた親族や部下たちが一斉に答えます。



……後で聞いたのですが、今の皇家、つまり後漢の初代皇帝は讖緯よげんをなんやかんやいい感じに使って、「俺は予言された皇帝だから即位していいんだ」ってやっちゃったみたいなんです。

なので予言を否定するどころか、国家の正式な学問に予言が組み込まれてるそうで。

だから皆さん割と迷信とか予言とか軽く信じちゃいますし、だからこそ皇帝に都合の悪い予言は取り締まりの対象なのだとか。


いやこれじゃ私が厄物じゃないですかやだー?!


せめて超能力でも使えないと損ですよね?!

壺うごけー。


私は手をうようよ動かして……



パリン!!!!

「も、申し訳ありません!!!」


私の念力で壺を倒した……わけじゃなくて、召使さんが躓いて割ってしまったようです。


「おい!!」


董卓パパがすごい顔をして立ち上がります。

立派な髭を逆立てて完璧にこれ魔王……召使さんが殺される?!止めないと!!!



「父上、どうか落ち着いて!八つ裂きはやめてあげてください!!」

「えっ」


董卓パパの裾に縋って助命を願います。

ひょっとすると私の念力のせいかもしれないからこんなので殺されたら可哀そうだし……


「え……八つ裂きじゃすまないのですか?!!では、生皮を剥ぐのもおやめください!!」

「……いや、そんなことはせんが……」


あれ?董卓パパが引いてる……??


えっと……董卓ってほら、魔王だし……ちょっと気に入らないことがあると部下に武器を投げつけて殺そうとかしますよね???


「えっと、じゃあほこ投げの的とかでしょうか?」

「せんわーーーーーっ?!!!はぁ……ふぅ……」


お怒りなのか董卓パパは一つ叫ぶと、深呼吸をして息を整えました。

そして八つ裂きや皮剥ぎに怯え、這いつくばっている召使に声を掛けました。


「で、貴様は大丈夫か?ケガなどしておらんか?」

「め、滅相もありません!!それより壺を」

「壺など構わん、どうせ壊れ物だ……片づけよ」

主公とのさま!!申し訳ありませんでした!!」

「構わん」


召使は感動して泣きそうになりながら何度もお辞儀をしています。


おおおおお!!


董卓パパって顔は怖いけど優しいじゃないですか!!?

こんな人がまだ若い皇帝を殺したり、首都の洛陽を焼き払ったりしないですよね!!!


魔王じゃないかも!!



そして董卓パパが満面の笑みでこちらに振り向き。


小青(青ちゃん)は少し父と話し合いをしようか?」

「……はい」



女の子が八つ裂きやら皮剥ぎやらなんてことを言うんだとめちゃくちゃ怒られました………

怖かったです……

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現行連載作  迷宮伯嫡子はカネがない

大借金で領地取りつぶしの危機である。頼れる親や重臣たちは外出中、財布は空で留守番役。
状況を切り抜ける特別なご加護や卓越した武勇や超魔力なんかもない。
そんな状況だけどボクは前向きに取り組んでいく。
まずは軍資金ゼロで軍隊を動員?できなきゃ領地は大変だ?
― 新着の感想 ―
[良い点] 娘に、召し使いがミスしたら拷問じみたやり方で殺す人間だと思われていたパッパ。 そりゃあ、ショックだよなあ
[良い点] 実際、娘が父親にこんなイメージが抱いていたら、そりゃ怒りますね。
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