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董卓の娘  作者: 神奈いです
第六章 董卓の娘

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襲撃

こんにちわ。悪役令嬢で臨月の人妻の董青ちゃん16歳です。

もう産まれそうだというのに、董卓パパが軍を率いて上洛するとかで急に焦げ臭くなってきました。

さらに出産直前の奥さまを置いて、旦那様の公明(コウメイ)さんがいません。


洛陽の教団本部の中庭で周りを見渡して叫びます。

「なんで、公明さんはどこに行ったんですかー?!あ、痛っ、いたたたたっ」

「妊婦が大声を出さないのじゃ?!!」


叫んだ途端、痛み出したお腹を抱えてうずくまる私、を厳しくしかりつけるのは我が姪の董白ちゃん12歳です。

最近はますます美しく、透き通った肌と西域系の色素の薄い髪の毛が奇麗です。


「もうじきに帰ってきんさると思うがのう」

禿げ上がった頭に青い頭巾をまいて、熊みたいな身体つきをしたおじさんが北地訛りで呟きます。


「なんか楊司馬(ヨウたいちょう)も久しぶりですね」

「ほうじゃねぇ」


教団河東支部の幹部である楊奉(ヨウホウ)さんが私の言葉を聞いて嬉しそうに微笑みます。

最近どうも物騒なので、河東支部から護衛信者を連れて警備をしてもらっています。


と、門の外で騒ぎ声がしたので、楊奉さんが見に行って……すぐに逃げ帰ってきました。



「巫女さん!?大変じゃ!遊侠(やくざ)もんが本部を取り巻いとる!!!」

「はぁ?!」



 ― ― ― ― ―



門の外では信者さんたちが遊侠(やくざ)と押し問答をして時間を稼いでくれているようです。

護衛信者さんが数名駆け戻ってきて報告してくれます。



遊侠(やくざ)の指揮官が何顒(カギョウ)なんですか?!」

報告を聞いて、確信しました。これは明らかに私怨です。

私を暗殺しようとして失敗して、その後に闇討ちではなく昼討ちした何顒(カギョウ)です。

なお、報告してくれた信者さんはその時相手をボコボコにした人ですから、見間違いはないと保証されました。



「うう、仕返しに来たんですね。誰か急ぎ執金吾(けいさつ)を呼んできてください」

執金吾は洛陽城内の治安を維持するお役目なので、こんな私闘は止めてくれるはずです。


「いけんぞ!?巫女様、相手に執金吾の兵がまざっとるで?!」

「はああああ?!」


なんで取り締まる執金吾(けいさつ)と取り締まられる遊侠(やくざ)が一緒にいるんですか?!



「うああああああ?!」

「きゃああああ?!」



憤慨していると、ついに相手が剣を抜いたようです。


「楊司馬!護衛信者さんたちで止めてください、その間に一般信者さんたちを裏から逃がして!」

「わかったわい!」


楊奉さんが剣を持ってかけだし、長い木の棒で武装した護衛信者たちが門を護って戦い始めました。



そこに完全武装した趙雲さんが現れました。

「ダメです!裏門も囲まれています!裏門を破られないように加勢してきます!」

「お願いします!」


あうあう、なんで戦争っぽくなっちゃってるんでしょうか。

ちょっとあの何顒(オッサン)を半殺しにしただけなのに……。それで暗殺未遂と「おあいこ」ってことで手打ちにしたんじゃ。

説得できないかな。



楊奉さんの裏にかくれて、声のデカイ信者さんに大声で叫ばせます。

南陽(ナンヨウ)郡の何伯求(カギョウ)!何の用事でこのような乱暴をするのか!そなたが我らが教祖を闇討ちした件は、市中で半殺しにして許してやったではないか!」


ん?ちょっと意味合いが違いますが、まぁいいか……。


「黙れ!!!宦官に操られた邪教淫祀の輩をいくら殺そうと正義!むしろ貴様ら庶民が名士である我を傷つけたのは許せぬ!貴様らの反乱の罪はすでに明らかだ!全員死ね!!!」


はぁ?はぁ?はぁ?

なんか話が通じない……。



「巫女様」

楊奉さんが指示を求めてきます。

これはもう正当防衛だし、しょうがないですよね。


やってしまってください。


私がうなづくと楊奉さんが護衛信者さんたちを連れて、門の外に飛び出していきました。

「おどりゃあ、ぶちまわすぞ!」


この間の闇討ちの経験から、護衛信者さんの強化に取り組んできました。

堂々と首都洛陽で軍備を整えるわけにはいかないので、あくまでも自衛用の木の棒と、布の服、布の頭巾をかぶっているだけです。

しかし、服の(うわぎ)の生地には鉄の小板と綿を仕込んであり、青い頭巾にも鉄の裏あてがしてあります。

木の棒も長さ九尺(2めーとる)あまり、材質も丈夫なものを選んであります。

そして、毎日公明さんや趙雲さんが鍛えてくれていました。




その護衛信者さんたちを、ただの信者だと侮って、遊侠(やくざ)がばらばらに剣を抜いて討ちかかってきます。


「ぶったたけ!」

楊奉さんの指示で息を合わせて長い木の棒を振り下ろします。


たちまち前の数名がぶったおれ、遊侠(やくざ)たちがひるみます。


そこにさらに護衛信者さんたちが木の棒でさらに殴りかかっていきます。


あ、逃げ出しました。

名士の家で飼っている遊び人たちだと思いますが、弱いですね。


「なにをしておるか!相手は素人ぞ!執金吾!」

後方で歯軋りをしてわめく 何顒(オッサン)の指示で、代わって相手は官兵が出てきます。


さすがに官兵ともなると揃いの装備をつけていますね。

鉄片をつなぎあわせた(まえかけ)に皮革に鉄片をあしらった(かぶと)です。

武器も剣だけでなく、(ほこ)(ほこ)も持っています。


「素人はそっちじゃけえ!」

しかし、楊奉さんは慌てもせずに隊列を維持しながら棒で応戦します。


何人か、(うわぎ)を戟で突かれますが、鉄板のおかげで防げているようです。

むしろ突いた官兵のほうが血がでないのを驚いています。


そして相手の冑の上から棒で殴りつけると、さすがに官兵といえどひるみ始めました。


「はっはっは、関東モンは弱いのう!」


楊奉さんが勝ち誇っています。関東というのは函谷関の東のことで、関東もんとは洛陽や中原の人たちを指しています。

関西は北地郡出身の楊奉さんから見ると、中原の人は文弱で弱虫に見えるようです。





「まったくだ。関東のやつらは弱すぎる」

楊奉さんの煽りに応えてか声がしました。


官兵の後ろからさらに違う装備の兵が現れます。

毛皮を多く使った装備で、匈奴に似てるような……??


その隊長と思われる人は全身を鉄片でくみ上げた(よろい)に身を包み、(かぶと)には濃紺に染めた飾り毛を垂らしています。


「ぬうん!!!」

その人が戟を振り回すと、護衛信者さんたちの棒が軽く打ち払われてしまいました。



それを見て、楊奉さんが前に出ます。

「おどりゃぁ、なかなかやりよるのぉ。河伯教団の司馬、北地の楊奉とはわしのことじゃ!」


新手の隊長と思われる人が戟を構えなおして、楊奉さんに対峙しました。


并州牧(ヘイシュウそうとく)丁使君(丁原)幕下、軍候(しょうさ)張文遠(チョウブンエン)。参る」



……って?!張遼(チョウリョウ)じゃないですかああああああ?!!!








※いつも応援ありがとうございます。

 いいね、コメントよろしくお願いいたします。

いつもありがとうございます。感想も嬉しいです!

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@kana_ides

#董卓の娘

ニコニコで董卓伝和訳などアップしています。ついったらからどうぞ。

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現行連載作  迷宮伯嫡子はカネがない

大借金で領地取りつぶしの危機である。頼れる親や重臣たちは外出中、財布は空で留守番役。
状況を切り抜ける特別なご加護や卓越した武勇や超魔力なんかもない。
そんな状況だけどボクは前向きに取り組んでいく。
まずは軍資金ゼロで軍隊を動員?できなきゃ領地は大変だ?
― 新着の感想 ―
[一言] 張遼と来て、呂布が来ると見せかけて高順が来る流れと見た
[気になる点] 遼来来! 遼来来! 楊奉さんには申し訳ないけどこれ流石に厳しいやつー! [一言] ……いや、丁原配下のもう一人じゃないからまだ何とかなる方なのか……
[一言] やばいやつが来たー?! 徐晃か趙雲辺りで無いとどうにもならなそう…
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