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世界最後の七日間

掲載日:2021/05/04


数年前に世界が終わるかもしれないとウワサになって

1年前に いよいよそれが本当らしいということが分かった。


はじめはみんな大慌て。

誰もが少しでも安全な場所へ逃げようと 西へ東へ。

だけど変わらず昇る太陽が平穏をもたらして、

僕たちは︎いつしかその日を 静かに待つようになっていた。


これは、世界の 最後の7日間の話。




☆☆☆☆☆☆☆

世界が終わる予定の1週間前 朝からなんだか、町全体が騒がしい。

父さんと母さんは最後に 会いたい人に会いに行くって。

あなたもやり残したことがないようにしなさい、と母さんには言われたけれど

とくに思いつかなかったから、僕は犬のジュリの散歩に行った。


落ち着きのない町をしばらく歩いてたら、ひとりの女の子と出会った。

彼女もすることがないらしい。

だから僕たちはこの1週間、町がどうなるか 一緒に見てみることにした。




☆☆☆☆☆☆★

世界最後の7日間、ケーキ屋さんは大繁盛。

小さいケーキも大きいケーキも 飛ぶように売れていく。

誕生日が終わった人もこれからの人も、迎えるはずだった歳の分

今のうちに祝おうと、どの人も両手に箱がいっぱい。

僕たちはそんなに食べられないから、クッキーを買って二人で食べた。




☆☆☆☆☆★★

農家さんの畑には 花がいっぱい咲いていた。

いろんな季節の色々な花が、野菜と一緒に一面に。

さくらやひまわりや金木犀、梅の花がいっぱい咲いて、

その香りを優しい風が、町中の人に毎日届けた。




☆☆☆☆★★★

夏も冬も もうこないならと、

町の人たちは イルミネーションをそこかしこに取りつけた。

提灯もクリスマスツリーの電飾も、しまったばかりのハロウィンのかぼちゃランタンだって。

たしかにきれいで賑やかだけど、おかげで何の日かわからなくなった。




☆☆☆★★★★

花火師たちは、毎夜 花火を打ち上げた。

夏祭りのための玉も 大会用のとっておきも。

人目に触れないくらいならと 真っ黒な空に次々と

大輪の花を咲かせていった。




☆☆★★★★★

この日は朝から雨だった。

いつもは傘やレインコートで色とりどりに賑わう町も、今日はなんだかおとなしめ。

何人かは着の身着のまま外に出て、服の色を変えている。

僕たちも傘を置いて 服に水玉をつくって遊んだ。

雨の柔らかい衝撃が、ポツポツという優しい音色が

心地よくって気づいたら ずぶぬれびしょぬれどろまみれ。




☆★★★★★★

町は恋人たちでいっぱい。

きらきら輝く指輪をつけて、その手をつないで歩いてる。

僕は雑貨屋さんで買った指輪を彼女に贈る。

彼女は「ありがとう」といって笑った。


その日の夕方。

「さいごは一緒にって、家族と約束してるの」

彼女はそう言って、手を振りながら帰っていった。

僕は一緒に居たかったけれど彼女を困らせたくなかったから、手を振り返して見送った。

残ったのは、僕とジュリだけ。


僕はジュリの首輪をはずした。

ジュリだって 最後くらいは自由になりたいだろう。

「すきにしていいよ」

僕はジュリに言った。

ジュリは笑っているような顔で ただ僕を見上げていた。



★★★★★★★

最後の夜 町はほとんど真っ暗で、いつも以上に静まっていた。

灯りを消して きれいな星空を見ようということらしい。

僕とジュリは河原に寝転がった。

空には雲一つなく、満天の星空が広がっている。


僕ら以外にもちらほらと河原に集まる人がいた。

みんなおなじ空を見ている。




静かでこんなにもきれいな夜は もう二度とないだろう。


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