世界最後の七日間
数年前に世界が終わるかもしれないとウワサになって
1年前に いよいよそれが本当らしいということが分かった。
はじめはみんな大慌て。
誰もが少しでも安全な場所へ逃げようと 西へ東へ。
だけど変わらず昇る太陽が平穏をもたらして、
僕たちは︎いつしかその日を 静かに待つようになっていた。
これは、世界の 最後の7日間の話。
☆☆☆☆☆☆☆
世界が終わる予定の1週間前 朝からなんだか、町全体が騒がしい。
父さんと母さんは最後に 会いたい人に会いに行くって。
あなたもやり残したことがないようにしなさい、と母さんには言われたけれど
とくに思いつかなかったから、僕は犬のジュリの散歩に行った。
落ち着きのない町をしばらく歩いてたら、ひとりの女の子と出会った。
彼女もすることがないらしい。
だから僕たちはこの1週間、町がどうなるか 一緒に見てみることにした。
☆☆☆☆☆☆★
世界最後の7日間、ケーキ屋さんは大繁盛。
小さいケーキも大きいケーキも 飛ぶように売れていく。
誕生日が終わった人もこれからの人も、迎えるはずだった歳の分
今のうちに祝おうと、どの人も両手に箱がいっぱい。
僕たちはそんなに食べられないから、クッキーを買って二人で食べた。
☆☆☆☆☆★★
農家さんの畑には 花がいっぱい咲いていた。
いろんな季節の色々な花が、野菜と一緒に一面に。
さくらやひまわりや金木犀、梅の花がいっぱい咲いて、
その香りを優しい風が、町中の人に毎日届けた。
☆☆☆☆★★★
夏も冬も もうこないならと、
町の人たちは イルミネーションをそこかしこに取りつけた。
提灯もクリスマスツリーの電飾も、しまったばかりのハロウィンのかぼちゃランタンだって。
たしかにきれいで賑やかだけど、おかげで何の日かわからなくなった。
☆☆☆★★★★
花火師たちは、毎夜 花火を打ち上げた。
夏祭りのための玉も 大会用のとっておきも。
人目に触れないくらいならと 真っ黒な空に次々と
大輪の花を咲かせていった。
☆☆★★★★★
この日は朝から雨だった。
いつもは傘やレインコートで色とりどりに賑わう町も、今日はなんだかおとなしめ。
何人かは着の身着のまま外に出て、服の色を変えている。
僕たちも傘を置いて 服に水玉をつくって遊んだ。
雨の柔らかい衝撃が、ポツポツという優しい音色が
心地よくって気づいたら ずぶぬれびしょぬれどろまみれ。
☆★★★★★★
町は恋人たちでいっぱい。
きらきら輝く指輪をつけて、その手をつないで歩いてる。
僕は雑貨屋さんで買った指輪を彼女に贈る。
彼女は「ありがとう」といって笑った。
その日の夕方。
「さいごは一緒にって、家族と約束してるの」
彼女はそう言って、手を振りながら帰っていった。
僕は一緒に居たかったけれど彼女を困らせたくなかったから、手を振り返して見送った。
残ったのは、僕とジュリだけ。
僕はジュリの首輪をはずした。
ジュリだって 最後くらいは自由になりたいだろう。
「すきにしていいよ」
僕はジュリに言った。
ジュリは笑っているような顔で ただ僕を見上げていた。
★★★★★★★
最後の夜 町はほとんど真っ暗で、いつも以上に静まっていた。
灯りを消して きれいな星空を見ようということらしい。
僕とジュリは河原に寝転がった。
空には雲一つなく、満天の星空が広がっている。
僕ら以外にもちらほらと河原に集まる人がいた。
みんなおなじ空を見ている。
静かでこんなにもきれいな夜は もう二度とないだろう。




