恋愛観 〜マジョリティとマイノリティ〜
今朝見た夢をもとに書きました。
私たち四人組は幼稚園から高校の今までずっと仲良しだ。でも最近、トモヤの様子がおかしい。いや、トモヤだけではない。レンも、アイラも、私以外みんなおかしい。
「ねえ、今日の放課後カラオケに行かない?」
私は三人にそう提案する。しかし、
「ごめん、今日は用事があってさ……」
「僕もだ。ごめんね……リカ」
断られてしまった。最近ずっとこんな感じだ。二人は私たちと遊ぶ時間がめっきり減った。
アイラもアイラだ。
「うーん、それじゃあ仕方ないね!リカ、私と2人で行こ!」
「う、うん……」
アイラはむしろ二人が来れないのが嬉しそうだ。嬉々として私に話しかけている。
……いつからこうなんだろう?
分からない。分からないけど……
少し、怖い。この四人のつながりが無くなりつつあるんじゃないかって、そんな気がして……
でも、そんな事を三人に話す勇気がある訳もなく、放課後を迎えた。
「リ〜カ!カラオケ行こー!」
「うん」
「どうしたの?なんか元気なさそうじゃん」
「ううん、なんでもない……なんでもないの」
「そ、そう?ならいいけど」
私はアイラと二人でカラオケに向かった。
しかし、歌を歌う元気があるわけでもなく、私はアイラの歌に合いの手をしているだけだ。アイラはとても楽しそうに歌っている。
そして2時間が経ったころだ。
「リカ。何か悩みがあるんでしょ?話してよ。私たち親友じゃん!」
「う、うん……」
私は自分の胸の内をアイラに打ち明けた。しかし、私の望んでいた答えは返って来なかった。
「気のせいじゃない?先月だって、四人で遊園地行ったじゃん」
「う、うん。そうなんだけどね……」
「気にしすぎだって!それともなに。もしかして、どっちかのことが好きなの?」
アイラの目つきが一気に険しくなる。
……怖い。
「そ、そんな事ないよ!そういうんじゃなくて……」
「まあまあ気にしなさんな!きっと二人も忙しいんだよ!」
いつもの優しい目に戻った。さっきのは何だったのだろうか。
「そ、そうなのかな」
「そうそう!きっとそうだって!それよりさ、カラオケ楽しも?」
「うん……そうだね」
その後はアイラだけでなく私も歌った。楽しい時間だった。二人がいればもっと楽しかっただろうけど。
カラオケ店から出ると、アイラから思わぬ提案をされる。
「ねえリカ……うちに来ない?」
「え、今から…………?」
「う、うん。ダメ?」
「いや、全然いいよ!久しぶりだなーアイラのお家」
「ほんと!?やったー!」
なぜかアイラが怖くて、断ることができなかった。
私とアイラは電車でアイラの家の最寄り駅まで向かう。アイラの家は駅近なので、駅を降りてからは時間はかからなかった。
「お邪魔しまーす……」
「どうぞ!今はまだパパもママも帰ってきてないから、ゆっくりしてね」
……?その情報、いるだろうか。でも、ご両親に気を使わせたくはなかったので、ある種好都合だと言える。
「はいお茶」
「あ、ありがと」
私はアイラから貰ったお茶を口に含む。少し独特の味がする。
「今日はリカに見せたいものがあったの!この間やっと埋まってさー!」
埋まる?どういう意味だろう。なんかさっきから妙に意思疎通が取れないな……
「ほら、私の部屋に来て!」
「うん、ちょっと待って」
私はお茶を飲み干し、台所に入れてからアイラの部屋へと向かった。
「さ!早く早く!」
アイラがドアから顔を出して待っている。
アイラの部屋に入ると、そこはピンク一色だった。少し目が痛くなるほどに。
「うわー!可愛い部屋だね!」
「そうでしょ!リカのために頑張ったんだー!」
さっきからアイラの言動がおかしい。私に何を伝えようとしているのだろうか。
「そうだ!こっち!こっち来て!」
アイラはそう言うと、クローゼットに手をかける。
「行くよ……?3……2……1……」
アイラのカウントダウンとともに、私の鼓動が早くなる。
……嫌な予感がする。
私の予感はよく当たる。ゲリラ豪雨とか、地震とか、近所の火事とか、今まで色々なことを当ててきた。
「じゃーーん!!」
アイラがクローゼットを開けると、そこには
壁一面を覆う程沢山の、私の写真があった。
それだけではない。壁の端にピン留めされたジップロックには髪の毛のようなものが入っている。ジップロックは二つある。
「ひっ……!」
なに……!なんなのこれ!どうしてこんなものが?
私は数歩後退りし、ベッドに座り込む。
「あれ?おっかしいなー。喜んでくれると思ったんだけどな」
「あ、アイラ……?アイラがやったの……?」
「逆に私以外誰がいるの?ここは私の部屋なんだよ?」
「ど、どうしてこんなこと……」
私の目から涙が出てくる。恐怖に声も体も震えが止まらない。
「どうしてって……そんなの決まってるじゃん」
アイラはベットに座っている私を押し倒す。
「リカが、大好きだからだよ?」
……え?なんで?私たち、女の子同士なのに……親友なのに……
「なに?リカも、同性愛は気持ち悪いって言うの?」
「だ、だって、わ、私たち、友達だよね……?親友だよね?」
「そんなこと言わないでよ……私、我慢したんだよ?たくさん、沢山沢山沢山沢山タクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサンタクサン我慢したんだよ!?」
「ひっ……!」
怖い。今はただ、アイラが怖い。それ以外考えられない。
「まあいいわ……どうせ、リカはもう私に逆らえなくなる……」
そう言われて気づいた。体が熱い。どうしようもなく熱くて、火照っている。
……もしかして、さっきのお茶に?
「今頃気づいても遅いわ。私がリカを……「女」にしてあげる!」
そう言うと、リカはスカートを脱ぎ出した。
服を全て脱いだリカの体を見て、私は驚愕する。
「なんで……そんなものが……」
「ああ、これ?すごいでしょ。女の子同士って指とかじゃん?それでもいいけど、せっかくならちゃんとしたいんだもん。だから、悪魔に頼んでつけてもらったの。なんてね♪」
もう、私の知っているアイラはどこにもいないことを悟った。
「さ、早くヤりましょ?リカ」
「や、やめて!助けて!」
「なんで抵抗するの……?こんなに大好きなのに……」
私はリカから逃げようとするが、リカはびくともしない。
「お願い……助けて……トモヤ、レン……」
私は心の底から助けを願う。しかし、その声が届くわけはない。
「よりによって助けを求めるのがその二人なんてね」
リカは急に笑い出した。
「今頃あの二人はどっかで仲良くヤってるよ」
「そ、そんな……」
あの二人ももう私の知る二人ではなかった。おかしくなってしまったんだ……
いや、おかしいのは私の方だ。きっと最初から三人はこんな感じだった。私が変に色眼鏡を通して彼らを見ていただけだったんだ。
おかしいのは私。だって、同性愛者がマジョリティで、異性愛者がマイノリティなんだから。おかしいのは私。普通じゃないのは、私だったんだ……
私は快楽に身を任せて、考える事を放棄した。