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最強魔術師の英雄譚  作者: みゅ
第一章 師匠との思い出
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アサシハンター

宿屋を出て、わずか10分歩いたところに大きい。まるで、貴族の屋敷のような建物がそこには建っていた。


「あれが、冒険者組合の支部……?」


俺が首を傾げてヘルさんに尋ねる。


「そうさ。あそこに入って受付の人に言えば登録してもらえる。んじゃ、僕はその辺でウロウロしてるから困ったことがあれば言ってくれ」


相槌を打って別れを告げて俺は冒険者組合へ向かう。しかし、ドアを開けようとした時にフと思った。


「あああああ!硬貨貰ってねぇじゃん!」


周りに聞こえるぐらい大声で失態を叫んだ。俺は恥ずかしくなり、たちまち顔を赤くする。


「やっべぇな。今すぐヘルさんを探さないと!」


急いでヘルさんと別れたところである道に戻る。だが、冒険者組合へウキウキで走って行ったためにヘルさんがどこへ向かったかわからない。


「俺としたことがぁ!やっちまった!」


頭を抱えて地面に膝をつく。体は子供なので、思わず涙が出そうになる。そこへ、三人の男の大人が現れた。


「へっへっへ。君、迷子?」


顔を見上げると、真ん中のリーダーらしき男が不敵に笑いながら尋ねてきた。絶対に怪しいやつらだと思い、俺は首をふる。すると。


「迷子じゃないのかぁ。なんか組合の前で「金がなぁい!」みたいな感じで騒いでたけど、金がないの?」


この質問に対しては否定することはできなかった。左にいるトサカ頭をした本物ヤンキーに頷いて答える。こいつらに俺が喋る価値はないと判断したまでだ。


「そうかそうか。じゃあ、いい仕事を教えてあげるよ」


そうやって右のモヒカン頭の男が言ってきた。こういう時のいい仕事というのは大体予想がつく。例えば、奴隷関連だ。こういう中世をモチーフにした異世界ならば当たり前のことだろう。


もし、俺が精神も子供であったら、やむなく頷いていた。だが、今は精神だけは大人だ。喋る価値無しとしてたが仕方なく口を開く。


「さっきから大の大人が変なこと言ってんじゃねぇよ。俺を五歳児の子供だからって、油断は禁物だぜ?」


子供とは思えない口調で話す。前にいる三人の男はどうやら、そんなはずはねぇと言わんばかりに余裕ぶっている。


「あ?俺たちとやる気なのか?ほら、こいよこいよ」


真ん中の男が変な手招きをする。この世界の煽り方か?と思いつつ、冷静に腰に帯びていた銅の杖をバレないように外して背中に回す。


この銅の杖が、なぜ街の人達が気づいていなかったかというと、ヘルさんが魔術名のステルスを使って透明化させてくれたからである。


「そう言えるのも今のうちだよ」


俺はにやりと笑みをこぼす。今は夜のとばりがおりるまえの夕方だが、まだ視界は明るい。俺は背中へ回した杖をステルス解除して男たちに向ける。


「俺の名は石上悠人。ヘル・マーキュリーの弟子。いざ、初陣!」


決めゼリフっぽいことを言ったあとに火属性の初級魔術である、「ファイヤーボール」の詠唱をして放つ。


その魔術は至近距離だった真ん中の男の顔面に直撃。顔が黒くなって煙をもくもく出している。やがて、男は後ろへ背中から倒れた。


「な、なんだと!?こんな小さい子供が魔術を使えるなんて……」


右の男が形相を恐怖に冒されたように変える。今、俺が何者かに見られているということはまだ知らない。


「ひ、卑怯だ!俺たちは魔術をまだ習得してないのに!」


左の男がオロオロしている。逃げるか否か選択を迫られているのだろう。倒れていた真ん中の男が起き上がり、顔を黒くして煙を吹いていたのにそれがなぜか治っていた。


「俺は魔術の心得が少しだがあるぜ。残念だったな、坊主。貴様の負けだ。子供に負けるぐらいなら、死んだ方がマシなんだよ!」


真ん中の男は治癒魔術でも使ったのか。そう思えた。真ん中の男は怒りを顕にしたあと、両腕を俺に向かって伸ばして魔術を詠唱する。そして――


「エアリアル・アロー」


緑色の魔法陣を作り出し、その中から魔術の緑色で風を纏った矢が姿を現し、わずか秒で俺のでこにぶっ刺さるかと思えた。が、どうやらそれは叶わなかったらしい。


「き、貴様はまさか……」


左の男が驚愕する。俺に矢が当たらなかったのは、目の前にヘルさんとは別の人が立っていたからである。


「こんなか弱い小さな子供に向かって魔術を使うなんて、大人としてどうなの?」


綺麗な声だった。年の差は随分とあるようだ。だが、彼女はおよそ中学生ぐらいだろうか。


「くっ。な、なぜ。アサシハンターの一人のお前がここに」


アサシハンターとはなんなのだろうか。この三人の男が怯えているということは、男たちの敵と考えていいか。


「なぜかって?そりゃ、あなたたちを捕らえるためよ。子供攫いのトーシロと、その仲間たちさん」


トーシロというのはおそらく真ん中の男だろう。仲間たちと言ったのは、付き添いの可能性が高い二人をさしたと考える。


「くそっ。逃げるぞお前ら!」


男三人は猛ダッシュであとにした。


「大丈夫?」


彼女は右手に矢を持ち、それを壊したあとに聞いてきた。彼女からはなんも悪意を感じなかったので素直に答える。


「いえ、全くもって平気です」


「そう。そういえば、その銅の杖。どうしたのかな?もしかしてそれを買ったからお金なくなったの?」


俺と同じくらいの高さになるように立ち膝をして話してくる。くそっ。これじゃ幼稚園児じゃないか。


「そうなんです」


「そうなのね!なににお金が必要なの?」


それ一番大事だよね!?なんで最初に言わなかった!と自分の心の中でツッコむ。


「冒険者組合に登録する為に、必要なんです……」


俺は恐る恐る顔を下にして聞いた。すると彼女は。


「はいよ。今日だけだからね!てか、もう会うことはないだろうけど。一応名前を言っておくね。カリファナ・アストレアと言うわ」


彼女は両手に銀貨五枚をのせて俺に渡してくる。それを受け取り、思った。女性の手って、暖かい。


「ありがとうございます」


礼を言い終えたあとに顔をあげると、綺麗な青髪が印象的だったカリファナ・アストレアの姿はなかった。


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