三聖王
街に着き、とりあえず俺の装備を整えようということで武具屋に来ている。
「言い忘れたけど、ドラゴン使えるなら最初っから使ってよ」
「フハハハ。面白いなぁお前は。最初っから使ってたら体力向上の鍛錬にはならないでしょ」
あ、なるほど!と、右手をグーにして左手の手のひらに当てる。あの歩いていた期間は修行の一巻だったのかと、感嘆していた。
「あ、すいません。これと、これください」
「へいよ。あんちゃん、その小さい子供に戦わせる気かい?」
「まあ、そうですが。今はまだ修行中ですから、危ない戦闘はしませんよ」
「そうかい。んー。布の皮一つと銅の杖一つだから……。合わせて銀貨3枚だ」
銀貨3枚って随分安いな。この人、お金持ちっぽいな。そういえば、三聖王について聞いてなかったな。店を出たら聞いてみよう。
「お、やっぱここの店は安くて助かるよ。冒険者といっても、そこまで稼ぎいいわけじゃないからさ。ありがと!」
「まいどあり!」
買ってくれた装備品を俺が自分で着るのではなく、ヘルさんが着させてくれた。子供ってやだなぁ。そう思う瞬間だった。
「んじゃ、次は冒険者登録するために冒険者組合のこの街にある支部に行きますか」
「りょ、了解っす」
ヘルさんが店員に向かって手を振りながら店を出て行くので俺も真似して手を振りながら店を出た。
「そういえば、ヘルさん。三聖王ってなんなんですか?」
髪の毛を手でかいているので、おそらく困ったなぁという表現だろう。
「じゃあ、冒険者組合に行く前に宿を決めてそこで話そう」
こうして、一泊金貨1枚というとてつもない安さである宿に泊まる。宿の2階の一室で、俺は三聖王について聞かされていた。
「三聖王というのはだな。お前に簡潔に話すとなると、この国の冒険者の中でも最も強い三人の冒険者ってことだよ」
「そ、それだけじゃわからないです。もっとこう、具体的にお願いします」
「難しくなるが、それでもいいのか?」
精神は前世の大人な俺だ。でも、難しい話はそこまで集中して聞けるものではなかった。だけど三聖王はとても重要かもしれないと思ったため、最後まで聞くことにする。
「大丈夫です。親に良く、難しいことを言われては質問攻めしていたので慣れています」
まあ、この今の俺の親がどんな人でなにをしていたか知らないから嘘ってことになるけど。通じるだろう。
「わかった。まずは成り立ちから説明していこう。三聖王とは、魔力量が人10倍多くて冒険者としても素晴らしい業績を数々してきた者に選ばれる。言わば称号だ。今は三人だから三聖王らしいが、さらに増えれば四聖王、五聖王、六聖王になるだろう。だが、どうしてそんなに有名な三聖王の一人の僕が、こんなに噂されていないかというと……」
「今のヘルさんの姿は、仮初の姿だから……?」
ヘルさんは驚いた表情をしているが、やがて説明してる時の状態に戻り、
「正解!よく分かったね。三聖王と呼ばれる三人は普段、人目のつかないところで仕事をこなしているんだ。王様からあらゆる命令を受けてね。もちろん、汚れ仕事が出ることもあるさ。だから、僕達三人は魔術名、「変身」を使って別人として日々暮らしているんだ」
別人……。つまりは、本物のヘルさんはこんな美青年ではなく、立派なおじいさんって可能性もあるわけだ。
「そうなんですね。三聖王ってゆーのはつまり、王様から厄介事を引き受ける雑用ってこと?」
「雑用!?君はそんなことも知っているのか。世界は広いね。いや、雑用ではないよ。王様からの命令って言っても、普段は冒険者だ。王国を脅かすようなのが出た時に限り、出陣するってことを最初に言っとけばよかったかな」
汚れ仕事ばっかりじゃん。それをツッコミたかったが置いとく。そして話ていくうちに窓の外に見えている空がだんだん橙色になってきた。夕方だ。
「あ、やば!もう夕方か。そろそろ登録しに行こう」
「は、はい!」