ドラゴン
ヘルさんの話を聞いてわかったことは、この世界には共通硬貨があり、銅貨、銀貨、金貨、オリハルコンだそうだ。
オリハルコンはとても希少な硬貨なため、あまり使われていないけどかなりの大物魔物を討伐して、認証部位を見せると少量だが貰えるらしい。
日本円に例えるならば、銅貨は1枚当たり10円。銀貨は100円。金貨は1000円。オリハルコンは一万だと思われる。
現在、俺たちは昨夜を砂漠にてキャンプで過ごした。そのあと、日が昇るとすぐに出発して砂漠がもうすぐで終わるところまで来た。
「ここまで来るのに、何事もなくて助かったね」
ヘルさんは安堵のため息をつく。その通り、オアシス魔物を倒したあとは一体も魔物を見なかったのだ。この砂漠はそこまで文明が発達しているわけではなかったので、魔物も好まなかったのだろう。
「そうですね。無駄な労力を使うところでした」
「お前はなにも、苦労することはないだろう」
今回もまた、ヘルさんは大爆笑。年齢に相応しないことを言うとヘルさんのツボになるみたいだ。
「でも、こんなに魔物と遭遇しないことは珍しいこと?」
「そうだね。普段なら、こんな辺境の砂漠地帯にも砂漠生息に特化した魔物がいるはずなんだけどね。最近、魔物の様子がおかしいことばかりなのさ」
「そうなんですか」
魔物の様子がおかしい。つまりこれは、俺がこの世界へ転生した代償?みたいなものなのか。全くわからない。そういえば、この砂漠でヘルさん以外冒険者を見てない。
「この砂漠って、冒険者には人気ないんですかね。全く見ませんでしたよ」
「そりゃね。この砂漠は不人気にも程があるって感じ。この砂漠には、ヌシと呼ばれる邪悪な魔物がいるって噂だ」
俺はゴクリと息を呑む。俺の住んでいたと思われるこの砂漠にヌシがいたという驚きと、興奮が入り交じった。
「そんな汗をかくほど怖がらなくていいさ。ヌシと言っても、あくまでヌシだから神出鬼没だよ」
「今、怖がらなくてもいいです……よね」
今、俺は一つの仮説をたてた。もしも、住んでいた街が滅ぼされたとしたら。あのゴブリンの群れではなく、ヌシなのではないかという仮説だ。
「お、そろそろ着きそうだ。でも、またあと一歩で夜になっちまうのか。今夜は松明を使って歩こう。まだ歩ける?」
ヘルさんは首を傾げて訪ねてきた。まだ、精神が大人なだけあって転生する前の体力がそのままある。だから、そんなにまだ疲れてはいない。
「あ、大丈夫です。歩けます」
「そうか!あと5時間も歩けるば着くだろう。と、言いたいところだが。今日は特別にペットを紹介しよう」
そう言うとヘルさんはなにかの笛を手提げカバンから取り出し、それを鳴らした。綺麗な音色だった。そして、笛が鳴り終わり、大きな影が足元をよこぎった。その影が無くなったと思ったら、まるで台風でも来たかのような風がふく。その風の正体は。
「こいつは僕が飼っているドラゴンで、名前は露桐という。かっこいいだろ?」
ペットであるドラゴンの頭を優しく撫でながら紹介された。ドラゴンを使役できるとは、三聖王というのはどんだけ優れた魔術師なのだろうと思い知らされた。