8 自殺少女は学校に行く
お友達が出来ます
「なんだか、こうして誰かと通学するのは初めてで緊張します・・・」
そう言う彼女だが、どこか嬉しそうに見える。
「それになんだかいつもより視線が多いように感じてしまいます」
「まあ、それはそうかもね」
彼女のような目をひく容姿の女の子が男と並んで歩くというのはかなりの嫉妬を呼ぶものだ。すなわち『リア充爆発しろ』という言葉がお似合いなのだろう。しかも隣を歩く僕がそこまでイケメンじゃないのがまた嫉妬の原因になりかねない。後ろから刺されないといいなと思いつつ僕は言った。
「お昼はどうする?紹介した子と食べるなら僕は身をひくけど」
「あ、あの・・・できれば、のぞみくんも一緒にいて欲しいです。一人だと不安なので」
「そう、なら一緒にいてあげるよ」
「あらら、熱烈な告白だねー」
その第三者の声に彼女が驚く中で、僕はそれに平然と答えた。
「丁度良かった。片倉さん」
「はっしー、おっはー。それに確か同じクラスの名倉さんだよね?」
「あ、あの・・・」
「ん?あ、ごめんごめん、同じクラスの片倉奈緒だよー」
そう挨拶するのは同じクラスで、彼女の友達候補の一人である片倉奈緒。短い髪に勝ち気な感じの美少女なのだが、うざいくらいテンション高いので、大人しい彼女には丁度いいだろう。
「それにしても、はっしーと名倉さん付き合ってるの?」
「ふぇ!?そ、それは・・・」
「うーん、近いかな。僕の片想いだよ」
「そ、そんなことないです!」
その声に驚くと彼女ははっとしてから恥ずかしそうに俯くのだった。そんな彼女を見てから片倉はにっしっしーと笑いながら言った。
「なんだかお熱い仲ですなー邪魔者は退散しますわー」
「いやいや、実は君に用事があったんだよ」
「ん?なにー?」
「率直に言うと、恵と友達になってくれない?」
「いいよー」
あっさり了承する片倉に彼女は唖然としていると片倉は彼女の手を掴んでハイテンションで言った。
「名倉さん下の名前は恵なんだねー、うん、可愛い!私も前からお友達になりたかったんだよーいやー運命感じるよねこれは」
「あ、あの・・・片倉さん」
「ん?ああ、私のことは奈緒でいいよん。私も恵って呼ぶから」
「え?あ、な、奈緒?」
「うん、いいじゃんいいじゃん!恵!」
嬉しそうにはしゃぐ片倉とそれを見ながら苦笑する彼女。思った通り相性は悪くない。これなら大丈夫だろうと確信できた。片倉は基本的に相手に対してストレートにいくので好き嫌いは別れるが友人はかなり多くて広いので信頼できる。
「ねえねえ、恵ははっしーのこと好きなんだよね?」
「ふぇ!?」
「こらこら、そういうのは当人がいないときにしなさい」
「んもー、そんなこと言ってはっしーだって気になるくせにー」
「否定はしないがね、そういえば昼の予定は空いてる?」
「お?なになにデートのお誘い?」
「違う。恵と一緒に昼御飯共にしてもいいか?」
そう聞くとしばらく考えてから満面の笑みで言った。
「おーけー、はっしーのお弁当美味しいから楽しみだなー」
「盗む気満々だな」
「税金だよーん」
「何税だよ」
「んー、幸せ税?」
「暴君でもしない政策をありがとう」
そんなやり取りを見ながら彼女がくすりと笑ったのを見て俺はこれなら上手くいきそうだと安心したのだった。