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7 自殺少女は朝ごはんを食べる

朝食タイム


「ふぁ・・・おはよう」

「あ、おはようございます」

「あれ?恵ちゃん?」


起きてきて早々に思わぬ人物がいたことに驚く母さんに僕は笑って言った。


「おはよう母さん。恵、昨日の話受けてくれるってさ」

「まぁ!本当に?嬉しいわー!まさか家に嫁入りにきてくれるなんて、これでお母さんも安心だわー」

「母さん、顔洗ってきなよ。寝ぼけてる」


何の話をしているだと思いながら彼女を見ると、彼女は彼女で何やら顔を赤くして上の空だった。


「のぞみくんに嫁入り・・・えへへ・・・」


嬉しそうにニヤニヤする彼女。その笑顔がなんとなく可愛いと思っていると顔を洗ってきた母さんがその様子を見てから何かを理解したように聞いてきた。


「ねえ、のぞみ。昨日の夜何かあったの?」

「ん?いや、恵の家に送ってから家にこないか誘っただけだよ」

「告白とかしたんじゃないの?」

「んー、ある意味そうかな」

「そう、それであの様子なのね」


納得する母さんだが、僕には若干納得しかねていた。まあ、言動からもしかしたらという男の勘違いなら何度かしてるけど、確信もないのでなんとも言えなかった。


「でも、のぞみは本当によかったの?」

「何が?」

「だって、恵ちゃんと同棲するならえっちな本隠さなきゃダメでしょ?」

「いらない心配ありがとう。ところで今日の弁当なんだけどいきなり白米オンリーになっても文句はないよね?」

「あらあら、可愛いお母さんジョークじゃないの」


そんなやり取りをしていると、騒がしくて起きてきたのか和泉がふらふら歩いてきた。


「おはよう・・・」

「和泉ちゃん、おはよう」

「あれー恵お姉ちゃんだ。わーい」


そう言ってから寝ぼけながら彼女に抱きつく妹。家の家族の寝起きの悪さに頭を抱えそうになりながら僕は彼女に言った。


「騒がしくてごめん」

「いえ、楽しいですから。それに誰かとこうして出掛ける前に話すなんてこれまでなかったですから」

「そっか、なら悪いけど和泉を洗面所まで誘導してくれる?そろそろ朝ごはんできるから」

「はい、行こうか和泉ちゃん」

「うんー」


そうして離れていく二人を見ながら母さんは呟いた。


「うんうん、頼もしい嫁になりそうねー」

「ですねー」

「それにしても、恵ちゃんてのぞみ好みの女の子よねー」

「ですねー」

「これはあれかしら?嫌な姑の練習するべきかしら?」

「できるの?」

「無理ね」


だろうね、と思っていると二人が戻ってきたので俺は出来立てのスクランブルエッグとトーストとサラダを盛り付けてから並べた。


「わぁ・・・こういう朝ごはん初めてです」

「そうかな?まあ、今朝はパンだけど恵がご飯が良ければそっちも用意するよ?」

「大丈夫です。パンも好きですから」

「そう?ジャムは生憎とイチゴとチョコしかないけど、ストレートにバターでいく?」

「じゃあ、イチゴで」


そう言われたので彼女のパンにジャムを塗ると和泉が言った。


「あーいいなー。お兄ちゃん和泉にはそれやってくれないの」

「いや、だってお前の場合その日によって全然違うじゃん」


明日もイチゴーとか言ってて翌日は何もつけないというのもよくあること。それに恵をひいきしてるというわけではなく、単純に恵には世話を焼きたくなってしまうのだ。


「ぶー、けちー」

「はいはい。早く食べて学校行こうな。今朝は途中まで恵と一緒に送ってあげるから」

「はーい」


そうして食べ始めたので俺も片付けて席につく。なんとなく隣の席が彼女になったのはきっと、目の前ので無言で親指を立てる母さんの仕業だと断言できた。俺が隣に座ると彼女は少しだけそわそわしてたので思わず聞いてた。


「いつもは俺が一人でこっちに座るから、気になるなら今度は変えようか?」

「そ、それはダメです!のぞみくんの隣がいいです!」

「そ、そう?ならいいけど」


思いっきりそう言われてしまえば大丈夫なのだろうと思い食べ始める。俺が彼女と同じくイチゴのジャムをパンに塗ると母さんはニヤリと笑って言った。


「あらあら、のぞみったら、恵ちゃんにあわせてイチゴジャムなんて可愛いわね」

「そういう気分なの」

「ふふ、そういうことにしてあげるわ」


そうして笑っている母さんを見てから彼女を見ると彼女は彼女で美味しそうに食べていてくれるので嬉しくなる。そうして朝の時間はあっという間に過ぎていくのだった。


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